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海軍航空隊始末記 源田實 文春文庫

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前回紹介した「海軍航空隊、発進」の続編です。
本書では、源田氏の英国出張から始まり、氏の真珠湾攻撃とのかかわり、真珠湾攻撃の経緯、インド洋作戦、ミッドウェー海戦、マリアナ沖海戦、そして343空の活躍について記されています。その中で注目したいのは、やはりミッドウェー海戦に関する部分で、特に例の「第二次攻撃隊発進の要ありと認む」に対する源田氏の心の葛藤は、読む者の興味を引きます。また343空に関する記述は、以前に紹介した「源田の剣」と併せて読めば、より興味深く読めます。
ただ本書の中で、台湾沖航空戦やT部隊に関する記述が殆どないという点はいただけません。台湾沖航空戦における例の「誇大戦果報告」の影に源田参謀あり、と勘ぐられているのも、どうやらこのあたりの不鮮明な態度に起因しているようにも思います。

不鮮明といえば、ミッドウェーで「赤城」がやられた時の源田参謀の対応がいやに「あっさり」しているのも気になります。他人に対しては(それが敵であっても)、

「この期に及んで躊躇逡巡するとは何事だ!」

と手厳しい源田氏。しかしいざ自分の旗艦がやられたときは、とてもあっさりと「長良」にお移りになられました。まあ「艦と運命を共にせよ」とか「腹を切れ」と主張するつもりはありません。が、せめてもう少し「敗戦の責任」をお感じになられても宜しいんじゃないでしょうか。

もう1点苦言を呈させていただくと、本書の中で日本海軍航空隊に対する筆者の評価が、いやに高いのも気になります。何かあると、やれ「世界最強だ」とか「向かう所敵なし」とか調子の良いコトを書いていますが、例えばガダルカナル戦当時の零戦隊は少なくとも「向かう所敵なし」というほど楽な戦をしていた訳ではないと思いますけど・・・。ご自身の所属していた組織について少しでも高く評価したいという気持ちは理解できなくはないのですが、もう少し冷静な評価はできないものかな、と思ってしまいます。同じ海軍出身者でも、例えば淵田美津雄氏などは少なくとももっと冷静に彼我の実力を評価していますよ。

とまあ色々悪口も書きましたが、とにかく「海軍航空隊にこの人あり」と言われた氏自身の作品ですから、ある意味当時の海軍航空隊を知るという点からは大変貴重な資料であることは間違いありません。ある意味、日本海軍航空隊の姿をとても良く反映している著作だとも言えますから。

評価★★★