GJ75


「SS装甲師団長」(以下、本作)は、2019年にGame Journal#75の付録ゲームとして出版された。システムはGame Journal#43「ドイツ装甲師団長2」をほぼ踏襲しており、スケールもほぼ同じである。
1ユニットは1個中隊を現し、典型的な作戦戦術級ゲームである。1Hexは750~1500m、1Turnは2~3時間というスケール感は、過去に何度か紹介したMMP社のGTS(Grand Tactical Series)やCompassGames社のCSS(Company Scale Series)とほぼ同じである。ただしこれら諸作品に比べると、本作のシステムは遥かにシンプルである。
準備射撃、移動、機動射撃というシーケンスでプレイヤーターンが構成されており、それを両プレイヤーが交互に実施して1Turnとなっている。1Turnに射撃機会が2回あるのが特徴だが、兵器の種類によって射撃できないフェイズがある。例えば戦車は機動射撃は可能だが準備射撃は不可、自走砲はその逆となっており、これによって戦車は機動戦に有利で、自走砲は待ち伏せに有利というように兵科による特徴づけがなされている。
「ドイツ装甲師団長2」は東部戦線が舞台だったが、本作は西部戦線が舞台となっている。従ってドイツ軍SS装甲師団と米英の機械化部隊との戦いを描いている。先に述べたGTS、CSSは実在地形を描いたマップを使用するが、本作はあくまでも架空地形である。そのため用意されているシナリオも史実における戦いを再現したものではなく、機械化部隊同士の典型的な激突場面を扱った架空シナリオとなっている。
また本作(及び「ドイツ装甲師団長2」)には、標準シナリオ以外にキャンペーンシナリオが用意されている。これはドイツSS装甲師団を率いて連続して8回のシナリオを戦い抜くタイプのシナリオである。読者の皆様のご想像通りだと思うが、キャンペーンシナリオではドイツ軍の兵力はシナリオからシナリオへ持ち越すようになっており、普通に考えると「次第にやせ細っていくドイツ軍」という場面が再現できそうだ(逆に「どんどん肥え太っていくドイツ軍」というケースも考えられなくはない)。

今回、本作の標準シナリオをソロプレイしてみた。ソロプレイと言えばVASSALのご登場となるのだが、残念ながら本作のVASSALモジュールを筆者は見つけ出すことができなかった。従ってチョー久しぶりに「コタツにマップを置きっ放しにした」ソロプレイをやってみた。

1Turn

シナリオ開始時点で両プレイヤーは手元に2枚の勝利条件チットを持っている。そこには「占領」「突破」等が書かれている。相手のチットは見えない。プレイヤーは第8Turn終了時点で2枚のうち1枚を自身の勝利条件と選択し、残りを捨てる。選択した勝利条件毎に勝利の為の必要な条件と勝利条件を達成した場合のVPが記載されている。勝利条件は必ずしも相反するものばかりではないため、両方が勝利条件を達成するような例もある。その場合は勝利条件毎に定められた勝利得点の大小で勝利が決まる。

戦場に戻る。標準シナリオでは、両軍ともマップの両端から盤内に進入し、相手の動きに合わせて自軍を動かすことになる。その際主役となるのは偵察部隊。路上移動力が極めて高いので、本隊に先立って前進する。重要なのは市街地ヘクス。敵に先んじて市街地ヘクスを制すれば、その後の戦いを有利に進めることができる。

Turn01


2Turn

偵察部隊に続いて本隊が前進する。偵察部隊に比べればやや鈍足だが、それでもこの頃になると最前線に到着し、砲火を浴びせる場面も出てくる。
今回のシナリオでは、まず町の北側で米独の戦車が激突した。高速を誇るドイツ軍パンター戦車中隊が気持ち良く突進してくる。しかし些か調子に乗り過ぎたのかもしれない。突出し過ぎたパンター戦車中隊は、四方から米シャーマン戦車の包囲攻撃を受けて壊滅した。

Turn02


3Turn

米軍は強力な自走砲の火力を使って強引に戦線突破を図る。独軍戦車の反撃でシャーマン戦車中隊2個が撃破されたが、米軍は兵力の優越を生かしてドイツ戦線に圧力をかけていく。戦線が崩れて米軍が突破の形を作り始める。

Turn03


4Turn

米軍が戦場の両翼から突破を図る。ドイツ軍は予備兵力を捻出して米軍の突破に対抗する。

5Turn

米軍が戦線左翼(北翼)でドイツ軍歩兵を撃破。突破口を穿った。ドイツ軍はその右翼から崩れ始める・・・か?。

Turn05


6Turn

ドイツ軍が重戦車を仕立てて反撃に転じる。さすがにパンターやティーガーは強く、シャーマンを戦闘不能にしていく。

Turn06


7Turn

ドイツ戦車の反撃によって米軍の先鋒部隊が崩れ始めた。米戦車はいったん後退し、態勢の立て直しを図る。

Turn07


8Turn

米軍は突破力を失ったため、戦力の立て直す必要がある。ドイツ軍も兵力が不足しているので決定的な追撃はできない。

Turn08


このTurn、両軍とも勝利条件を再設定する。
米軍は「突破」と「消耗戦」のうち、「消耗戦」を手元に残す。
独軍は「占領」と「阻止」のうち、「阻止」を手元に残す。



9Turn

戦闘2日目である。ドイツ軍の右翼(北翼)では、ティーガー重戦車2個中隊がシャーマン戦車を撃破して突破口を切り開いていく。周囲からシャーマン戦車が射弾を浴びせるが、重装甲のティーガーは全く堪えていない。
一方、ドイツ軍の左翼(南翼)では、米軍の反撃が功を奏し、ティーガーとパンターの混成大隊の阻止に成功しつつある。

Turn09a
Turn09b
Turn09c

10Turn

ドイツ軍右翼(北翼)では、ドイツ側が虎の子砲兵火力を使用して米軍のM10駆逐戦車中隊を制圧。ZOCを消してティーガー中隊が押し出す。包囲されたM10駆逐戦車が壊滅。シャーマン戦車1個中隊も包囲下に陥る。
戦線中央ではドイツ軍の88mm砲が間接射撃で米軍歩兵を攻撃。市街地ヘクスが1つまた1つとドイツ軍によって奪回されていく。
戦線南翼では逆に米軍が攻勢を仕掛けている地点。M10駆逐戦車とM4シャーマン戦車の混成部隊がドイツ軍パンター戦車2個中隊を敗走させていた。

Turn10a
Turn10b
Turn10c


11Turn

ドイツ軍右翼(北翼)では、なおもティーガー重戦車2個中隊が猛威を振い、包囲攻撃によって米軍の歩戦連合スタックを葬った。しかし米軍も後方に陣地帯を構築。ドイツ軍によるこれ以上の突破を阻止する構えである。

戦線南翼では米軍の攻勢が続いているが、ドイツ軍も突撃砲1個中隊を増援として送り込み。米軍によるこれ以上の浸透を防ぐ態勢である。

Turn11a
Turn11b

12Turn

マップ中央の大都市ではドイツ軍が兵力の優位を生かして攻勢を強める。しかし米軍は自動砲による射撃を浴びせかけることで、4号戦車に対してラッキーヒットを与えてこれを撃破した。

Turn12


13~16Turn

両軍ともこの後は小競り合い的な戦いを続けたが、大きな進展はなかった。
最終的には連合軍の勝利条件は「消耗」で、ドイツ軍は「阻止」。連合軍はドイツ軍ユニット11個を撃破し、「消耗」の勝利条件を達成。ドイツ軍はその阻止に失敗したため、連合軍が勝利した。ちなみに、もしドイツ軍の勝利条件が「占領」なら、両方とも勝利条件を達成し、VP差でドイツ軍が勝利していたところだ。

Turn16a
Turn16b

感想

ルールは簡単だが癖があるゲームである。まず戦闘システム。攻撃側が一方的に射撃するタイプなので、とにかく攻撃しなければならない。戦車や歩兵は移動後に射撃できるので、攻撃側が有利である。ただし防御地形に陣取る場合は予め隣接しておかなければ撃てない。従って最初の遭遇戦段階では両軍とも激しく動き回るが、お互いに対峙し陣地を構築し始めるようになると、少し戦線が安定化してくる。そのあたりの動きが面白い。
連合軍とドイツ軍を比較すると、ユニットレーティングでドイツ軍が有利なので、単純に戦えばドイツ軍が有利だ。ただし勝利条件である程度バランスが取られている。従って連合軍は盤面の状況が不利であっても、勝利条件での逃げ切りが期待できる。

まとめよう。
本作は中隊規模のゲームで、典型的な作戦戦術級である。よく似た作品としては、MMPのGTSシリーズやCompassGamesのCSSシリーズになる。ただしGTSやCSSが実在地形で実在部隊を使ったゲームになっているのに対し、本作は架空地形で抽象的な部隊同士の戦いになっている。そういった点ではやや思い入れという点では弱い(例の「XYZ星系に進出」よりも「北海を支配した」の方が良い、というヤツですな)。ただしルールは本作の方が遥かに簡単で、気軽にプレイできるので、広くプレイしたい作品である。

M4