「ソロモン夜襲戦」登場艦艇紹介

今回は「ソロモン夜襲戦」に登場する艦艇について紹介したいと思います。実際の性能や戦歴は他の史料等を見ればわかる話なので、ここでは「ソロモン夜襲戦」におけるこれらの艦(フネ)の扱いについて書いていきたいと思います。

 (注)「ソロモン夜襲戦」とは、自作の水上戦ボードゲームです。詳しくはこちら

登場艦列伝 - 連合軍軽巡編 バックナンバー

連合軍軽巡編(2)
連合軍軽巡編(1)

英軽巡概説

戦前及び戦時中における英海軍の軽巡群は非常にバラエティに富んだものでした。WW2に参加した艦に限定したとしても、その内訳は、WW1型の旧式軽巡が3クラス以上23隻、条約時代が3クラス22隻、無条約時代が2クラス29隻、敷設巡洋艦が2クラス7隻で、合計すると10クラス81隻という大所帯になります。これは隻数、クラス数いずれの面からも日米を大きく凌駕しています。また日米の軽巡群が同じような性格の艦を多数装備するという感が強かったのに対し、英海軍の軽巡群は、旧式艦から砲戦用軽巡、防空軽巡、さらには敷設巡洋艦と、様々な目的を持った艦が混在しています。
「ソロモン夜襲戦」は日米の水上部隊が主役となるため、英海軍の登場する機会はあまり多くはありません。従って英海軍が営々と整備してきた厖大な数の軽巡群も、本作ではあまり活躍の場がありません。今後、もし「ソロモン夜襲戦-欧州海戦編」がデザインされることがあれば、その時は大々的に英軽巡群を取り上げてみたいと思います。

「エメラルド」級

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「エメラルド」級軽巡「エンタープライズ」(HMS Enterprise)。WW2ではノルウェー、西地中海、インド洋方面で活躍。1943年以降は本国海域に帰還。同年12月末にはビスケー湾でドイツの封鎖突破船を捕捉し、護衛の艦艇3隻(駆逐艦、水雷艇)と共にこれを葬り去った。

概説

英海軍がWW1期に整備してきた軽巡洋艦は、C級28隻、D級8隻を経て、E級に辿り着きました。E級又は単に「エメラルド」級と呼ばれるこの軽巡は、我が「球磨」型や米「オマハ」級よりやや大きい約7500tの基準排水量を有していました。機関出力は逆にやや小さめで8万馬力。速力は33ktです。武装は15.2cm砲計7門で、我が「球磨」型を凌駕していましたが、米「オマハ」級よりは低火力でした。当初は同型艦3隻が建造されることとなっていましたが、完成したのは2隻のみです。

ゲームでの性能

15.2cm砲の火力が3-6-2。我が5500t級を凌駕する火力です。ただし米「オマハ」級や「ブルックリン」以降の大型軽巡には敵いません。装甲は2-5-4。巡洋艦としては「最小限度の厚さ」と言って良いでしょう。15cmクラスの火砲には何とかギリギリ耐えられる厚さですが、20cm砲には耐えられません。本級の特徴は強力な雷撃装備で、両舷にそれぞれ53cm魚雷発射管を6門づつ装備しています。これは日本海軍の重巡クラスに匹敵する雷装です。

シナリオでの扱い

シナリオ3「見敵必戦」(マレー沖海戦を扱った仮想シナリオ)に「エメラルド」「エンタープライズ」の2艦が揃い踏みで登場してきます。というよりも、シナリオ3で登場させる必要があったから本級のデータを追加した、というのが真相です。

「リアンダー」級

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「リアンダー」級軽巡「エイジャクス」(HMS Ajax)。1934年に就役した同艦は、ラプラタ沖海戦での奮戦をはじめ、南米沖では3隻のドイツ商船を撃沈又は自沈に追い込み、1941年には地中海でイタリア軍輸送船団に大損害を与えるなど、西半球全域に渡って活躍した殊勲艦であった。

概説

1933年~1936年にかけて計8隻(改良型の「パース」級含む)が就役した軽巡洋艦です。条約型軽巡とも呼ばれ、英国最後の条約型重巡である「エクセター」の艦型を踏襲したものになっています。排水量約7000t。米「オマハ」級とほぼ同程度です。主兵装は15.2cm砲8門と53.3cm魚雷発射管8門。「オマハ」級と比べるとやや軽武装ですが、合理的な兵装配置のために実質的な戦闘力では「オマハ」級を凌駕します。中型の偵察巡洋艦としては優れた性能を持った艦なのですが、日米が個艦戦闘能力をさらに高めた「最上」型軽巡や「ブルックリン」級軽巡の整備に着手したため、英国の軽巡整備も個艦戦闘能力重視の「サザンプトン」級軽巡へ移行していきました。第2次大戦では「アキリーズ」と「エイジャックス」がラプラタ沖海戦で独装甲艦「グラフ・シュペー」相手に奮闘したことが知られています。また太平洋戦線では、「パース」がバタビア沖海戦で日本艦隊と交戦して沈没、「リアンダー」がコロンバンガラ島沖で日本艦隊と交戦し損傷、「ホバート」は珊瑚海海戦やガダルカナル島上陸作戦に参加したりしています。そういえば「アキリーズ」が日本艦爆の急降下爆撃によって損傷した、なんていう話もありましたっけ?。このクラスはオーストラリアやニュージランド海軍へ「出向」した艦が多いので、日本軍と交戦する機会が比較的多かったクラスでもあります。

ゲームでの性能

15.2cm砲の火力が4-8-4。この大きさの艦の中では優れた砲力を持った艦だと評して良いと思います。ただ「ソロモン夜襲戦」の場合、個艦戦闘能力の高い艦が有利という面がありますので、本級のような中型巡洋艦はやや不利である、という点は否めません。水雷兵装は左右にそれぞれ発射管4門づつ。搭載魚雷は安定した性能を持つ英国製魚雷なので、米巡洋艦よりは雷撃力は強化されています。装甲は3-6-5。重巡並みの重装甲です。15cm砲に対する防御力は概ね十分と評して良く、また中距離から放たれる20cm砲に対してもある程度の抵抗力を期待できます。

シナリオでの扱い

シナリオ10「青白い殺人者」に「リアンダー」が登場します。というよりも、シナリオ10で登場させる必要があったから本級のデータを追加した、というのが真相です。他に本級が登場するような設定を考えてみると、例えば第1次ソロモン海戦の「ホバート」。史実では東方警戒部隊に所属していたために日本艦隊と砲火を交えることのなかった「ホバート」ですが、日本艦隊による米輸送船団攻撃を含めた視野で同海戦をデザインし直してみると「ホバート」が活躍できる余地が出てくるかもしれません。「ホバート」はその後東部ニューギニア方面へ移動しているので、例えばミルン湾沖で我が「天龍」「龍田」と「ホバート」の交戦等も面白いかもしれません。