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イントロ

 先日、京阪神へ行く用事がありまして、その時に昔からの数少ない対戦相手であるW氏とゲームをしました。その際、「ソロモン夜襲戦」(自作水上戦ゲームの仮称)のシナリオを計5回戦うという稀有の機会を得ることができました。そこで今回は3回に分けて、5回の対戦についての経過と簡単な感想を述べてみたいと思います。第1回目の今回は、第1~2回戦についての経過と感想を簡単に記してみたいと思います。連続5回とは言っても、実際の所最初の4回は練習みたいなものだったと言えるかも知れません。

第1回戦 - ベララベラ沖海戦



 シナリオの解説記事はこちら

 最初のプレイということで比較的登場艦艇数が少ないシナリオを選びました。1943年10月にベララベラ島から撤退する日本軍とそれを追う米海軍の駆逐艦同士の激突です。シナリオの規模は、日本駆逐艦6隻対米駆逐艦3隻という比較的小規模なものです。指揮ポイント、砲撃、雷撃、夜戦、レーダー等、本ゲームの大半のルールについて、このシナリオから学ぶことができます。
 ダイス判定の結果、私=連合軍、W氏=日本軍でゲームスタート。このシナリオではシナリオ開始時に連合軍が4ポイントの指揮ポイントを蓄積しているのに対し、日本軍は0ポイントスタートです。これは連合軍側がレーダーにより先制発見している有利さを示すためのルールです。また日本軍は4隻と2隻の2グループに分離し、後方の2隻は戦場から離れた位置にいるのに対し、連合軍は3隻が一箇所に固まった状態なので、前半戦は日本=4隻、連合軍=3隻の対決になります。あとはレーダーの優秀さが連合軍の強みですが、兵力で2倍の差がついているので連合軍不利は変わりません。ただ勝利条件的には連合軍がかなり有利に設定されていて、とにかく「相手に出血を強いることができれば味方の損害に関係なく勝利」できます。
 ゲームの展開としては、当初は予想通り日本4隻対米3隻の駆逐艦同士の戦いになりました。最初は指揮ポイントの有利さが効いて、米軍の射撃は何度か夾叉を得ました。ただ残念なことに夾叉を得たのは主砲5門のフレッチャー級だけで、主砲8門を持つ強武装のポーター級は夾又を得ることができません。それでも何発かが敵駆逐艦に命中し、そのうちの1隻(「磯風」か?)を脱落させることに成功しました。機を逃さず米駆逐艦は有利な射点から魚雷を一斉に発射。その1本が命中し、敵駆逐艦1隻を始末しました。
 ゲームも中盤になってくると、日本側の砲火も次第に苛烈になってきました。敵の主力は主砲6門装備の新鋭「夕雲」級。我がフレッチャー級も新鋭艦ですが、5門艦と6門艦の違いは結構効きます。味方の1隻(多分「オバノン」だったと思います)が命中弾を浴びて速度を失い損傷。そこへ日本軍の酸素魚雷がやってきて「オバノン」轟沈。もう1隻のフレッチャー級「シェバリエ」も日本艦隊から撃ちまくられて命中弾多数を浴びています。
 結局、米艦隊は日本駆逐艦1隻を撃沈、2隻を中破させる戦果を上げましたが、その一方で2隻のフレッチャー級を失い、生き残った「セルフリッジ」(ポーター級)も中破してしまいました。損害の比較では我が方の負けなのですが、勝利条件的には我が方の勝ちです。敵に多大な出血を強いたのが評価されたのかも知れません。あるいは翌朝、友軍機が損傷した日本駆逐艦2隻を仕留めてくれたのかも知れません。
 プレイ時間は1時間弱。イントロプレイとしては丁度良かったと思います。意外なことに、このシナリオ、他人とプレイしてみると結構面白いです。駆逐艦同士というのはある意味地味なシチュエーションなのですが、双方とも魚雷が強力なので、味方魚雷の威力を生かすような、また敵魚雷の威力を殺ぐ艦隊運動が求められてきます。それが結構刺激的です。砲撃の解決も短時間でサクサク終わるので、テンポの良いプレイも良いです。

第2回戦 - サボ島沖夜戦



 シナリオの解説記事はこちら

 続いてやや本格的なシナリオということで、サボ島沖海戦をプレイします。これは1942年10月にガダルカナル島攻防戦の中で戦われた海上戦闘です。それまで日本海軍のお家芸であった夜戦において、初めて米軍に敗北した戦いとしても知られています。W氏の希望によりW氏=日本軍、私=連合軍という陣立てになりました。
 日本軍の兵力は重巡3隻と駆逐艦2隻。重巡3隻はいずれも「青葉」「古鷹」型に属する艦です。日本海軍の重巡の中では旧式に属するグループであり、主砲の砲数も6門と少なく、他艦に比べるとやや性能的に劣っています。米軍は重巡2、軽巡2、駆逐艦5です。重巡は「サンフランシスコ」「ソルトレークシティ」で、前者が装甲防御力に優れた重防御艦、後者が主砲10門を持つ強武装艦です。軽巡「ボイシー」「ヘレナ」はいずれも6インチ砲15門装備の重武装艦。軽巡とはいってもその戦闘力は重巡クラスに匹敵します。駆逐艦はいずれもベンソン/リバモア級。しかも主砲と発射管を減らした後期モデルです。対空火力には優れているかもしれませんが、水上戦闘ではあまり期待できないクラスです。
 このシナリオの特徴は米側の奇襲にあります。レーダーで先制発見した米海軍が、有利な状態から日本艦隊に先制攻撃をかける形でゲームが始まります。当初は「お決まり」のパターン通り、T字戦法を取った米艦隊が、「青葉」上空に照明弾を打ち上げつつ、集中砲火を浴びせます。この時、効いたのが米軽巡2隻による砲撃で、15門の主砲から放たれた多数の6インチ砲弾が至近距離から「青葉」に命中しました。「青葉」大破。日本駆逐艦が至近距離から放った魚雷が「ソルトレーク」に命中。2本の魚雷を受けた「ソルトレーク」は戦場を離れて行きます。そして残った米巡3艦が「衣笠」「古鷹」の2艦に激しい砲撃を浴びせかけました。やがて「衣笠」が中破。この時点で勝利を諦めた日本側が投了し、ゲームが終了しました。
 プレイ時間は約1時間。先ほどのシナリオとは違い、今度は巡洋艦対巡洋艦ということでまた違った味わいがあります。8インチ砲6門の「青葉」型、同9~10門の米重巡、6インチ砲15門の米軽巡等、それぞれの艦の個性が出てきて、その点も興味深いです。ただ日本軍プレイヤーにとってはフラストレーションのたまるシナリオかも知れません。弱武装の「青葉」型で、強武装の米巡洋艦群に立ち向かうのは、日本側にとって至難の業です。日本側の頼みの綱は魚雷。魚雷攻撃で敵にどれほどの損害を与えられるかが勝敗の鍵となるでしょう。
 このシナリオの後、W氏から「日本側の指揮値が少さすぎる。あと奇襲ルールが厳しすぎる」という指摘がありました。指揮値については、やや古い数式で算定した経緯があるので、確かに見直しが必要かと思います。奇襲ルールについては、個人的には現状でもそれほど厳しいとは思わないのですが、主導権値の初期値が日本側にとってかなり不利なので、なかなか日本軍に主導権が行かないのがやや悲しい部分です。ここも見直しします。