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FLAT TOPは米アヴァロンヒル社が1981年に発表した空母戦ゲームである。元々はバトルライン社が1977年に発表した空母戦ゲームであり、その版権をアヴァロンヒル社が買い取ってデヴェロップの上再販した作品である。テーマはソロモン諸島周辺における空母戦であり、珊瑚海海戦、第2次ソロモン海戦、南太平洋海戦等のシナリオが含まれている。ただし場所の関係上ミッドウェー海戦は含まれていない。

イメージ 8FLAT TOPの特徴は、空母戦を極めて詳細なレベルまで再現できる所にある。艦船は1隻単位で登場し、航空機も3機単位で登場する。1Hexは実際の20マイルに相当し、1Turnは1時間だ。航空機の発着を行う空母は風上に向けて航行する必要があり、空母を発進した航空機はマップ上又は記録用紙の上で実際に目標ヘクスに向けて「飛行」しなければならない。爆弾の種類もルール化され、陸用爆弾と対艦徹甲弾では目標に対する攻撃力が異なっている。武装の選択を間違えれば史実におけるミッドウェー海戦のような事態も起こり得る。そのくせルールは意外な程シンプルで、細かい細則を除けばその場でインストしてプレイすることも不可能ではない(ただしベテランが横に付いている必要がある)。

イメージ 9空母戦といえば索敵がネックになるが、FLAT TOPでは索敵システムをメインマップと記録用紙の使い分けでによって再現している。両プレイヤーは麾下の艦隊や航空機の移動を通常メインマップには置かず記録用紙上で記録していく。これだけなら両者とも相手の動きを全く察知できない。そこで両者共「索敵」を行うことで敵の発見に努めることになる。「索敵」を実施するためには、自軍の艦隊又は航空編隊の位置を暴露する必要がある。索敵を行う艦隊、航空編隊をメインマップ上に配置し、ヘクス番号を読み上げて行く。相手プレイヤーは、敵艦隊や航空編隊の捕捉範囲(通常は0~2Hex)内を確認し、捕捉範囲内に味方の艦隊・航空編隊が存在していればその存在を申告しなければならない。
FLAT TOPの索敵システムは、索敵行為を比較的簡単なルールで再現できるシステムである。その上実戦で行われた扇型索敵や二段索敵等も再現可能である。その一方で索敵を回避するために非現実的な行動を行う可能性があったり、索敵機の数が多くなると索敵実施に時間がかかってしまう等、万能なシステムではない。他にも索敵の結果報告が相手プレイヤーに依存しているため不正行為や意図しないミスが発生する可能性があるとか、空母機による索敵が実施し辛いとか、いくつか問題点がある。それでも彼我の位置を秘匿し、相手に疑心暗鬼を起こさせるといった点ではFLAT TOPの方式は優れており、他の空母戦ゲームはなかなか味わえない焦燥感やスリルを味わえる。

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イメージ 10日本において空母戦は人気の高いテーマであった。しかもFLAT TOPが日本に紹介された当時、日本語でプレイ可能な空母戦ゲームといえばAH社のMidwayしかなく、こちらはデザインが1960年代という古いゲームであった。そのため1980年代前半におけるFLAT TOPの人気は高く、ゲーム保有率やプレイ率はかなり高かったのではないかと推測される(筆者もその一人)。
人気の高さに比例してか、様々な問題点について取り沙汰されることも多い作品である。1980年代には零戦とF4Fワイルドキャットとの空戦性能が互角(上級ルールを取り入れればF4Fの方が強い)という評価に怒りを覚えた日本人青少年は多かったのではないか(その反動かどうかは不明だが、和製空母戦ゲームでは大抵零戦はF4Fよりも約2倍強い)。近年では流石に零戦とF4Fの性能評価に対する苦言は減ってきたように思えるが、別の観点から不満が表明される例が出てきている。所謂「零戦索敵問題」だ。この事については別に触れる機会があるかもしれない。

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イメージ 11今回GW例会で、このFLAT TOPをプレイすることになった。シナリオは「珊瑚海海戦」。計109Turnという本作中最長のシナリオである。期間は長めだが、登場兵力は比較的少ない。例えば航空戦力でいえば、珊瑚海海戦では日米両軍合わせて約200ポイント(1ポイント3機)の航空機が登場するが、南太平洋海戦では約340ポイントが登場する。その分プレイヤーの負担も軽いと予想される。

今回のプレイに参加したのは計5名。日本軍2名、連合軍3名である。私は米機動部隊の半分、空母「ヨークタウン」機動部隊を担当した。数少ない空母機動部隊をわざわざ2人の指揮官に分割するのは不合理に思われるであろう(史実では「ヨークタウン」に将旗を掲げたフレッチャー少将が2隻の空母を含めた連合軍水上部隊の統一指揮官だった)。今回はプレイヤー3名をそれぞれの指揮官に割り振るための措置ということでご理解頂きたい。

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1942年5月4日

0600~0700

イメージ 8ガダルカナル南方60マイルに布陣した空母「ヨークタウン」からは次々と攻撃隊が発艦していく。1000ポンド爆弾を抱えたSBDドーントレスが33機、Mk-13航空魚雷を抱えたTBDデヴァステータが12機。合計45機の一大攻撃隊。真珠湾を襲った南雲機動部隊には及ぶべくもないが、それでも1隻の空母が出し得る攻撃隊としては最大規模に近い攻撃隊といえた。それが2群に分かれて一路北を目指す。
目標はツラギ港。ガダルカナル北方20マイルに浮かぶフロリダ島南端の天然の良港だ。ガダルカナルの我が沿岸監視員から「日本艦隊見ゆ」の報を受けたのが昨日の夕刻。当時南太平洋で行動中であった2隻の米空母のうち、燃料補給中の「レキシントン」を除く「ヨークタウン」が、護衛艦艇を引き連れてツラギ南方120マイルの攻撃隊発進地点に到達したのが今朝の0600であった。

イメージ 1245機の攻撃編隊はガダルカナルを飛び越え、ルンガ水道を渡った対岸のツラギ港に殺到した。港には日本軍の輸送船1隻の他、駆逐艦2隻、掃海艇4隻が投錨していたが、突然の米軍機の襲来に抜錨する暇のない。懸命に対空砲火を浴びせる日本艦隊上空で3群に分かれた米編隊は、次々と急降下して日本艦隊を襲う。巻き上がる水柱。炎を引いて落ちて行く米軍機。戦闘は僅か15分で終わった。

結果は米軍にとって惨憺たるものであった。
日本艦隊の対空射撃が冴え渡り、雷撃機6機、急降下爆撃機9機が失われ、雷撃機3機、急降下爆撃機3機が被弾損傷した。実に出撃機の半数近くがキズものになった計算になる。残った機体は懸命に爆弾、魚雷を投下したが、戦いに不慣れな米軍機の攻撃はお粗末そのもの。相手が微弱な小艦隊にも拘らずなんと1発の命中弾をも得ることはできなかった。初陣の凱歌を期待した「ヨークタウン」の艦橋は、その後やってきた悲報を受けてしばし言葉もなかった。

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0800~0900

イメージ 13「ヨークタウン」は艦載機収容のためガダルカナル東方海域に進出した。さらに「ヨークタウン」を護衛していた重巡7、軽巡1、駆逐艦6のうち、駆逐艦4を除く10隻が本隊から分離し、速度を速めてツラギを目指す。
1000、ツラギ近海に接近した米水上部隊は、ツラギの日本軍飛行艇基地に対して猛烈な艦砲射撃を実施した。さすがに巡洋艦8隻の砲火力は凄まじく、ツラギ基地は大損害を被った。

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1000~1100

イメージ 14これより先、「ヨークタウン」が日本飛行艇の触接を受けた。
「発見されたかぁ・・・・」
思わず天を見詰めるフレッチャー提督(「ヨークタウン」部隊指揮官)。こうなっては一大事だ。「ヨークタウン」はツラギ砲撃から引き揚げてきた巡洋艦部隊と合流するや否や高速力で南下を開始した。日本機の攻撃圏から離脱するのが重要だ。
1100にラバウル基地から陸攻24機が発進したとの報が入った。いよいよお出ましか。現時点で「ヨークタウン」の位置はガダルカナル東南端のすぐ沖合いである。ここから全力南下すれば陸攻隊を振り切るのは左程困難ではない。
問題は敵空母。
未だ所在位置不明の敵空母が我々の予想よりも至近距離に迫っていた場合、「ヨークタウン」は危機的な状況になる。先ほどより索敵中の偵察爆撃隊はソロモン諸島に沿って日本艦隊の姿を求めたが、未だに敵の姿を見ない。

1200~2400

イメージ 15待ちに待った敵発見の報が遂にやってきた。場所はブカ島西北西60マイル。空母を含む敵艦隊だ。
「ヨークタウン」からの距離は680マイル。思ったよりも遠い。ふぅ。取りあえず一安心だ。こちらへ接近中の陸攻隊もブーゲンビル島付近まで進出した後、ラバウルへ向けて引き揚げたらしい。一応の危機を脱した「ヨークタウン」隊は、給油艦とランデブーすべく南下する

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