Blue Water Navy(以下、本作)は、米Compass Games社が2019年に発売したシミュレーションゲームだ。テーマは1980年代における西半球全域を舞台とした米ソ両陣営の海上戦闘である。実際のは起こらなかった第3次世界大戦を扱った仮想戦ゲームだ。

US_CV_Saratoga前回は シナリオ2「ACE MOBILE & FIRST CONVOY'S 1983」のソロプレイを紹介 した。そこで今回は3つめの練習シナリオであるシナリオ3「KIROV'S & CARRIERS' 1983」をプレイすることにした。このシナリオは、ソ連軍が空母「ミンスク」、巡洋艦「キーロフ」を主力とする艦隊でノルウェーへの強襲上陸作戦を行い、それに対して米軍は空母2隻を主力とする空母機動部隊で阻止するというもの。このシナリオで初めて本作の主役というべき米海軍のスーパーキャリアとソ連海軍の誇る大型戦闘艦が登場することになる。

これまではVASSALを使ったソロプレイであったが、今回はVASSALを使った通信対戦形式でプレイすることにした。また今回初めてカードを導入。限定的な形ながらもカードを使ったプレイが可能となった。私はソ連軍を担当する。

Turn1a


1Turn

SO_STK_Tu16ソ連軍はまずGIUKギャップを守るNATO側基地航空兵力を制圧すべく、アイスランドのケフラヴィーク基地へ攻撃を加える。ケフラヴィーク航空基地。冷戦時代を代表するアメリカ軍の海外展開基地で、戦略的な要域でもある。トムクランシーのベストセラー小説「レッドストームライジング」では、このケフラヴィーク基地が極めて重要な役割を演じている。

Keflavik_aerial_of_hangars_1982


Tu16バジャー2個連隊を投入した攻撃は護衛戦闘機を欠いたものだったが、バジャー戦隊は米戦闘機の迎撃を回避してケフラヴィーク基地を痛打。同基地は壊滅的な打撃を被り、基地に配備されていたF-15戦闘機、P-3C哨戒機の飛行部隊は壊滅した。

米軍は空母機動部隊の露払いをすべく潜水艦をアイスランド東方海域に出撃させる。ロサンゼルス級原潜、スタージョン級原潜の攻撃を受けてソ連側のエコー2型ミサイル原潜、ジュリエット型巡航ミサイル潜水艦が損害を被る。

空母2隻からなる米機動部隊はGIUKラインを西から東へ抜けてノルウェー近海に進入する。ソ連側はバイコヌール基地からRORSAT衛星を打ち上げてノルウェー海を監視下に置く。

SO_RORSAT本作では、他の空母戦ゲームと同様、敵水上艦を攻撃するためには、それを「発見」しなければならない。発見の方法としては、航空機による方法が一般的だが、米空母のように強力な戦闘機で守られている艦隊を航空機によって発見するのは容易ではない。ソ連側にはそれを補う手段としてRORSAT(Radar Ocean Reconnaissance SATellite:レーダー海洋偵察衛星)と呼ばれる人工衛星を打ち上げることができる。これは原子力電池とそれによって動作するレーダーを搭載し、低軌道を周回する人工衛星で、主に海上の艦船を捜索する任務を持っている。本作以外の海戦ゲームでも人工衛星の効果は間接的な形でルールに再現されてはいるが、人工衛星そのものがユニット化されている海戦ゲームは、私の知る限り本作が初めてである。

その後もノルウェー近海やアイスランド東方海域では両陣営の潜水艦同士が水中で激しく戦い続けている。性能に劣る潜水艦は次々とNATO潜水艦の餌食となっていったが、ソ連側も新鋭のヴィクター3型原潜を投入し、NATO潜水艦部隊に打撃を与えていた。

SO_CGN_Kirovノルウェー近海でRORSATが米空母機動部隊を捉えた。原子力空母「エンタープライズ」を主力とする空母打撃群だ。付近を航行中の大型巡洋艦「キーロフ」、空母「キエフ」を中心とするソ連艦隊は対艦ミサイルを発射した。発射されたミサイルの総数は約60発。それが「エンタープライズ」部隊に迫る。「エンタープライズ」部隊の護衛艦隊がSAMを打ち上げて対艦ミサイルを迎え撃つ。その結果、旧式のP-500「バリサート」(SS-N-12「サンドボックス」)は全て撃墜されてしまう。しかし新型で生残性に優れたP-700「グラニート」(SS-N-19「シップレック」)は米艦隊のSAMを掻い潜って米艦隊の内側に潜り込む。
数発のミサイルが護衛艦隊に命中し3~4隻が沈没又は大破した。「エンタープライズ」部隊の護衛スクリーンは一気に半減してしまう。

対する米艦隊も即座に反撃に出る。2隻の空母「エンタープライズ」と「サラトガ」を発進した攻撃隊がノルウェー近海を行動中のソ連艦隊に迫る。F-14トムキャットが護衛についているため、空母「ミンスク」のYak38フォージャーは手が出せない。ソ連艦隊に迫った米艦載機群は、70発以上のハープーン対艦ミサイルを一斉に発射した。
ソ連艦隊はSAMを打ち上げてハープーンを迎え撃つ。ソ連艦隊の対空ミサイルは優秀で、ハープーンの大半が海の藻屑となったが、数発が防衛ラインを突破し、キンダ型ミサイル巡洋艦とその護衛部隊に命中した。
さらに米艦隊もソ連艦隊に接近し、艦隊が搭載するハープーンミサイル計50発以上が発射された。そのうちの数発がソ連揚陸用艦艇に命中し、数隻の沈没艦が出た。
ソ連側も攻撃の手を緩めない。ノルウェー近海に展開するソ連潜水艦が「エンタープライズ」機動部隊を襲う。魚雷攻撃を受けた「エンタープライズ」隊は、遂に護衛部隊の全艦が撃沈破され、「エンタープライズ」は文字通り裸になった。

下図は第1Turn終了時点での状況である。マップ左上の"3"という数値がアイスランドのケフラヴィーク基地。マップ中央付近で2隻の空母が米機動部隊(右側の白いバーが「エンタープライズ」で黄色いバーが「サラトガ」)、マップやや右のトロントヘイムのすぐ上にあるやや濃いオレンジ色が「キーロフ」「ミンスク」を含むソ連艦隊だ。

Turn1b


2Turn

US_CV_Enterprise裏ソ連側にとってはチャンスである。裸の「エンタープライズ」を撃破すべく、虎の子である最強のヴィクター3型原潜を投入する。リアクションカードを使って「エンタープライズ」の防御スクリーンを突破したヴィクター3型原潜は、必殺の65式重魚雷数本を発射する。しかし「エンタープライズ」を護衛していたスタージョン級原潜が身を挺して魚雷を阻止。スタージョン級原潜は海の藻屑となったが、「エンタープライズ」は被害を免れた。

「えーい、米軍の空母は化け物か・・・」

とまあ定番のセリフを吐きつつ。次の一手。北海へ後退する「エンタープライズ」を追うフォクストロット型ディーゼル潜。この旧式潜水艦が遂に「エンタープライズ」を捉えた。魚雷2本が「エンタープライズ」に命中。「エンタープライズ」は撃沈こそ免れたものの、速度20ktまで低下してフランス北岸の港に逃げ込むしかなかった。

Turn2a


ソ連邦大本営発表。
赤衛親衛北洋艦隊所属の勇猛果敢な潜水艦は、米帝国主義者の正規空母「エンタープライズ」を捕捉。それに多数の魚雷を命中させてこれをほぼ撃沈に追い込んだ。
我が方の損害は軽微なり。
この海戦をノルウェー西方沖海戦と命名す。


その後「キーロフ」らのソ連艦隊はノルウェーに上陸作戦を開始。それに対して英本土を発進したバッカニア攻撃機が対艦ミサイル攻撃を仕掛けるも、ソ連艦隊の対空ミサイルに阻まれて戦果なし。
さらに米空母「サラトガ」の艦載機もソ連艦隊を攻撃するも、これまたSAMに阻まれて戦果がなかった。対艦ミサイル攻撃の場合、SAMを飽和させる程の数で集中攻撃を行うのが鉄則。散発的な攻撃を仕掛けてもなかなか戦果が上がるものではない。今回のNATO軍機による攻撃はそのことを証明する結果となった 。

結局ソ連軍はノルウェー沿岸防衛隊の抵抗を排除して上陸に成功。勝利条件的にはソ連側の勝利に終わった。

Turn2b


感想

US_FTR_F14_S米空母が大破したが、私の考えでは米艦隊は分散させずに集中運用すべきだと思う。集中すれば敵のミサイル攻撃や潜水艦攻撃に対する抵抗力も強化される上、航空攻撃を行う場合でも飽和攻撃によって大きな戦果が期待できるからだ。

何はともあれこのシナリオで空母や空母艦載機の使い方をマスターできた。次はさらに複雑なシナリオに挑戦してみたい。

つづく

USN_F14A_VF84