220824_ソ連帝国の崩壊

ソビエト帝国の崩壊-瀕死の熊が世界であがく

小室直樹 光文社

本書は1980年に初版が発売された書籍だ。本書の凄い所は、1980年という段階でソ連の崩壊を見事に予言している点にある。今でこそソ連の崩壊は歴史的事実だが、1980年の段階で世界最強の国家であるソビエト連邦が崩壊すると予想する人間は殆どなかった。事実、1980年代のテレビアニメ等では、21世紀になっても米ソ両大国による対立構図が続いているという図式が多く見られた。
本書では階級論や組織論、そして経済の観点から当時のソビエト連邦が断末魔の状態にあることを見事に看過している。そしてこれらの矛盾が噴出した時、ソ連が崩壊するとしている。結果を知っている我々が本書を評価するのは些かズルいような気もするが、逆に後知恵でも凄さを感じるのが本書の凄さだ。
さらに本書の凄いのは単なる未来予測に留まらない点だ。本書は当時の日本における安全保障政策に鋭い批判を加えている。筆者の主張が、当時と異なる安全保障環境下にある現在の日本に当てはめても、十分に首肯できるものだ。
現在の視点で見れば歴史に対する認識等でやや「古い」と思える記述も伺えるが、それでもソ連の崩壊という予言を見事に的中させたという点で本書の価値は大きい。

お奨め度★★★★