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近未来における国家間の太陽系内開発競争を描いたシミュレーションゲームであるHigh Frontier。テーマの珍しさやリアル指向でデザインされたSFゲームといった興味深さも手伝って以前からプレイしてみたい作品の一つでした。ルール的な難易度の高さが壁になってこれまでプレイする機会がなかったのですが、先日YSGA例会に半ば飛び入りの形で参加した際、インストを受けてプレイしました。以下はその記録です。

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ルールシステム

まずHigh Frontierのシステムについて紹介します。と偉そうに書きましたが、私自身今回インストでの飛び入り参加なので、ルールの細かい点は理解していません。インストでの説明や実際のプレイを通じて「ああ、多分こんなものか」といった程度の理解に基づいた内容になっています。従って細部で誤解があるかもしれませんが、その点についてはご指摘いただければ幸甚に思います。

先にも書きましたが、High Frontierは近未来における太陽系内宇宙開発を扱ったシミュレーションゲームです。プレイヤーはNASA、国連、欧州連合、日本の建設会社、中国のいずれかの陣営を担当し、太陽系内惑星の開発を行い勝敗を競います。

ゲームシステムの基本は宇宙船の設計と機動にあります。宇宙船は推進装置、発電機、反応炉、冷却装置等からなる「船を動かすシステム」と、探査装置、クルー、工場プラントといったペイロードからなり、当然ながらペイロードが大きくなると航続距離が短くなります。宇宙船の目的はペイロードを目的地まで運搬し、必要ならば出発地に戻ってくることです。そういった意味でペイロードは絶対必要なものですが、ペイロードが大きすぎると性能が悪化するというジレンマが悩ましい所です。
推進装置、発電機、反応炉、冷却装置の組み合わせというかマッチングが重要で、これが拙いととんでもなく効率の悪い船になったり、あるいは冷却性能が不足して(まるで福○原○だぁ)常にアフターバーナーを焚いて強制冷却しないといけない等、面倒なことになります。面白いのは、化学ロケットやイオンロケットのような噴射型の推進装置以外に太陽帆のような「エコな」推進装置も存在します。太陽帆の場合、推力自体は小さく、また太陽との距離によって推力が増減するという難点があるものの、燃料を必要とせずに航行できるのは魅力です。

プレイヤーの目的は宇宙開発なので、宇宙船の開発はその過程でしかありません。様々なパーツを組み合わせて所望の性能を持つ宇宙船を開発したら、次にその宇宙船を使って宇宙開発を進めることになります。宇宙船は原則として地球軌道上より発進し、バンアレン帯等の様々な障害物を抜けて目的となる天体を目指します。目的地にたどり着いたら探査を行い、開発する価値のある天体であれば領有し、可能ならば探査隊の派遣や工場の建設を行います。

上記以外にイベントや国際情勢の変化等のルールがあるそうですが、今回は殆ど適用されなかったので詳しい内容は知りません。あと中国という存在もなかなか過激なそうですが、こちらも今回は登場しなかったので詳しいことはわかりません。

とまあこの程度の理解でゲームに挑みましたが、はてさて・・・。

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人類初の火星探査

取りあえず欧州連合を担当することになった私。欧州連合は自前で機動できる宇宙船の持ち、かつレーザーによる遠距離からの推進力強化を行えるという利点があるそうですが、正直な所あまり有り難味はなかったと思います。それよりも他国の特殊能力の方が美味しく感じてしまったのは気のせいかな?。

ともあれ宇宙船の作り方と何をしたら良いのかぐらいは理解した状態でゲームを開始しました。
ゲーム序盤はNASAがいきなり無人機による小惑星探査に成功し、世界が沸き返る中、我が欧州連合は火星に対する有人探査という大ミッションに向けて着々と準備を整えていきました。
軌道上事故による宇宙船建造遅延や国連の嫌がらせにも関わらず着実に宇宙船の建造を進めてきた欧州連合は、2068年(*1)、遂に火星探査船「オーロラ」を火星に向けて発進させました。しかし「オーロラ」計画は実の所かなり怪しい計画でした。宇宙船は完全な片道仕様で、クルーは現地に数年間滞在した後、数年後に打ち上げられる帰還用宇宙船を利用して帰還するというプランでした。また燃料不足のため火星への突入時にはパラシュートを使用することになっていましたが、予算不足のためパラシュートによる降下は運まかせ。ダイスを2個振って1の目が1度も出なければOKという危ういものでした。にもかかわらず他国に先んじて火星探査を成し遂げたい欧州連合は、「オーロラ」計画を強行することになります。内在するリスクはあえて無視する形で・・・。

(*1)年号は適当です。下名が勝手につけました。「そんな時期は地球と火星の位置関係から火星旅行なんて不可能だぞ」なんて突っ込みはご勘弁を・・・・。

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結果から言えば「オーロラ」計画は大成功を収めました。危険視された火星大気への突入は幸い大きな事故がなく無事成功。2069年末に遂に火星に立った「オーロラ」のクルー計7名は、その後12年間を同地で過ごすことになります。彼らが火星に滞在している間、数機の無人宇宙船が火星に送り込まれ、火星の開発は進められていきます。火星に燃料精製プラントが建設されたため、宇宙船の地球帰還が可能となりました。また火星の低重力を利用した新型ジェネレータも開発に成功し、この新型は「オーロラ4号」による地球帰還の際に試験的に用いられ、その性能を誇示しました。その後欧州連合は、新型ジェネレータを搭載し推進効率を飛躍的に向上させた新型宇宙船を就役させました。この新型宇宙船「オリンポス」級がその後の火星開発の主力器材となります。

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人類初の火星探査を成功させた「オーロラ」第1陣クルーは、火星で12年間を過ごした後「オリンポス1号」に搭乗して火星を離れました。彼らが地球に戻ってきたのは出発から14年後の2082年7月のことでした。7名全員が無事生還したことにより欧州連合は「人類初の火星探査」を成し遂げたことになります。

その後「オリンポス」級宇宙船による火星探査は急速に進み、それまでの「探査」に軸を置いた活動から「開発」に軸を置いた活動に様変わりしてきます。火星には欧州連合の燃料精製プラント計3機が建設され、火星のテラフォーミング化も着実に進んでいきました。2100年1月時点での火星滞在者は689名。彼らの任務は火星の改造とさらなる外宇宙開発へ向けた基地への建設です。
人類が宇宙に進出し始めてから1世紀余り。漸く人類は宇宙を探査の対象から開発、利用する対象へと変えようとしています。

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ゲーム終了時の状況

おまけ

ということで、結論から言えば火星に工場を3個建設した我が欧州連合の勝利に終わりました。ビギナーズラックというか、最初の宇宙船の引きが良かったので勝たせてもらった感があります。まあ勝ち負けは兎に角、宇宙開発ゲームとしては楽しめる作品だと思いました。

先にも書いたとおりこのゲームの肝は宇宙船開発にあるのですが、そのあたりがかなりパズルチック。一旦飛びだしたら燃料の再補給は原則不可能なので、出発時点での慎重な計算が求められます。まあ慣れ次第だとは思いますが・・・。人間同士の係わりがあまりないので、どちらかというと「多人数ソロプレイ」に近いものがあります。まあ中国が登場すると事情が変わってくるみたいですが・・・。

本作の魅力は太陽系内惑星を描いたマップにあります。マップ上を惑星が公転するという面倒なことはないのですが、それでも地球と太陽系の主要な天体、あるいは主要な天体間の位置関係が巧みに表現されています。スイングバイ等も盛り込まれており、複雑なルールなしで宇宙船の空間機動をそれっぽく描いているのはさすがです。
また火星や木星、土星といった主要な天体とその衛星群だけではなく、例えばセレスのような準惑星やもっと小さな小惑星についてもマップ上に描かれている点は感心しました。そのため火星探検のような派手なミッションばかりではなく、アステロイドベルトの探索等も実行することができます。無論移動システムを単純化したため、一部に「これは変なのでは?」と思われる箇所もなきにしもあらず(一例を挙げれば、火星探査よりも月探査の方が難度が高い等)。ただし細かい点に目を瞑れば本作は、リアリティを犠牲にせず、プレイ可能なレベルでまとめ上げた宇宙開発ゲームであり、佳作という評価に相応しい作品だと思います。

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「宇宙兄弟」を見たあと、無性にプレイしたくなるゲーム・・・、かも。

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