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Whistling Death (死の口笛)をやってみました

昨年やり残したゲームで紹介したWhistling Death(Clash of Arms Games)をプレイしてみました。このゲームは"Fighting Wings"と呼ばれるシリーズゲームの第3作です。デザイナーはJ.D.Webster。我が国では"Air Superiority"シリーズのデザイナーとして有名です。
このシリーズは1936年から1945年にかけての戦術航空作戦を再現するためのゲームシリーズで、過去に"Over the Reich"(WW2 Air Combat Over Europe 1943-1945)と"Achtung - Spitfire"(WW2 ~ 1940-1941)が出ています。ちなみに"Over the Reich"の方は、メーカーのサイトでも、クロノーツさんのサイトでも、見つけることはできませんでした(絶版かな?)。あと両者ともPC版のゲームが出版されているようですが、詳細は不明です。


「プレイした」とはいっても、このゲーム、元々が英文ルール約80ページという超精密空戦ゲームです。ルールをすべて読むだけでも大変なのに、プレイするのはもっと大変です。今回は「とにかくやってみよう」ということで、「練習シナリオ1」まで必要なルールを読みました。これだけだとルールブックは12ページ。ルールの内容も水平面での旋回、横滑り、加速減速に関するものだけなので、なんとかプレイできそうです。また私がかつてプレイしたことがある「Air Superiority」シリーズに類似したルール構成になっているのも理解を助けてくれました。とはいえマニアックなことで有名なこのシリーズ。例えば「燃料注入ポンプなしエンジン」(零戦を含めた大多数の日本機がこれに相当)ルールなどは。

「マイナスGの旋回を行うと燃料注入が止まるのでエンジンがアイドリング状態になる」

って、オイオイそこまでルール化しなくても・・・。

あるいは

「零戦は右方向より左方向の方がバンク性能が良い。だから消費FP(飛行ポイント)が左バンクの方が少ない」

って、このルールって零戦だけかよ、オイ。それにしてもよく調べたなあ・・・。

さらに驚くべきことに、このゲームは単なる空戦ゲームではありません。作戦ゲーム、戦術ゲームといった別スケールのゲームも同時に含まれていて、すべてのルールを組み入れると「発進から攻撃、そして帰還、着陸まで」といった航空作戦全てを再現できるみたいです。

これらのルールを取り入れた大型シナリオ、例えば「ラバウル要塞1943」では、日本側からは253空、204空、そして空母「瑞鶴」所属の零戦(22型、32型、52型の混成)計39機、空母「瑞鶴」所属の艦攻艦爆合計21機(「彗星」3機含む)、そして751空所属の一式陸攻6機の合計66機が参加します。対する連合軍は大型空母「バンカーヒル」を基幹とする空母機動部隊(「バンカーヒル」他、防空軽巡1、駆逐艦3)が参加し、その搭載機として、ヘルキャット12機、ヘルダイバー12機、アヴェンジャー9機が参加します。さらに日本軍の反撃から米空母を守るために、海兵隊所属のコルセア12機も上空警戒のためにはせ参じます。日米両軍はラバウル上空の攻防戦、さらには米空母機動部隊に対する反撃とその邀撃の為に闘うことになりましょう。


練習シナリオをプレイする

ところで肝心の練習シナリオの方ですが、これは零戦の2ヘクス真後ろにP-40を配置し、急旋回で逃げる零戦をP-40が何ターン追尾できるかを競うシナリオです。予想していたことですが、水平面の旋回戦でP-40が零戦に敵うはずもなく、1ターン追尾するのがやっとで、その後は軽々と引き離されてしまいました。その後コルセアの最新型(F4U-4)でも試してみましたが結果は同じ。コルセアでは零戦の低速運動性に歯が立ちません。
色々と他の機種も調べてみたのですが、唯一なんとか零戦の急旋回について行けそうなのは、以下の3機種でした。
 F2A Buffalo
 F4F-3 Wildcat
 FM-2 Wildcat
うーんさすがは空母艦載機。低速運動性はお手のモノですね。特にFM-2の運動性には目を瞠りました。零戦相手に水平面の旋回戦で唯一互角に戦える米軍機ではないでしょうか。
ちなみにクルクル回るだけなら零式観測機が最高!!。コイツ相手なら零戦でも振り切られます。ちなみに紫電改も旋回性能だけを見れば「恐るべき」戦闘機です。連合軍からみた場合、むしろ「疾風」の方が(水平面での旋回性が劣る分)組し易いみたい。この辺りの評価は「Zero」(GMT)とは違う所ですね。

実はプレイする前に少し不安に感じていたのがこの「水平旋回性能」の表現でした。というのも、"Air Superiority"シリーズ(現代ジェット機)の場合、「旋回率は全機種同じ。旋回性能の違いは旋回時の速度減少の違いで表現」という手法を採用していました。この手法が果たしてWW2期のレシプロ機の旋回性能差をどこまで上手く表現できるか、という点に少し疑問を感じていたのです。
今回練習シナリオをプレイしてわかったことは、「旋回時の最小速度」というルールが上手く効いている感じでした。これは急激な旋回を行う際に必要な最低速度を規定したものなのですが、このルールのおかげで旋回性能の違いがリアルに表現されているように思います。例えば零戦のように翼面荷重の小さい機体は必要最小速度が小さく(つまりクルクル回る)、逆にヘルキャットのような重戦闘機の場合はそれが大きく設定されています。これは物理的にみても納得できる処理方法で、低翼面荷重の機体は低速でも翼が十分大きな揚力を発生させることができるために高Gの旋回が可能で、対する高翼面荷重の機体は翼の生み出す揚力が小さいために高G旋回するためには高速を出す必要があります。いわゆる「コーナー速度」の概念ですね。これはとても面白い処理で、例えばこの方法で「烈風」やF8F "Beracat"を表現したらどんなデータになるんだろう、と興味は尽きません。

練習シナリオをプレイしただけでも「傑作」の雰囲気を感じさせてくれる作品でした。


Whistling Deathの魅力を(少し)語る

このゲームの魅力について語ります。1つは「精密空戦ゲーム」としての魅力。先ほど紹介した細かすぎるルール(例えば「燃料注入ポンプの有無」等)は、あるいはプレイする際には邪魔なものかも知れません。しかし面倒なルールを駆使し、1つ1つの手作業を経て再現される「零戦vsワイルドキャット」あるいは「零戦vsヘルキャット」といった世界。このゲームで提示されたこの「スローモー」な世界。もしこの世界が非常に「優れた再現性を持つ」ものであるのなら、あるいはそのような「再現性を提示するかも知れない可能性」を秘めているとすれば、このゲームはそれだけの手間隙をかける価値があるのかもしれないな。そんな気がします。そして例えばGMTの"Zero"のようなゲームが示す「簡略化された世界」とこのゲームが示す「超精密な世界」との対比を味わうことができるのであれば、それはこのホビーの楽しみ方の1つかも知れないな、と、そんな気がしたりもします。

もう1つはキャンペーンゲームの魅力。先ほど紹介した「ラバウル要塞1943」などは実際には多分プレイ不可能でしょう。しかしそのシステムは極めて可能性を秘めた、そして魅力的なシステムではないかと思います。
あの日(1943年11月11日)にシンプソン湾上空を埋め尽くした米艦載機の大編隊、港内から打ち上げられる対空砲火。ラバウルの各基地から邀撃のために飛び立って行く零戦隊、さらには遠く洋上に浮かぶ米空母部隊に対して決死の反撃を行った艦爆艦攻隊とそれに対して立ちふさがったコルセア戦闘機。艦隊上空を真っ黒に染めたVT信管装備の対空砲火。全滅した艦攻隊の物語。等等。
史実の「第3次ブーゲンビル島沖航空戦」で演じられた数々のドラマを実際に盤上で、しかもリアルに再現できるゲームを私は他には知りません。確かに現実にはプレイ不可能かも知れませんが、自分の頭の中で盤上で再現されるであろう航空戦を想像するだけでもワクワクしてきます。それがこのホビーの魅力の1つではないかな、と、そんな風に大げさに考えてみたりもしています。

無論、今の所ようやくルールの一部を読み終えた所です。全ルールを読破し、さらには全てのルールを使いこなせるようになるまで、あとどれだけの時間が必要かわかりません。またこのゲームが実は「クソゲー」で、実際には一文の価値すらないゲームである可能性も完全には否定できません(今の所その可能性は極めて低いですが)。そして仮にこのゲームが期待通り(あるいはほぼ期待に近い内容)であり、さたには私が全ルールを読破することに成功したとしても、私自身がソロプレイ以外でこのゲームをプレイする機会は多分ないでしょう。

それはそれで構いません。このホビーの魅力は対人戦だけではないのですから。対人戦は「Zero」のような「軽いゲーム」に任せておき、もっとディープな世界を堪能するときにこのゲームの世界に浸ってみるのも楽しいことではないでしょうか。

おっと、少し長くなってしまいました。屁理屈を並べる暇があったら、ルールブックを少しでも読んでいきましょう。こいつは久しぶりに「手応えのある」ゲームになりそうですから・・・。雨の日曜日はまだまだ終わりませんよ。

(つづく)