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Geogle EarthとCyber boardで試作した「ソロモン夜襲戦-デラックス版」のマップの一部。右上の小さい島は「あの」サボ島です。

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こちらは作戦マップ(試作)です。1ヘクス50海里、右下の水色はヘンダーソン飛行場ヘクスです。ショートランド-ガダル間が6ヘクス(300海里)、ラバウル-ガダル間が11ヘクス(550海里)とピタリだったので、ちょっと嬉しかったりします(当たり前か)

「ソロモン夜襲戦」デラックス版計画(承前)


ウォーゲームにはドラマ(物語)が必要だ

これは私が常日頃から思っていることです。例えば「第3帝国」というゲームであれば、ポーランド戦役から始まる第2次欧州大戦の流れそのものが一つのドラマであり、ゲームがその流れを上手く取り込むことができれば、自ずと物語性が生まれてきます。他にも太平洋戦争全体を扱ったゲーム、ガダルカナル戦役を扱ったゲーム等も歴史の流れを適度に取り込むことにより、プレイヤーは自然と歴史が持っている物語に入っていくことができます。

ところで戦術級ゲーム、特にマルチシナリオ形式のゲームは「ドラマ性」という点ではやや見劣りする面が多いようです(もちろん例外もあります)。最近プレイしたいくつかの戦術級ゲーム、例えば「BattleFiled Europe」(GDW)や「ZERO」(GMT)等も、

「このゲーム、システム的には見るべき点があるのに、シナリオにもう一工夫欲しかったなあ・・・・」

という感じがします。そして我が「ソロモン夜襲戦」も残念ながらその例外ではありません。

 (注)「ソロモン夜襲戦」とは、自作の水上戦ボードゲームです。詳しくはこちらをご覧下さい

前回は「何故マルチシナリオ形式の戦術級ゲームには物語性が乏しいのか」という点について考察してみました。今回はそれを解決するための1つの手法について、「ソロモン夜襲戦」を題材として考察していきます。

2.デラックス版への道

「ドラマ性」の高い戦術級ゲームをデザインするためにはどうすれば良いのでしょうか?。今までの考察を裏返せば良いと思われます。

1.著名な状況
2.明確な勝利条件
3.具体性の高いコンポーネント

これらの課題をクリアできれば、ドラマ性の高い戦術級ゲームをデザインすることは必ずしも不可能ではないように思います。「ソロモン夜襲戦」でこれらの条件をクリアできる状況はないでしょうか?。開戦初期の南方攻略戦、ガダルカナルを巡る攻防戦、中部ソロモンの戦い、レイテ沖海戦、・・・・・。状況は色々と考えられますが、私は「第3次ソロモン海戦」を候補に上げてみました。

第3次ソロモン海戦とは、1942年11月中旬にガダルカナル島を巡って戦われた日米艦隊同士の戦いです。当時ガダルカナル攻防戦は両軍にとって苦しい状況が続いていました。
日本側から見た場合、10月下旬に行われた第2師団による第3次強襲が失敗に終わり、新たな増援部隊として第38師団をガダルカナルへ送り込むことを計画していました。11隻の輸送船に分乗した彼らはショートランドに集結。駆逐艦の護衛の元、一路ガダルカナルへ向けて出航しようとしていました。ガダルカナルへ輸送船を送るに際し、脅威となるのはヘンダーソン基地の米航空部隊です。そこで日本海軍は高速戦艦2隻を中心とする砲撃部隊をガダルカナル近海に突入させ、艦砲射撃によってヘンダーソン基地の制圧を企図しました。対する米軍はガダルカナルへの兵力増強を継続して行う一方、日本側の兵力増強を警戒していました。

戦いは11月12日夜、ガダルカナル近海における日米艦隊同士の激突により開始されました。高速戦艦2隻を擁する日本艦隊は巡洋艦を中心とする米艦隊を終始圧倒。甚大な損害を被った米艦隊は海戦そのものには敗退しましたが、その勇戦によって日本軍のヘンダーソン飛行場砲撃を阻止することに成功しました。
11月13日、ガ島砲撃失敗を受けた聯合艦隊は船団の間接護衛に当たっていた外南洋部隊に対しガダル砲撃を命じました。8インチ砲重巡を主力とする外南洋部隊が13日夜にガダル近海に突入、約1000発の8インチ砲弾をヘンダーソン基地に叩き込みますが、同基地の機能を奪うには至りません。
11月14日、予定を1日遅らせてガダルカナル島を目指した日本軍の輸送船11隻は、米軍機の連続的な波状攻撃を受けました。輸送船7隻が次々と撃沈又は大破せしめられていきます。それでも生き残った4隻の輸送船がなおもガダルを目指します。
11月15日夜、戦艦「霧島」を主力とする日本艦隊が再びガダルカナル近海に姿を現します。しかしそこに待っていたのは新鋭戦艦2隻を中核とする米水上部隊でした。激しい砲撃戦によって両軍は大きな損害を被りましたが、日本軍のガ島砲撃は失敗に終わりました。貴重な高速戦艦「霧島」を失った日本艦隊は敗退します。
日本側の輸送船団4隻は14日夕刻にガダルカナル近海に到着。直ちに揚陸作業を開始します。しかし翌朝になってヘンダーソン基地を発した米軍機が輸送船団を攻撃、さらには敵駆逐艦の攻撃も加わりました。次々と炎上する輸送船。こうして日本軍のガダルカナル増強作戦は完全な失敗に終わりました。

亀井宏氏の「ガダルカナル戦記」によると、この時の日本海軍の輸送計画は陸軍側の希望からは程遠い状態であり、増強著しい米軍部隊を追い落とすには甚だ不十分な兵力しかなかったようです。そういった意味では日本側の輸送が成功しようがしまいがガダルの戦況に大きな影響はなかったと言えるかもしれません。しかし「日本輸送船団全滅」という劇的な事態が米軍をして「ガダルカナルの勝利」に大きな自信をつけたことは間違いないです。

a.著名な状況の再現

第3次ソロモン海戦と一言で言っても一般の人にはあまりピンとこないかも知れません。しかし太平洋戦争の海戦史では必ず取り上げられる戦いです。なんと言っても日米の戦艦同士が直接戦ったのは、この海戦の他は1944年のスリガオ海峡海戦ぐらいしかありません。そういった意味では一応「著名な状況」と言っても良いのではないでしょうか。

b.勝利条件の明確化

上記の歴史的な状況を考慮すると、日米両軍の目的は明白です。日本軍はガダルカナルへの輸送成功、米軍はその阻止です。そしてその鍵を握るのがヘンダーソン基地の状態です。この海戦で日本軍は3度に渡ってヘンダーソン基地砲撃を試み、1度は成功したものの、それは重巡部隊を主力とする限定的なものでした。ヘンダーソン基地の機能を奪うには至らず、それが日本軍輸送船団に引導を渡す結果となったのです。
この場合、日米両軍の大目標は「ガダルカナルへの兵力増強又はその阻止」となります。それを達成するための中間目標が「ヘンダーソン基地の制圧又は保持」となります。もちろん大目標は決まっていても、中間目標は他にも色々と設定できるでしょう。飛行場を砲撃して制圧するばかりではなく、例えば空母機による輸送船団の上空援護といったことも考えられます。ゲームとしてはそういった幅広い選択を可能なように作ってみたいです。

c.具体性の高いコンポーネント

テーマを「第3次ソロモン海戦」に絞り込んだことにより、マップやユニットはより具体性に富んだものに変更することができます。今まではどこかわからない「海一面」のマップでしたが、デラックス版ではガダルカナル北方海域、いわゆる「鉄底海峡」を1500mスケールで描いたものにする予定です。また個々のユニットは今までのように「BB-1」「CA-1」といった味気のないものではなく、艦名入りとなり、よりプレイ意欲を盛り上げることができます。

d.シングルシナリオ

当然シナリオは1本だけです。第3次ソロモン海戦です。これは単に「ある一局面での艦対艦の戦闘」ではなく、第3次ソロモン海戦全般を扱ったものになります。このシナリオを演出するために十分な時間をかけて、シナリオとして面白いものを作っていきたいと思います。このシナリオには従来までの戦艦、巡洋艦といった水上戦闘艦以外に、輸送船や航空機、さらには空母等も登場し、「作戦マップ」のようなものも必要になってくるでしょう。無論メインテーマは水上戦闘なので、それ以外のルールは極力単純化したいのですが、場合によっては本格的な空母戦ゲームに近いような海空戦ルールが必要になってくるかもしれません。今までの単なる「艦と艦の叩き合い」では味わえないプレイバリエーションを楽しむことができるはずです。

とまあこんな感じで立ち上げた「ソロモン夜襲戦デラックス化計画」。さてさてどうなることやら・・・・。

P.S.続編として「デラックス版-レイテ沖海戦」を夢想していますが、これはエイプリルフールネタですね。