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「5th Fleet」は、米Victory Games社が1989年に発売を開始した現在海戦(あくまでも発売当時の"現在"ですが)を扱ったシミュレーションゲームです。
本作は「Fleetシリーズ」と名付けられた一連のシリーズ物の第4作目にあたります。「5th Fleet」の発売までに地中海を舞台とした「6th Fleet」(1985年)、バレンツ海から北大西洋を舞台とした「2nd Fleet」(1986年)、西太平洋を舞台とした「7th Fleet」(1987年)の3作品が発表されていました。また本作の後にベーリング海、北海、カリブ海の3つのマップが入った「3rd Fleet」(1990年)が発売されました。現時点では「5th Fleet」を含めた5作品がFleetシリーズの全ラインナップです。「3rd Fleet」のデザイナーズノートには、データを一新した「Atlantic Fleet」、「Pacific Fleet」なる企画が紹介されていて大いに期待していましたが、これらの作品が世に出ることがなかったことは残念です。また国際通信社が2007年に発売した「Asian Fleet」もFleetシリーズのシステムを利用しているので、「Fleetシリーズ」の1作と言えるかもしれません。

Fleetシリーズは作品毎にルールが進化していて、「6th Fleet」と最終版の「3rd Fleet」は殆ど別作品といって良い程変貌を遂げています。ルールだけではなくユニットの評価も変化しており、「6th Fleet」ではソ連海軍最強だったアルファ級原潜が、後続の作品では殆ど雑魚扱いに変貌しています。その一方でソ連潜水艦全般についての評価は作品毎に高くなり、「5th Fleet」では遂に西側最強の「シーウルフ」級原潜を上回る高性能艦が出現することになりました(「3rd Fleet」では再び「シーウルフ」が世界最強の座に返り咲きました)。第1作目の「6th Fleet」でもそこそこ遊べるゲームでしたが、真の意味で傑作と呼ぶレベルに到達したのは「7th Fleet」以降であり、特にシステムの完成度では「5th Fleet」の段階で漸く完成の域に到達したといえます。

Fleetシリーズの特徴は、海戦ゲームにも関わらずブラインドやダミー等を一切使用しないことです。両軍の艦艇は常に同じマップ上に置かれ、その位置や戦力は常に筒抜けです。これは、現在戦では衛星偵察や各種諜報活動によって艦艇の凡その位置は常に把握されているという視点からデザインされているためで、この決定はプレイし易さという観点からも「一人プレイ可能」という観点からも英断といって良いと思います。無論敵を攻撃するためには「索敵」を行う必要があり、これは攻撃を行うためにはより詳細な戦術情報が必要であるというデザイン思想に基づいています。
戦闘ルールも洗練されており、ミサイル戦、魚雷戦、対潜攻撃等、多種多様な戦闘形態を、そのディテールを損なうことなく類似のルールと共通の戦闘結果表で再現している点はデザインセンスを感じます。さらに単なる海戦ゲームに留まらないよう、基地航空隊、巡航ミサイル、輸送船団、上陸作戦、艦艇への燃料弾薬補給、機雷戦、港湾、戦術核兵器といった現在海戦を構成する様々な要素を全て再現している点も特筆すべきです、まあミサイル戦の描写等で疑問に感じる部分も無きにしもあらずですが(注1)、それでも現在海戦をプレイ可能なレベルで再現し、艦艇や航空機について必要十分なディテールを再現している本作は、現時点でプレイ可能な最高の現代海戦ゲームだと言えるでしょう。

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ロシア海軍アクラ型攻撃型原潜。ロシアでは971型の呼称されている。アンドレイVポルトフ氏の「ソ連/ロシア原潜建造史」によれば、971型は同時代に整備されていた945型(シエラ型)に比べて「経済性を重視した艦」となっている。ちなみに「5th Fleet」では、アクラ型はシエラ型(及び米海軍のシーウルフ級や改ロス級)を上回る最強の原潜として扱われている。

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米海軍攻撃型原潜「シーウルフ」(SSN-21)。冷戦時代にソ連原潜を上回る性能を目指して建造された高性能原潜である。静粛性、水中速力、攻撃力といったあらゆる面で当時最新鋭であった改ロス級を上回り、カタログスペックを見る限り同時代のロシア製原潜よりも明らかに高性能であった。しかし冷戦時代の終結によって必要性の薄れた同艦は、僅か3隻で建造が打ち切られることになった。ちなみに「5th Fleet」における「シーウルフ」は、静粛性や防御力でアクラ型に劣る潜水艦として扱われている。

(注1)
例えばHarpoonSSM8発を搭載している艦が同時に8発のSSMを発射することができないだとか。
例えばTu-26バックファイア2個編隊が数十発の対艦ミサイルを放って、その戦果が僅かにフリゲート艦1隻大破のみ、だとか。
例えば潜水艦から発射されたたった2発のTASM(対艦用Tomahawk SSM、攻撃力24)の方が、12機のF-18が放った24発のHarpoon(攻撃力20)よりも強力だとか。

シナリオ11「World War Three」

今回この「5th Fleet」をYSGAにてプレイすることになりました。選んだシナリオはNo.11「World War Three」。米豪とインドが組んで、ソ連、イラン、インドネシア連合とペルシャ湾、アラビア海からインド洋一帯で戦いという設定です。設定によると、第3次欧州大戦が開始されて6週間後、ソ連はヨーロッパに増援を送り込みつつある西側陣営の注意を逸らすため、マラッカ海峡を扼するチョークポイントであるニコバル諸島、アンダマン諸島を占領。またイランもソ連陣営に立って西側連合国に対して宣戦するということになっています。ソ連海軍は空母「トビリシ」を中心とする機動部隊をアラビア海に派遣。また空母「キエフ」を中核とする機動部隊をインドネシアに派遣しました。対する西側陣営は2隻の米空母、1隻の戦艦、そしてインド海軍が中心となる部隊でそれに対抗します。

今回のプレイは参加者4名。筆者は西側連合軍を担当することになりました。もう1人の西側担当プレイヤーと調整の結果、筆者はマップの北西部分(ペルシャ湾、アラビア半島一帯)を担当することになりました。本番前にルールの確認も兼ねて軽くソロプレイしてみましたが、どうも都合が悪い。ペルシャ湾に接近した米空母機動部隊がF-14のCAP網を突破してきたTu26のミサイル攻撃を受けたり(これは僚艦の激しい対空射撃で撃退することができた)、オマーン湾に展開する連合軍飛行場が爆撃によって使用不能になったりと散々でした。そこで少し作戦を考えなおしてみました。まず下図を見て下さい。これが今回私が担当する北西インド洋海域です。

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青い矢印と赤い矢印はそれぞれ米軍及びソ連軍の主要な輸送船団ルートを示しています。米軍は味方の上陸船団やタンカーを①Bandar Abbasや②Muscatに送り届ける必要があります。この時重要なのがオマーン湾(Gulf of Oman)の制空権で、それを確保するための重要な戦力が①Bandar Abbsaと②Muscatに配備されている米海兵隊航空部隊です。F18CとF18Dが各2ユニット、EA6が1ユニットの計5ユニットからなるちっぽけな彼らがですが、その存在が米軍の生命線にとって死活的な要素になります。
彼らの任務はそれだけではありません。イランやアフガニスタン、トルクメニスタンに配備されているソ連軍長距離爆撃機(上図③~⑥)のインド洋進出することも彼らの重要な任務です。このシナリオではサウジアラビアやパキスタンは中立国として扱われ両軍とも領空侵犯は許されません。そのために上記米海兵隊飛行隊とオマーン湾に配置された空母が、敵長距離爆撃機に対する阻止線を形成できます。

無論簡単ではありません。彼らに対峙するのは先のソ連航空部隊の他、イラン空軍もまた脅威です(上図⑦~⑨)。その兵力は、戦闘機がMig23、Mig31、Su24、Su27が各1ユニットとイラン空軍がF4、F5、J6各2ユニットの計10ユニット。爆撃機が、Tu16G、Tu95Hが各1ユニットとTu26が2ユニットで計4ユニット。それにTu16E、Tu95D、Tu16Dなどの偵察機、電子戦機が計5ユニット。全部合わせて19ユニットで、これはオマーン湾沿岸を守る米海兵隊の約4倍の大兵力です。まともに戦えば海兵隊に勝ち目はないでしょう。兵力の均衡を保つためには、米空母機動部隊の一群(空母「レンジャー」機動部隊)をオマーン湾に派遣する必要があります。

また守っているだけでは勝てません。「レンジャー」機動部隊をいつまでもオマーン湾に張り付けておきことは不都合なことが多いのです。再び上図を見て下さい。マップ左に赤い矢印は記されています。これがソコトラ島(上図⑩)に向うソ連軍輸送船団です。これを洋上で阻止するために米空母は手頃な所でオマーン湾を離れて南下する必要があるのです。さらにソコトラ島にはソ連空母「トビリシ」を主力とする有力なソ連水上艦隊がいます。これに対抗するためにも米空母は必要です。

細かい話は省略しますが、イラン方面での航空戦で勝利を収めるため、私は以下のような作戦を立てました。

1.巡航ミサイル搭載艦(戦艦、2隻のイージス艦、1隻のスプルーアンス級駆逐艦、2隻の原潜)を全て北西インド洋に投入し、巡航ミサイルの集中攻撃でAshkhabad(アジハバード)基地を破壊する。ここに配備されているTu26 2ユニットとMig31 1ユニットが最大の脅威となると考えたから。
2.巡航ミサイルと空母艦載機、海兵隊機の共同攻撃でイラン国内の敵基地を順次潰していく。③Esfahan、⑦Kerman、⑧Kermanあたりを潰せばラッキーだが、③⑦あたりは苦戦しそうだ。
3.あとは状況を見ながら判断する。戦況が有利なら空母群を南下させて「トビリシ」と対決させたいが、戦況が不利ならソコトラ方面は潜水艦による嫌がらせ攻撃に留める手もある。

さてさてどうなることやら。


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「5th Fleet」の全域を示します。拡大してご覧下さい。

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