UK_U_Carrier


「Operation Dauntless」(以下、本作)は、1944年6月のノルマンディ上陸作戦に伴うカーン西方の戦いを戦術レベルで再現したシミュレーションゲームだ。1ユニット=小隊~中隊、1Hex=425ヤード、1Turn=90分(夜間は330分)というスケールから分かる通り、やや大きめの戦術級ゲーム(戦術作戦級)と言って良い。
本作のシステムについては、 以前の記事 で紹介済なので、詳細はそちらを参照されたい。

前回 はキャンペーンシナリオの序盤戦を紹介した。その時、選択ルールの採用がバランスをより悪化させているという意見が出たため、改めて選択ルールなしでキャンペーンシナリオを仕切り直すことにした。

私の担当は前回同様ドイツ軍である。

ここまでの展開 --> こちら

6Turn

UK49D_6pdr_AT_7DWR第12SS装甲師団戦区で防衛線の一角が破られた。英軍部隊がフォントネ村の東北端を占拠し、そこに拠点を構えたのである。同師団所属の4号中戦車は敵対戦車砲と激しく交戦。6ポンド対戦車砲2ユニットを撃破したが、敵の反撃によって4号戦車も2ステップの損害を出してしまう。あー、やはりティーガー重戦車が欲しい・・・。
敵対戦車砲の脅威を受けて、ドイツ軍戦車部隊はボウデル川のラインの南に下がる。

OpD16


7~8Turn

GE12SS_SP_12_26独軍戦車の後退によって戦車同士の戦闘がなくなったため、ゲームが淡々と進むようになった。英軍は確実にフォントネ村の支配領域を広げていくが、ドイツ軍も撤退しつつ英軍に損害を強いていく。
麾下歩兵の損害に業を煮やしたのか、途中から英軍はAFVだけによる通常戦闘で土地の占領を図ってきた。この方法は有効で(理由は後述)、英軍は大きな損害を受けることなくフォントネ村の支配領域を拡大していく。
ドイツ軍は第10Turnになると第12SS装甲師団に所属する強力なパンター戦車等を投入可能になるので、それまでは忍の一手だ。

第8Turnの終了時点までプレイして英軍はフォントネ村の5Hexを支配下におさめた。フォントネ村全体で14Hexなので、約1/3を支配下に置いたことになる。勝利条件的には、やはり独軍の勝利であった。

今回のプレイ時間はセットアップを含めて約8時間。デザイナーの見積値の約2倍である。

OpD17


教訓

今回のプレイで得た教訓をいくつか列挙してみた。

・戦車を単独で配置してはいけない。敵戦車スタックの良い餌になる。
・アクション終了時点における友軍装甲車両の配置に注意。敵前に放置していると敵側のアクションフェイズと戦闘フェイズで2回タコ殴りされるので、不用意に前線には置かない。
・歩兵の回復(ルール13.3)は重要。ステップロスした歩兵は速やかに後退させ、回復によりステップ回復させるべきである。補充(ルール13.2)よりも速やかにかつ確実に回復できる。適用範囲が広い(キャリア小隊やスカウト小隊も回復可能)な点にも注意せよ。
・平地から攻撃する際には可能な限り築壕すること。DRM-1の効果は予想以上に大きい。
・英軍は平地に歩兵2個中隊以上をスタックさせてはいけない。間接砲撃の好餌になる。
・通常戦闘の際、AFVのみによる攻撃は、意外と有効である。何故ならAFVは通常戦闘の戦闘結果の適用対象外になるので、攻撃側にリスクが殆どないのである(一寸ズルい気もしなくはないが)。
・通常戦闘で敵の後退が予想される際、後退路に平地(畑)があるのであれば、そこを射撃できる友軍ユニットを残しておくこと。後退時の干渉射撃(FF)によって損害を強いることが期待できる。
・ドイツ軍の場合、重戦車/重駆逐戦車と通常の中戦車をスタックのは有効である。重戦車/重駆逐戦車が敵戦車/対戦車砲からの盾になってくれる(撃破された時のショックが大きいので運用は慎重になるべきだが)。

感想

未だにドイツ軍が有利過ぎる感が強い。選択ルール19.1は個人的に好きなルールなのだが、ただでさえドイツ軍有利なゲームなので、対人戦では上記選択ルールは封印した方が良いのかもしれない。何とか英軍側の勝ち筋が見えてくれば良いのだが・・・。現時点では英軍にとって辛いゲームという印象は変わらない。キャンペーンシナリオで英軍を担当する場合には、強靭な精神力が必要になるだろう(あるいはキャンペーンシナリオ以外をプレイする手もある)。
とはいえ、本作のシステムはWW2における機甲戦闘を再現するのに極めて優れたシステムであると言える。システム面で本作の優れた点はいくつもあるが、小隊~中隊規模の戦術級ゲームでありながら戦車の性能や性格の違い(例えばティーガーとヤクトパンターの違い、ファイアフライの優秀さ等)が見事に再現されている点。あるいは歩兵戦車共同の重要性の再現。さらには大兵力による突撃が容易に大虐殺に変わってしまう点を見事に再現している点は感嘆するしかない。ライバルであるCSSが「砲兵のゲーム」であって機甲戦闘の再現性が今一つだったのに比べると、本作では戦車同士のハードバトルが見事に再現されている。もちろん、歩兵や砲兵に関する再現性も素晴らしい。ゲームバランスの面を除けば、本作は現在プレイ可能な小隊~中隊クラスの戦術級ゲームではベストワンだと思う。

惜しむらくは、(ゲームバランス以外の点として)「ドーントレス作戦」という些かマイナーなテーマを扱っているためにプレイされる機会が少ないこと。また連合軍の雄である米軍とロシア軍が登場しないことが挙げられる。できればこのシステムを流用して米独戦(ノルマンディとかアルデンヌとか)や独ソ戦テーマの作品をデザインして頂きたいものである。
あるいは現在戦(今流行の198x年WW3テーマ)等も面白そうだ。

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