平和のための戦争論-集団的自衛権は何をもたらすのか?

植木千可子 筑摩書房

タイトルから見ると、所謂「ハト派」の平和論に思える。ただし本書は「非武装中立論」的な空虚な内容ではなく、安全を保障するために我々が何をすべきかをリベラルな視点から考察した著作だ。
本書は基本的には保守系政党の国防政策を批判的に捉えている。しかし例えば一部論客のように安倍政権や安倍総理を一方的に「悪人」とはしていない。本書では安倍政権の国防政策や集団的自衛権に対する考え方について、その必要性を評価しつつ(現政権の国防政策が「普通の国」への道、としている点が印象的)、欠けている視点について考察している。筆者は集団的自衛権の行使についてその必要性を認めつつ、国内での議論の活性化、中国との関係改善と関係強化、前大戦に対する日本人としての検証が必要と説く。その根拠としては、抑止力は諸刃の剣であり、抑止力の強化が安全保障環境を悪化させる恐れがあるとしている。
軍事面に限定しない広い視野で安全保障を考えるという意味では参考となる著作である。

お奨め度★★★★

190620_平和のための戦争論