NHKが2009年から2011年まで3年に渡って放映した大型歴史ドラマ「坂の上の雲」は、小説家司馬遼太郎氏の原作を元に作成されたTVドラマだ。このドラマは海軍大学でのウォーゲームの場面が出てきたり、日本海海戦での日本艦隊とロシア艦隊との砲戦がリアルに再現されているなど、個人的にも好きなドラマの1つである。

ところでこのドラマ、原作と比べると、いくつか異なる点がある。一番大きいのは女性の扱いで、原作では主人公秋山兄弟の家族を含めて殆ど女性の活躍シーンがない(要するに女っ気のない作品)のだが、TVドラマでは秋山兄弟の奥方や正岡子規の妹がかなりクローズアップして描かれている。

まあ原作でも正岡子規の妹や秋山兄弟の結婚話は一応触れられているし、TVドラマだからやはり「色気」が必要だというのは理解できなくはない。

しかし、中には「ドラマの上の演出」を逸脱するような「創作」が含まれている場合がある。しかもその内容が、まるで中国製の反日映画のような内容なのだから、困ったものである。

2009年12月20日に放映された第4回放送。そこでは日清戦争に従軍した正岡子規が描かれている、原作では子規の従軍について「こどものあそびのようなものにおわった」とアサッリ記載されているだけだが、TVドラマでは現地で取材をする子規の姿が描かれている。

それだけなら別に問題ないのだが、問題なのはその描き方だ。
子規らを引率していた日本軍の下士官らしき人物が、中国の現地人に対して横暴を働いた上、それを止めようとした子規に対して暴言を吐きながら刀を抜こうとしたのである。この場面を見れば、この下士官らしき人物は「とんでもない人物」となるが、それだけにとどまらず「日本軍が戦地で悪逆非道なことを行った」ような印象を視聴者に植え付けることになる。穿った見方をすれば、NHKは視聴者の旧日本軍に対するイメージを悪く印象付けるために敢えてこのような演出を挿入したとも思えてくる。

繰り返すが、このような場面はTVドラマだけで描かれている場面で、原作には全くない。さらに言えば、原作の中で日本軍が中国の現地で強奪や強姦の類を行った等という記述も全くない。
(史実がそうだった、と主張している訳ではないので、念のため)

原作には全くなかった場面を、しかも一方的に旧日本軍に対するイメージを悪くするような場面を盛り込む必要があるのか。そこにNHKの隠された意図を見るように思えるのは、筆者の考えすぎだろうか・・・。

まあNHKという立場上、右からも左からも攻撃されるので、バランスをとるのが難しいのかもしれない。だから単に左傾化と単純に括るのも確かに早計とも感じるが・・・・。


兵隊さん