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 (写真1)「ほくほく線」の出発駅である越後湯沢駅。「ほくほく線」は本書で紹介されている通り、関東地区と北陸地区を短絡する短絡線である。
 (写真2)越後湯沢駅で発車を待つ特急「はくたか」。最高時速160km/hを誇る高性能車両で、越後湯沢-金沢間を約2時間半で結ぶ。隣は「ほくほく線」の鈍行列車

全線開通版-線路のない時刻表 宮脇俊三 講談社文庫

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 私は子供の頃から時刻表を読むのが好きでした。時刻表を読んでいると子供ながらまだ見ぬ遠い世界へ旅に出かけたような気持ちにさせてくれるからです。時刻表を読んでいて気になっていたことがあるのですが、それは「どうして私鉄は国鉄(当時)とは別枠扱いになっているんだろうか」ということでした。以前にも書いたとおり、幼少の頃私は京阪沿線に住んでいたので、京阪電車の扱いがひどく小さいことに少なからず落胆していたものです。
 閑話休題。この本は、1980年当時「国鉄再建法案」によって完成間近にこぎつけながらも工事が停止した5路線、智頭線(現「智頭急行線」)、北越北線(現「ほくほく線」)、三陸縦貫線(現「三陸鉄道」)、樽見線(現「樽見鉄道」)、宿毛線(現「土佐くろしお鉄道」)について、筆者がその工事中断を悲しみ、せめて「乗った気分になりたい」ということで現地を訪れた訪問記です。ただ単に訪問するだけではなく、「宮脇俊三作 国鉄非監修」という筆者作成による架空の時刻表が掲載されていて、それを眺めるのも何か楽しい気持ちになれます。
 私がこの本をはじめて読んだのは文庫版が発売された1998年春頃でした。何気なく立ち寄った本屋で平積みされているこの本を見つけて、面白そうなタイトルだったのでそのまま購入したわけです。この本を読むまでは、私は上記5路線について1つも知りませんでした。私が鉄道ファンだったのは年少期の頃で、それ以来時刻表を購入することも殆どなかったのです。そういった意味からは「へえ、こんな路線があったんだ」という驚きの方が大きかったように思います。当時私の「知識」では、京阪神から鳥取へ行く場合には福知山経由が「常識」でしたし、関東から北陸へ向かう場合には長岡経由が「常識」でした。土讃本線は「中村まで」と決まっていたし、三陸海岸を全通する鉄道線の開通などは「あり得ないこと」だったのです。この本を読んで俄然鉄道旅行に興味がわき、それ以来鉄道に「文字通り」ハマリました。数年前には遂に「日本全国全線完乗」(笑)を達成しました。そういった意味では、私を鉄道旅行に引きずり込んだ張本人がこの本ということになります。
 現在ではこれら5路線がすべて第3セクター鉄道として開業したことは、鉄道旅行愛好者の1人としてはとりあえず喜ばしい限りです。その一方で「土佐くろしお鉄道」での事故、「ふるさと銀河線」(北海道)の廃止といった現実もあって、第3セクターの未来が必ずしも明るいものではないというのが悲しいことです。
 ちなみにこの本には上記5路線以外に「瀬戸大橋線」「津軽海峡線」についても紹介されています。これら2路線は本書執筆当時(1980年頃)でも工事が継続されていて、他の5路線とは少し趣が違うのですが、「まだ完成していない路線」ということで紹介されていたのでしょう。

評価★★★