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「Back To Iraq」は、湾岸戦争後に予想された米軍を中心とする多国籍軍とイラク軍の激突、いわゆる「第2次湾岸戦争」を描いたシミュレーションゲームです。実際の「第2次湾岸戦争」は、2003年に勃発したイラク戦争によって過去のモノと化してしまいましたが、本作が描く「第2次湾岸戦争」と実際の「イラク戦争」を比較してみるのもまた一興です。

前回戦闘開始時から第6ターンまでの状況を追いました。イラク南部を制圧してバクダットに迫る多国籍軍。果たしてイラク軍は反撃の糸口を掴むことができるのか。

第7ターン

多国籍軍はバクダットを包囲した。しかしバクダットには共和国防衛隊を始めとするイラク軍の精鋭部隊が待機している。多国籍軍は慎重に攻撃の機会を伺った。

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バクダットを包囲する多国籍軍。赤の駒がイラク軍、その他が多国籍軍です。

第8ターン

イメージ 3多国籍軍はバクダット西方を守るイラク軍特別共和国警固隊を攻撃した。しかしこの戦いでBC兵器を使用して抵抗するイラク軍を前に遂に多国籍軍はステップロスの被害を出してしまう。米第82自動車化空挺師団が1ステップを失った。

第9ターン

多国籍軍再編成を行う。

第10~11ターン

多国籍軍はバクダット北半分に対して総攻撃を開始した。参加兵力は機動兵力全7個師団。対するイラク軍は7戦力。イラク軍は例によってBC兵器を使用。多国籍軍による最初の一撃は凌いだ。しかしBC兵器が使えない第2次攻撃では、多国籍軍の攻撃を凌ぐことができなかった。バクダット北部を守るイラク軍3個師団は壊滅。多国籍軍は遂にバクダットの一角を占領した。

この時点でイラク軍は抵抗を諦めて多国籍軍に降伏。これまでにイラク軍が獲得したMIPPは16ポイントで、勝利条件たる31ポイントには届かなかった。

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第11ターン終了時の状況。生き残ったイラク軍はバクダット南部の3個師団強と北部の町モスルに篭る3個師団のみ(図中の赤丸)。しかも両者をつなぐ街道はクルド人部隊が封鎖しており、両者の連絡は完全に断たれてしまった。

感想

かなり大味なゲームであるという印象を受けました。駒数は少なくルールも簡単なので慣れれば1~2時間ぐらいでプレイできるでしょう。ただ対人戦には向かないと思います。なんせバランスが悪いですから。

多国籍軍は駒数こそ少ないものの機動力や戦闘力でイラク軍を圧倒しているため、野外の戦闘ではイラク軍に勝目がありません。イラク軍としては都市の防御効果とBC兵器に期待して市街地で決戦するしか手はないでしょう。リプレイでも触れましたが、都市に篭るイラク軍とBC兵器の組み合わせは絶大な威力があり、多国籍軍プレイヤーのダイス目如何によっては進攻軍が全滅します。だからイラク軍にとって全く勝目がない訳ではないのですが、ダイス目頼みというのはちょっと悲しいです。
ひょっとしたら私が思いつかないようなイラク軍の防御線術があるのかもしれません。もしご存知の方がいれば、是非ご教示頂ければ、と思います。

実際の戦史と比べてみた場合、都市の防御効果がちょっと過大かな、という印象を受けました。実際のイラク戦争ではバクダット、バスラ、モスルといった都市は意外と簡単に米英軍によって制圧されています。これは米英軍の宣伝戦にしてやられたという説もある一方、市街地というものがハイテク化した最新部隊を前にしてかつてのような防御地形としての意味を失いつつあるという指摘もあります。少なくともかつてのスターリングラード戦やベルリン攻防戦の如く「大兵力を吸い続ける吸血鬼のような市街戦」というのは過去の事になりつつあるようです。

本作では絶大な威力を発揮するBC兵器ですが、実際のイラク戦争では使用されなかったようです。これは米英軍による報復攻撃を恐れたためか、あるいはイラク軍にBC戦能力がなかったためかはわかりません。いずれにしても本作のようにイラク軍がBC兵器をボコボコ使用することがなかったことは、現実世界に住む我々にとっては喜ばしいことだったと思います。

今回は実現しませんでしたが、ダイス目次第によってはイラン軍の介入もあります。毎ターンダイスを振り、1/12の確率でイラン軍が戦争に介入してきます。ただしイラクの主要都市(バクダット、バスラ、モスル)を全てをイラク軍が支配していることが前提なので、バスラを取られた時点でイラン軍介入の可能性はなくなります。
果たしてイラン軍が介入した場合、戦争の行方はどーうなるのでしょうか。イラン軍のユニット数は40個。かなりの大部隊ですが、その大半は鈍足の歩兵師団で快速の機動部隊は9個のみ。攻撃力はかなり限定されたものになります。しかしそのユニット数はかなりの脅威になりますし、なんといってもイラン軍には恐怖の「戦術核ミサイル」があります。戦術核の使用はイラン軍にとってもリスキーですが、その威力は絶大で多国籍軍の1個師団を1発で半身不随にすることができます。ゲームの世界でのみ許される愚行。現実の世界ではそのような事が行われることがないよう願いたいです。

おわり