コマンドマガジン日本語版第78号付録「天下強奪」のリプレイです。
第15ターン
田辺城が落ち、そして鳥羽、敦賀の両城が危ういながらもまだ持ちこたえている。そのため西軍は待望の「出陣要請」チットを手に入れた。初期配置の1枚と合わせて計2枚である。秀頼出陣の確率が1/7から2/7に上がった。ホンの少しだが西軍にも希望の光が見えてきた。西軍は佐和山、水口、大津を結ぶ半円状の戦線を構築し東軍を迎え撃つ。立花宗茂隊を主力とする西軍3部隊が恨み重なる(という程でもないはずだが・・・)小早川秀秋を包囲攻撃。見事これを壊滅させた。しかし石田、大谷のコンビによる東軍筒井定次への攻撃は、例によってARを出して失敗に終わった。

小早川、筒井両隊を攻撃する西軍諸隊
続く東軍の攻撃で彦根方面を守る毛利秀包隊が壊滅。伊勢方面でも鳥羽を死守していた九鬼嘉孝が東軍に降った。長らく抵抗を続けていた敦賀城も東軍の攻撃を受けて遂に耐久力が0にまで低下した。
第16ターン
西軍は石田、大谷、立花の3隊で東軍筒井定次を包囲攻撃した。オッズ3:1で順当にDR。漸く筒井を葬った。その頃東軍は佐和山城攻撃に着手した。東軍の攻撃に対して佐和山城主は城を明け渡して降伏。この卑怯な振る舞いを行った将が誰であったのか?。それは未だに明らかにされていない(どこかの0戦力大名であることは間違いないのだが・・・。
第17ターン
西軍は遂に大津付近にまで後退した。その撤退戦の最中、小西行長が東軍によって討ち取られた。これまで幾度かの危機を強運で乗り切ってきた彼であったが、ここに至ってその強運にも見放されてしまった。三成はこれまで一緒に戦ってきた同志の死を目の当たりにしながら、それでも目的邁進へ決意を新たにするのであった。「秀頼出陣」は本ゲームにとって最大のイベントである。「秀頼出陣チット」は計7枚用意されているが、本物の「秀頼出陣」はその中の1枚のみ。つまり「秀頼出陣チット」1枚につき実際に出陣が行われる確率は1/7に過ぎない。確率的には高くはないが、可能性がゼロではない以上、東軍は常にその可能性を考慮しておかなければならない。もし秀頼出陣が行われた場合、西軍の指揮能力が大きく向上するし、東軍についている中立大名達も西軍に寝返ることになる。福島や浅野といった有力大名に裏切られたら、東軍も無事では済まないだろう。
チットの結果は
「使者捕縛」
三成は運命が徐々に彼を見放しつつあることを感じた。
「使者捕縛」
三成は運命が徐々に彼を見放しつつあることを感じた。
秀頼出陣がないと知るや東軍は西軍戦線に総攻撃を加えてきた。福島正則が例によってその突進力を生かして西軍戦線後方に回り込む。正面からは徳川秀忠、浅野幸長、森忠政、榊原康政、本多忠政等も攻撃に加わった。包囲攻撃によって宇喜多秀家、立花宗茂が相次いで討ち死にした。三成は自らの手足がもがれて行くのを感じていた。

東軍主力の総攻撃にさらされる西軍部隊。この直後、宇喜多秀家、立花宗茂の2人は相次いで討ち死にした。
三成は絶望感に包まれていた。彼の秀頼公出陣要請は悉く握りつぶされていた。
東軍の攻撃は熾烈を極めた。このターン水口城が落城。城を守っていた長束正家は最後の一兵になるまで奮戦したという。
「淀君の反対」
たかが女ではないか。三成はそう思う。しかし「その女」が今の豊臣家を牛耳っているのもまた事実。この時三成は勝利が自らの手中から消えていくのを感じていた。瀬田の線では盟友大谷吉継が討ち死にした。三成は利害を超越して行動を共にしてくれた友の死に、只涙するしかなかった。

西軍最後の望みである出陣要請チット。しかしその結果は・・・。ふざけるな!!、と三成は叫んだだろう。
第21ターン
三成が目指したのは岸和田だった。その時岸和田には東軍の古田重勝が居座っていた。岸和田を解放し、堺の町を手中にすればまだチャンスはある。三成はそう睨んだ。岸和田を守る古田重勝に対して三成は3:1攻撃を敢行。見事DRの結果を得て岸和田を奪回した。その頃伊賀上野では毛利秀元が東軍の総攻撃によって玉砕していた。伏見を守る滝川雄利も圧倒的な東軍を支えることができずに壊滅した。東軍は攻撃の鉾先を西軍の本拠地たる大坂に向けた。
第22ターン
大坂さえ落せば全てが終わる。そう考えた家康は大坂城に対する総攻撃を命じた。今まで後方に温存されていた家康本隊が初めて最前線に姿を現す。福島正則、黒田長政、藤堂高虎、森忠政も攻撃に加わった。オッズは6:1。最高比である。結果はDE。大坂城を守る毛利輝元は家康に無条件降伏するしかなかった。家康本隊が参加した戦闘でもし後退の結果が出た場合、西軍は秀頼を出陣させることができる(しなくても可)。このゲームでは3:1のオッズでも攻撃側後退が有り得るので、東軍プレイヤーはせめて4:1以上のオッズに持って行かないと家康本隊を軽々しく前線に投入することはできない。逆に家康本隊が最前線に投入される時は、最早勝敗の体勢が決した後になるだろう。
感想
NAWシステムって面白いですねえ。戦闘結果が流動型なので簡単に部隊が死なない反面、「囲んで殺す」という定石が楽しめる。小兵力でも一見戦線を維持できそうに見えるのですが、ちゃんと予備を置いておかないと簡単に戦線が崩壊する。マストアタック、ZOC離脱不可という簡単な仕掛けが、軍事的な原理原則を驚く程的確に表現している。「スタックなし」というのも良いですね。戦闘力数えるためにスタックをバラす必要はないし、相手のスタックを調べる必要もない。戦闘力も精々一桁なので暗算できる範囲に収まっている。つまらない「数合わせ」ではなく、真の作戦研究に没頭できる点良いです。ただ、このゲームが「関ヶ原合戦のシミュレーションか?」と問われれば、疑問を感じることも確かです。例えばスタック制限。1ヘクスに1駒のこのゲームでは、史実で行われたような狭正面での大兵力同士の激突は再現できません。NAWシステム特有の「囲んで殺す」方式についても、ゲームとしては確かに面白いのですが、「関ヶ原合戦のシミュレーション」として考えれば違和感があります。そういった意味で本作は「関ヶ原戦の決定版」的な存在には成り得ず、「関ヶ原合戦をNAWシステムで表現したらこうなった」といった評価が妥当ではないかと思います。それでも本作がゲームとして極めて面白い作品であることは間違いないと思います。
最後に「関ヶ原でちゃんと合戦が起きる」点については、「上手く出来ているなあ」と感心しました。
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