最悪の海軍記念日

takobaさんの自作空母戦ゲーム「帝海第3艦隊」のリプレイです。今回は標準シナリオ「最悪の海軍記念日」に挑戦します。選択ルールを除くすべてのルールを使用する本格的なゲームで、まさに「帝海第3艦隊」の真骨頂ともいうべきシナリオです。



第14ターン(10月27日午後)

北上を続ける米艦隊は、遂に日本空母をその砲戦距離内に捉えた。新鋭戦艦2隻を中心に、巡洋艦5、駆逐艦5からなる第64任務部隊は、距離30kmの彼方に軽空母「瑞鳳」を含む日本艦隊を捕捉したのだ。日本艦隊の兵力は、「瑞鳳」の他、重巡3、駆逐艦4で、戦艦を含む米艦隊の敵ではない。米艦隊はぐんぐん速度を上げて日本艦隊を追う。

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有力な米艦隊がガダルカナル北方160海里の地点で日本艦隊をつかまえた。新鋭戦艦の40cm砲が唸りを上げる

損傷した軽空母「瑞鳳」は10kt前後の速度しか発揮できなかったが、米軍が警戒してやや消極的な追撃戦を行ったため、敵に捕捉されることなく戦場を離脱することに成功した(まるでサマール沖海戦じゃ)。その後も米軍の追撃にはやや積極性に欠け(日本軍の魚雷を恐れた)、また砲撃精度も決して優れたものではなかった。巡洋艦以下の砲撃によって日本駆逐艦3隻を撃沈、戦艦の砲撃で重巡「熊野」「利根」を中小破させたが、圧倒的な兵力を持つ米艦隊としてはやや不満の残る結果となった。

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日本艦隊を追撃する米高速戦艦部隊。しかしこの海戦は米軍にとって甚だ不満足な結果に終わった。

「『瑞鳳』攻撃さる』

この報に接した日本艦隊は、付近を航行中であった前進部隊(近藤中将)に対し、米戦艦迎撃を命じた。高速戦艦4隻を中核とする日本軍水上打撃部隊は、夕闇が迫る洋上に米艦隊を捕捉した。「見敵必殺」の執念に燃える日本艦隊であったが、実は迎え撃つ米艦隊も戦意十分で待ち構えていた。ここに太平洋戦争初の戦艦同士の砲撃戦が幕を開けた。
日本軍16隻対米軍12隻。隻数では優位に立っている日本軍であったが、実質的な優劣はそれほど単純な話ではなかった。日本艦隊の主力である4隻の高速戦艦のうち、ほぼ無傷で戦闘可能なのは「霧島」「榛名」の2艦のみ。「金剛」「比叡」については午前中の航空攻撃によって少なからぬ損害を被っていたのだ。

最初はお互いに警戒して一定の距離を維持していた両軍艦隊であったが、第2ラウンドに米軍が一気に距離を詰めたことによって本格的な砲撃戦の幕が上がった。先手を取ったのは米艦隊。2隻の戦艦が「榛名」を狙って射撃開始。4発の命中弾が「榛名」を捉えた。「榛名」は構造物、船体に各1ヒットを被ったが、未だ戦闘力を保持していた。巡洋艦部隊は駆逐艦を狙い、駆逐艦2隻を撃沈、1隻を中破させた。日本軍の反撃。重巡5隻が米駆逐艦を狙って射撃開始。彼らは射撃戦技量の冴えを見せて米駆逐艦3隻を撃沈、1隻を中破させた。しかし唯一無傷で残った戦艦「霧島」は、米重巡を狙って射撃を開始したものの、1発の命中弾を得ることもできなかった。

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敵味方入り乱れて戦う両艦隊。

中途半端な状況に業を煮やした日本艦隊は、一気に勝敗を決するべく全艦に突撃を命じた。しかしこの行動はあまりに無謀だった。待ち構えていた米艦隊は、その全砲門を日本艦隊に向ける。「ワシントン」の砲撃で「榛名」轟沈。「サウスダコタ」は「比叡」を一撃で仕留めた。巡洋艦以下の砲撃で「妙高」「摩耶」が中小破し「長良」と2隻の駆逐艦が轟沈した。そのころからようやく日本軍の反撃も効果を発揮し始めた。日本重巡群の砲撃によって米重巡「ポートランド」「ペンサコラ」撃沈、重巡「サンフランシスコ」大破、戦艦「ワシントン」も小破し、駆逐艦数隻が撃沈されたのである。その後、米艦隊の攻撃によって戦艦「霧島」が撃沈され、重巡群にもさらなる損害が出たため、日本軍は戦闘を終了して戦場離脱していった。米艦隊はそれを追ったが、日本艦隊の逃げ足は速く、米艦隊の戦果は逃げ遅れた重巡「妙高」を始末しただけであった。

突然の幕切れ

とまあ、ここまで進んだ所で今回のリプレイは終了としました。日米両軍とも水上部隊の砲弾を撃ち尽くした上、航空兵力にも甚大な被害が出ていたためにこれ以上の交戦が不可能だと判断したためです。ここまでの両軍の損害を以下の通りまとめてみました。

日本軍

沈没:空母「隼鷹」、戦艦「榛名」「比叡」「霧島」、重巡2、軽巡1、駆逐艦8
大破:空母「瑞鶴」
中破:空母「翔鶴」、軽空母「瑞鳳」、戦艦「金剛」、重巡4、軽巡2、駆逐艦1
小破:重巡1
航空機:35ユニット

米軍

沈没:空母「ホーネット」、重巡2、駆逐艦6
大破:重巡1
中破:戦艦「ワシントン」、駆逐艦2
航空機:28ユニット

損害だけを見ると随分日本軍が「負けている」ように見えますが、これは最後の水上戦での損害が大きかったためです。最後の海戦は明らかに日本側の不手際による結果なので、もし日本軍プレイヤーが賢明であれば、あのような酷い結果にはならないと思います。

感想

標準シナリオをやり遂げました。なかなか面白かったです。最初に「ホーネット」が沈んだ時には、「これで決着がついたかな?」と思ったのですが、米艦隊がまさかの逆転劇を演じたことには私自身驚きました。
デザイナーズノートによると、このゲームの基本コンセプトは「3時間で完了する平易なルールのゲーム」とのことです。今回のリプレイは3時間どころか10時間近くかかってしまいましたが、これは記録を取ったり、ルールを確認したり、画像データを加工したり、を同時に作業していたためです。実際のプレイ時間がどのくらいになるのかは、地図の上に駒を並べて評価しなければわからないでしょう。従ってプレイ時間に関する評価については、今回は割愛させていただきます。
「平易なルール」については、個人差があるのでなんとも言えないのですが、このゲームのルールが「極端に難易度の高いものではない」ということは間違いないと思います。ただ3次元的な戦闘を再現する空母戦ゲームの常としてルールの量はそれなりに多くはなっています。もし今よりもルールを減らすことを目指すとするのであれば、例えば「爆装機に対して攻撃する時は空戦力+1」とか「敵駆逐艦を爆撃する時は爆撃力-2」といったルールを消去する、というのも1つの手かもしれません(その分の補正は爆撃機や駆逐艦の防御力に反映する訳です)。
このゲームで一番楽しい所は空対艦戦闘です。専用の戦術マップを使用し、攻撃側、防御側の航空機が入り乱れて戦う様は、実際の空母戦のイメージを見事に再現しています。デザイナーズノートによれば「平易なシステムで戦闘の雰囲気を再現したい」とのことでしたが、今回のテストを見る限り、その意図は十二分に達成されている、と考えて良いでしょう。
また「ランダムシーケンス」も評価したい所です。デザイナーズノートによれば「比較的大きな時間スケールの中で空母戦のスリリングな面を再現したい」ために採用した「ランダム-シーケンス」ですが、今回のリプレイではその「良い面」が出たように思います。1ターン約4時間という比較的大きなタイムスケールを扱いながらも、ランダムシーケンスのおかげで空母戦のスリリングな一面が無理なく再現できていると言う点は十分に評価したい所です。

(おわり)