Blue Water Navy(以下、本作)は、米Compass Games社が2019年に発売したシミュレーションゲームだ。テーマは1980年代における西半球全域を舞台とした米ソ両陣営の海上戦闘である。実際のは起こらなかった第3次世界大戦を扱った仮想戦ゲームだ。

本作については、以下の紹介動画も参考にされたい。




前回までの展開 --> こちら

5Turn(開戦9-10日目)

NATO_Convoy 米本土から大船団が進発する。3個船団約150隻の大船団だ。
ニューヨーク沖に集結した船団は東へ進み、バミューダ近海で空母「アメリカ」を主力とする機動部隊と合同する。ソ連側はこの船団をマークし、2機のRORSAT(海洋監視衛星)を船団針路上に配置し、その動きを探った。しかし空母が護衛している船団は容易に攻撃することができず、ソ連軍はこの大物を目の前に攻撃を逡巡する。

地中海では、米空母3隻からなる地中海艦隊がワルシャワ条約機構軍の南翼に対する攻撃を続行。さらに12ヒットを与えた。これによりヨーロッパから南部からのワルシャワ条約機構軍による進撃はほぼストップした。任務を終了した米機動部隊はジブラルタル海峡を西へ抜けてフランス沿岸を目指す。

SO_SSN_Alfa北大西洋ではソ連潜水艦が本格的な攻勢を仕掛けてきた。多数の原潜部隊がGIUKラインを突破し、アイスランド西方海域になだれ込んだ。それに対して米英の原潜部隊も激しい抵抗。潜水艦同士の格闘戦が戦われた。その過程で英国弾道ミサイル潜水艦「レナウン」がアイスランド西方海域でソ連海軍アルファ型潜水艦の攻撃を受けて撃沈されてしまった。ソ連側にとっては思わぬ大金星であり、NATOにとっては自軍の核戦力に大きな穴を開ける損害であった。

Turn06a


Turn終了時の戦争状況判定では、ソ連が前進できたのはノルウェーのみ。
デンマークではソ連指導部の混乱によって前進ストップ。中央戦線ではNATOが西ドイツ海軍航空隊のトーネード部隊を対地支援任務へ投入したためハンブルグの線でストップ。南欧戦線では米空母艦載機による連日の爆撃によっで前進再開の目途が立っていない。

しかしデンマーク海峡の機雷源は完全に啓開された。これにより英仏海峡にソ連海軍高速ミサイルボートが殺到することになる。

Nanuchka_Class


なお、先の英SSBN「レナウン」の撃沈によってソ連軍は第1撃ポイント2ポイントを得た。もう1ポイント得れば海上戦で戦術核弾頭を使用できるようになる。

HMS_Renown_SSBN




6Turn(開戦11-12日目)

SO_SSGN_Oscar大西洋への突破を果たした一部のソ連原潜部隊は、フランスに入港するNATOの大船団を襲う。しかしNATO側の対潜防御は強固であり、ソ連原潜部隊は目的を達することなく次々とNATO対潜部隊の餌食になっていく。最新鋭のオスカー型SSGNも、最強のヴィクター3型SSNもしかり。結局Turn終了時点までに大西洋におけるソ連原潜部隊は完全に一掃されてしまい、生き残った僅かな部隊がGIUKギャップを超えてバレンツ海へ引き上げていった。

SO_TROOPS2フランスの港にNATOの増援部隊が続々と到着する。空母2隻という圧倒的な護衛兵力に護衛された200隻以上の大輸送船団だ。船団のうち約100隻は途中で分離し、英空母「イラストリアス」に掩護されつつ地中海方面へ向かったが、残る100隻以上がブレスト、サンナゼール、シェルブールといったフランス西部の港湾へ入港し、NATOの大部隊を欧州大陸に送り込んだ。
増援部隊の到着を受けてNATO軍は西ドイツ領内で大規模な反撃を実施した(イベントカードによる反撃)。これによりNATO軍はハンブルグを奪回し、ソ連軍を東へ押し返した。
ソ連軍も黙っていない。遂に禁断の化学兵器を全戦線に渡って使用した(イベントカードによる)。NATO部隊は恐慌状態に陥り、ソ連軍は各戦線で前進を果たした。

NATO_TF_Hammerフランスでの揚陸作業を終えた米空母群は、地中海から戻ってきた空母群と合流。栄光のTF(Task Force) Hammerは再び空母4隻体制となってフランス沿岸を離れていった。目指すは北海。さらにはその奥のノルウェー海である。ノルウェー、デンマーク戦線を支えるNATO部隊を掩護するためだ。北海に進出したTF Hammerは、ノルウェーへ大規模な攻撃隊を送り込み、早くも7ヒットを与えてソ連軍の南下をストップさせた。

Turn終了時の戦争状況判定では、ソ連の前進は全戦線で停止した。

Turn06a

7Turn(開戦13-14日目)

米本土からF-15イーグル1個飛行隊が英本土に飛来し、ルーカーズ空軍基地に配備された。
SO_SS_Foxtrot北海に進出した米海軍空母機動部隊TF Hammerは、有力な揚陸部隊を伴って北を目指していた。目標はノルウェー中部トロントヘイム。それに対してソ連軍もありとあらゆる手段でその妨害を試みた。
最初に攻撃をしてきたのは、バルト海艦隊に所属するソ連海軍ディーゼル潜水艦である。デンマーク海峡の機雷源が突破されたため、大量の潜水艦がTF Hammerを襲う。NATO側もそのことを予測して潜水艦や哨戒機による哨戒網を張り巡らしていたし、TF Hammer自身も強力な対潜部隊を随伴していた。しかしソ連潜水艦もまた勇敢だった。NATOの対潜戦闘によって何隻もの潜水艦が犠牲になっても、友軍の屍を乗り越えて攻撃を繰り返す。この一連の攻撃でソ連側は約5ステップ(10~15隻)の潜水艦を失ったが、TF Hammerも護衛艦艇数隻が撃沈破された他、揚陸部隊が大損害を被り、ノルウェーへの逆上陸は困難な状況になった。そのためNATOはノルウェー逆上陸を諦め、この部隊をデンマーク戦線に投入した。デンマーク戦線で進撃を続けていたソ連海軍海兵師団とポーランド軍海兵師団は、米英の海兵部隊の攻撃を受けて壊滅した。

Turn07a


US_FTR_F14_Kenソ連海軍航空隊も最後の攻撃をTF Hammerに対して実施した。航続距離の関係上戦闘機の随伴はなしで、Tu22バックファイア1.5戦隊、Tu16バジャーG1個戦隊。計60機の攻撃隊だ。搭載する対艦ミサイルは計120発。
ソ連側攻撃隊は、デンマーク海峡でデンマーク空軍のF-16戦闘機、さらに北海上空でフランス空軍のミラージュ戦闘機の迎撃を受けてバジャー約12機を失った。さらに進撃を続けるソ連軍攻撃隊に対して空母搭載のF-14が迎撃する。ミサイル発射前にバックファイア24機が撃墜され、残り24機。発射した対艦ミサイルは48発。そのうち8発はF-14トムキャットのフェニックスミサイルによって撃墜され、残り40発はTF Hammerの対空ミサイルによって全て叩き落されてしまう。さらに攻撃後にバジャー12機が撃墜され、生き残ったのはバックファイア12機に過ぎなかった。

ここで終了

この時点で概ね展開が見えて来たので、終了とした。今後の展開を予想すると、ソ連側はは中欧であと1マスぐらい前進できるか否かぐらい、南欧は完全にストップ。ノルウェーも米空母が航空攻撃をもう1度行うだけで進撃は完全に止まるだろう。デンマークはNATOの逆上陸によってソ連側戦力を一掃されてしまった。
ワルシャワ条約機構軍の最終的にな到達地点は、ノルウェーはボード/トロントヘイムまで、中欧はハンブルグ又はブレーメン、南欧はイタリアのボローニャであった。

Turn07b


感想

今回はソ連側は北方重視でかなり極端な兵力集中を行ったが、あまり良策ではなかったように思う。広範に兵力をばら撒き、NATO側の弱点を突くという展開が良いと思う(いわゆる「間接アプローチ」)。最初から米空母撃破を狙っても、主導権が相手側にあるから上手くいかない(そもそも米空母が攻撃圏内に入ってこなければ攻撃できない)。米空母撃破についても、ソ連側の広域攻撃に対抗すべく米空母が散開した時を狙って実施するのが良いと思う。
極端な集中配備のしわ寄せはバルト海作戦や地中海作戦に響いてしまった。例えばキエフ級空母のうち1隻をバルト海方面に展開させていれば、デンマーク侵攻はもう少し順調に進んだと思う。さらに言えば、北方海域で殆ど役に立たず徒にアメリカンカーボーイズ(米攻撃型原潜群)の好餌となってしまったソ連原潜群については、バルト海や地中海に分散配備することでNATO側にプレッシャーをかけることが可能であった。


NATO側に関して言えば、序盤に米本土東岸沖のヤンキー型SSBNを掃討するのは正解だと思う。また船団は小出しにせずある程度まとめて出港させるのがベストだろう。小さな船団を少しずつ出港させてもソ連側長距離爆撃機や潜水艦の餌食となるだけである。それよりも米空母でガッチリと守った大船団を一気に欧州戦線に投入した方が良策ではないだろうか。

いずれにしてもBlue Water Navyは面白い。現在海戦を扱ったゲームとしては、Fleetシリーズ以来久々の傑作ゲームである、というのはあくまでも個人の感想です。

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おわり