米国製魚雷ネタの続きである。


主題:"US Navy Torpedoes"
副題:"Part Three: WW II devlopment of conventional torpedoes 1940-1946

第2次大戦期における米国通常型魚雷の発展

 ここでは「非ホーミング魚雷」の発展について書かれている。米国が大戦中に使用した魚雷は、航空機用Mk.13、潜水艦用Mk.14、そして水上艦用のMk.15が中心であった。それ以外に米海軍が大戦中に開発した魚雷は10種類以上あった。その中で実際に配備されたのは以下の4種類である。
Mk.16 潜水艦用魚雷 HTP(高揮発度過酸化物)を動力源とする。1970年代まで実戦配備された。
Mk.17 水上艦用魚雷 HTP魚雷
Mk.18 潜水艦用魚雷 電気推進式。日本船舶を約100万トン撃沈した
Mk.23 潜水艦用魚雷 Mk.14の簡易生産版。速度モードが1つになった。
 大戦時における米国魚雷の発展は、(1)推進装置、(2)弾頭、(3)その他、に区分される。

(1) 推進装置

 魚雷は、化学燃料と酸化剤の反応によって推進力を得る。一般に酸化剤は通常の空気が使われるが、空気中の酸素濃度は23%に過ぎず、残りは不要な気体であった。酸化剤の効率を高めるために、米国は最初純粋酸素に着目した。しかしその試みは頓挫し、引き続いて米国海軍が目をつけたのがHTP(高揮発度過酸化物)である。余談だが日本海軍が純粋酸素を酸化剤とする魚雷の開発に成功したのは広く知られている。
 最初にMk.10を改造したHTP魚雷が製造され、試験で好成績を収めた。続いてMk.15を改造したMk.17が新しい駆逐艦用魚雷として製造する計画が推進された。しかし戦争が始まり在来型魚雷の需要が高まると、新型魚雷の開発は後回しにされた。終戦までに数百発のMk.16(潜水艦用HTP魚雷)、Mk.17(水上艦用HTP)が完成したが、実戦で使われることはなかった。
 電気式の推進装置を装備した魚雷=Mk.18もあった。Mk.18は従来型魚雷に比べると低速で短射程であったが(当時のバッテリー技術やモーター技術では、十分な射程を持つ高速魚雷を電気推進方式で製造することは不可能だった)、製造が容易であり、また航跡を残さないので隠密の攻撃を可能とした。米海軍の調査によれば、大型戦闘艦に対する攻撃時を除いて、Mk.18による攻撃は従来型Mk.14/23による攻撃に比べて命中率で劣った。それでもMk.18は100万トンの日本商船隊を沈めた(潜水艦全体での日本商船隊に対する戦果は480万トン)。

(2) 弾頭

 2つめの発展はTNTに代わる新型弾頭=Torpexである。TorpexはTNTに比べると艦船に対する水中爆発力で50%以上強力であった。ただしTropexはTNTやRDXに比べると製造上の安全性に難があった。1942年にTorpex弾頭の発注が開始され、同年後半にTorpex弾頭が登場した。潜水艦部隊によるTorpex弾頭への反応は、1943年3月19日にUSS「ワフー」の第4回目の哨戒任務時に記録されている。
「1本のTorpex魚雷により、4000t級の中型貨物船はバラバラになり、2分26秒で海上より姿を消した」
「ワフー」の記録はその様子を伝えている。
この重大な発展はしばしば見落とされる。何故なら同じマーク番号だけで魚雷の搭載弾頭を識別することができないからである。Mk-14-3AはTNT弾頭に対応していたし、もっと一般的なMk.15等はTorpex弾頭に対応していた。さらに弾頭交換は補給艦やデポで簡単に実施できたのである。CimSubPacの哨戒レポートは、1943年4月まで魚雷の型番や弾頭種別を明記することを要求していなかった。

(3) その他

 他に興味深い発展としては、電気制御、海水電池(Seawater Batte)、パターン航走等がある。海水電池の採用は電池推進式魚雷の性能を大幅に向上させた。海水電池はMk.26Mk.36で使用されたが、Mk.26は殆どMk.14(蒸気推進)に匹敵する性能を示し、Mk.36に至ってはMk.16(HTP推進)を除いてすべての魚雷を凌駕する性能を示した。しかし海水電池は高価であり、それが大きな障害となった。
 パターン航走は、例えば船団のような目標が密集している海域まで一直線に航行し、しかる後にパターンに従った航走を行うものである。その目的は命中のチャンスを増すことであった。このアイデアは独海軍にとっては非常に魅力的なもので、彼らはFATとLUTという2種類のプログラムをUボード用魚雷に搭載した。米海軍においては、Mk.36Mk.42の開発時にパターン航走が組み込まれたが、両方の魚雷とも配備されることはなかった。Mk.16のいくつかのモデルはパターン航走能力を備えたが、そのうちにパターン航走そのものの有効性にも疑問が持たれるようになり、やがて廃れていった。

感想

 まず推進装置についてだが、純粋酸素を利用した酸素魚雷を知る我々日本人にとって、過酸化水素を使った米国製新型魚雷がどの程度だったかは気になる所である。そこで日米の潜水艦用魚雷を比較してみよう。

 魚雷名称 Mk.16 || Type95Mod2
配備[年] 1945 || 1944
寸法[in] 21*246 || 21*345
重量[lb] 3,922 || 3,814
速度[kt] 46.2 || 50.0
 射程[yd] 11,000 || 6,000(注)
弾頭[lb] 920TPX || 1,213Type97
(注)雷速約46ktで射程8,200[yd]

 カタログスペックのみから優劣を論じるのは危険であるが、少なくとも上表を見る限り過酸化水素魚雷と酸素魚雷を比較した場合、性能面で大きな優劣はないと思われる。戦後の米海軍が日本の魚雷をどう評価したのかは知らないが、ひょっとしたら彼らは過酸化水素魚雷を以って酸素魚雷に優越したと判断していたのかも知れない。

 次にTorpex弾頭について。困ったことに1942年はTNTからTorpexへの移行期であったらしい。だからガダルカナル近海で日本艦隊と戦った米駆逐艦が果たしてTorpex弾頭付き魚雷を抱いていたのか、それともTNT弾頭だったのかは闇の中である。1942年発注開始、1942年後半から登場してきたとあるから、ガダルカナル戦に間に合ったようにも思う。しかし、取り扱いの難しい新型魚雷をいきなり実戦部隊で使用するのか?、という疑問も依然拭えない。常識的に考えれば、1943年春頃実戦登場と考えるのが妥当なように思えるが、それを現在作成中の水上戦ゲームに反映するのは容易ではない。
 さてさてどうしたものか?。

参考:http://www.navweaps.com/Weapons/WTJAP_WWII.htm (日本魚雷の性能)