「ドイツ装甲師団長2」
(以下、本作)は、2012年にGame Journal#43の付録ゲームとして発表されたシミュレーションゲームである。テーマはWW2東部戦線における独ソ師団規模部隊同士の激突で、1ユニット=1個中隊、1Hexは750~1500m、1Turnは2~3時間で再現する。

本作のシステムについては、 以前に紹介した「SS装甲師団長」 と殆ど同じである(というよりも「SS装甲師団長」の方が本作にシステムを西部戦線に適用したものである)。従ってシステム等については、当該記事を参照されたい。

今回、本作を対人戦でプレイしてみた。

第1戦

SO_T34_85下名はソ連軍を担当する。任務は「突破」と「消耗」である。「突破」で勝つためには前半戦でユニットを敵側の盤外に突破させなければならない。しかし相手が対応してきた場合、「突破」を達成するのは必ずしも容易ではない。そこで「突破」の達成を目指して部隊を広く展開させつつ、マップ中央付近の市街地ヘクスを占領する。市街地ヘクスを占領すれば、ドイツ側はそこを取り返すために攻撃してくるだろう。そこで相手を消耗戦に引きずり込み、勝利条件を達成する、という寸法だ。その時注意すべきは敵に市街地ヘクス過半数の占拠を許さないことで、もし敵の勝利条件が「占領」だった場合、こちらが「消耗」の勝利条件を満たしても、VP差で負けてしまう。こちらが「消耗」の条件を満足させつつ、敵側の「占領」を阻止するのが当方の勝ち方になる。

以下は第2Turn終了時の状況。マップ中央を挟んで両軍が対峙している。

G1_Turn02a
G1_Turn02b


GE_SG ソ連軍はマップ中央の都市ヘクス前面で陣地を構築してドイツ軍と対峙しつつ、左翼から快速を誇る中戦車群で突破を図る。また戦線右翼からも側面突破を試みる。戦線右翼では、両軍の戦車が激突し、ソ連側T-34/76戦車中隊1個が混乱状態となってしまう。

G1_Turn03a
G1_Turn03b


第4Turnには戦線左翼でのソ連軍の突破成功が決定的となり、戦線右翼でもドイツ側の4号戦車中隊1個を包囲攻撃で葬っていた。

G1_Turn04a


第5Turnでソ連軍快速戦車中隊3個が戦線左翼から盤外への突破に成功した時点でソ連側の勝利が明らかになったため、この時点でゲーム終了となった。ここまでの所要時間はセットアップを除けば約2時間である。

G1_Turn05a


第2戦

GE_PzV昼食を挟んで2回目のプレイである。今回も下名はソ連軍を担当する。プレイ開始前にダイスを振って戦力を判定するのだが、その時ドイツ軍が"6"の目を出してしまい、恐るべき大規模部隊になった。その時は「ちょっと可笑しいなぁ」と思ったが、取り合えずこのままゲームを開始した。

ちなみにプレイ中にルール間違いに気づいた。戦力決定のダイスは一振りではなくユニットの種類毎に振るのが正しいルールらしい。かなり致命的な間違いであったが、やり直す時間もなかったのでこのまま継続することにした。

SO_122HZソ連側の命令は「阻止」と「消耗」である。残りは「突破」「威力偵察」「占領」の3つ。兵力に劣るソ連側としては「突破」「威力偵察」は絶対に阻止しつつ、後は最終Turn(第16Turn!!)まで都市ヘクスの半数を保持して「占領」任務を阻止して勝利するしかない。仮にその達成に失敗しても、その過程でドイツ軍に消耗を強いて最小限の勝利だけは達成したい。

G2_Turn02


果たせるかな、兵力と性能に勝るドイツ軍は、しかし慎重に前進してくる。ソ連側は最終防衛ラインだけではなく、その前面に陣地帯を築いて時間稼ぎを試みる。

G2_Turn03


ドイツ軍は兵力の優位を生かしてソ連軍の陣地線をジワジワと攻めあがってくる。ソ連側は時間稼ぎしつつも兵力の損耗を嫌って徐々に下がるしかない。

G2_Turn04a
G2_Turn04b
G2_Turn05


結局第8Turnまでプレイした。途中でティーガー重戦車2個中隊のスタックに対して砲撃を集中して混乱させた後、戦車部隊による包囲攻撃でまとめて殲滅するなど戦果を挙げたが、兵力の劣勢は如何ともし難く、都市ヘクスの過半数を失って敗退が決まった。

G2_Turn08


感想

GE_NHルールは簡単だが、少し癖がある。ZOCの扱い(進入及び離脱時に2MP必要)、障害地形の扱い(機動戦闘で障害地形内を敵を攻撃するためには"準備"マーカーの配置が必要)等がその例だ。まあ慣れれば大したことはない。
それよりも問題はシチュエーションの乏しさだろう。標準シナリオ及びキャンペーンシナリオの両方とも「ほぼ同数の両軍が遭遇戦を戦う」という状況しか再現できないのだ。本来であれば「敵よりも兵力は劣るが、遅退すれば勝利」とか「圧倒的な大兵力だが、損害を抑えつつ急速な突破が求められる」といったようなウォーゲームの「非対称性」に依る戦い方は本作とは無縁だ。さらに架空地図のマップも「箱庭」戦争感を強くさせる。総じていえばウォーゲームというよりもミリタリーチェスという感じだ。
結論から言えば、悪いゲームではないが、プレイバリエーションの低さが評価を下げる、といった所か。シチュエーションが特殊過ぎて(そもそも同兵力の遭遇戦なんてそうそうあるものではない)、それに合わせてシステムを合わせたことによる限界というのが私の感想である。

TigerTank