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ミッドウェー 淵田美津雄/奥宮正武

ミッドウェー海戦を扱った古典的な作品です。利根4号機の発進遅れ、雷爆交換作業、敵空母らしきもの見ゆ、空母防空戦闘、運命の5分間、飛龍の奮戦とその最期、山口司令官の最期等、ミッドウェー海戦にまつわる数多くのエピソードがすべて描かれています。ある意味では我が国におけるミッドウェー海戦研究の出発点となった著作の1つかも知れません。

また本書は単にミッドウェー海戦における航空決戦のみならず、真珠湾攻撃、インド洋作戦、ドゥーリットル空襲、珊瑚海海戦といった海戦に至るまでの戦局や、我が海軍が第2段階作戦としてミッドウェー攻略を決定するに至った経緯なども一通り記載されています。

さらに本書は単なる「戦記」モノではなく、航空出身者から見た当時の日本海軍のあり方やミッドウェー作戦での作戦指導のあり方について批判的な検証が加えられていることです。例えば筆者らは当時の日本海軍における戦艦の運用方法について「時代錯誤的である」と批判していますが、ミッドウェー海戦の経緯やその後の戦いにおける日米戦艦の運用の違いを見てみると、筆者らの主張は納得できるものです。

その他本書の中で興味深かった内容をいくつか紹介しましょう。
まず1つは、ミッドウェー守備隊を予定されていた太田実少将の連合陸戦隊が思いの他重装備であること。火砲は20cm砲を含めて106、機銃40、魚雷艇5、特殊潜航艇10。仮にこれだけの火力がミッドウェーに集結していれば、米軍はその奪回時にかなりの出血を強いられていたかも知れません。「タラワの恐怖」ならぬ「ミッドウェーの恐怖」が現出されていたかもしれません。まあ、その前に日本軍がミッドウェーを占領するほうが余程困難かも知れませんが・・・。

もう1点は日本側の航空索敵情報の変化です。最初に利根4号機が「後方に空母らしきもの1隻見ゆ」と報じたのは有名な話ですが、その後「蒼龍」の2式艦偵が「敵空母は「エンタープライズ」「ホーネット」「ヨークタウン」の3隻である」と正確な報告をもたらしました。と、そこまでは良かったのですが、その後「飛龍」が被爆する前後から索敵情報がまたまた不正確になってきます。午後遅くになって「筑摩」の水偵が「傾斜中の空母以外に空母4、巡洋艦6、駆逐艦15を認めた」と報じてきたのをはじめ、敵空母に関する様々な情報が飛び交い、最終的には「正規空母3、特空母2~3、大巡5、駆逐艦15」と聯合艦隊が判断するに至ります。このあたり、有力な航空索敵能力を失った側の悲哀ということもできそうですが、それよりも予想外の敗北に右往左往する当時の日本艦隊の姿を垣間見るようにも思います。

本書は巻末にミッドウェー海戦に参加した両軍部隊の一覧表が掲載されていますが、それは日米両軍とも駆逐艦、潜水艦の艦長級まで実名入りで掲載するという細かさで、(もし記述内容に誤りがなければ)資料的な価値も十分高いものだと思います。

総じて言えば、終戦後わずか6年目にしてこれだけの著作が発表されたことは驚くべきことで、その公正な記述姿勢や当事者ならではの白熱した場面描写は現在でも十分通用する作品ではないかと思います。

評価★★★★