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零戦-アメリカ人はどう見たか

辻俊彦 芸立出版

本書は、「アメリカ人が見た零戦」ということで、アメリカ側が零戦をどのように捉えていたか、特にF4F「ワイルドキャット」の隊員達がどのようにして零戦に立ち向かって行ったかを教えてくれる。
筆者の零戦に対する評価は全般的には好意的で、それは冒頭の「零戦はやはり名機であったといいたい」という言葉にも現れている。その一方で筆者はF4Fと零戦の対決についても冷静な視点で描いており、珊瑚海やミッドウェーで零戦とF4Fの対決がどのようなものであったかについても興味深いデータを提供してくれる。
本書を読んで興味深いのは、日本人とアメリカ人の戦闘機に対する見方である。本書では触れられていないが、もし日本人が零戦とF4Fを模擬空戦で戦わせたとしたら、恐らく日本人のF4Fに対する評価は低いものだっただろう。しかしアメリカ人は戦闘機に対して全く違った評価軸を持っていた。だからアメリカ人は零戦の高性能を評価しつつも「だけど俺はこんなヒコーキに乗るのはゴメンだね」と言う。
本書について難点を挙げれば、ややボリューム不足を感じること。また零戦vsF4F部分以外はやや平凡な内容が多いことだ。それでも本書は日米航空戦について興味のある方にとっては一読の価値のある著作であると考える。

お奨め度★★★★