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以前から興味を持っていた「Here I Stand」(GMT)について、遂にプレイする機会を得ました。
担当はプロテスタント。ゲームタイトル「Here I Stand」を叫んだマルティン・ルターが率いる陣営なので、ある意味主役と言っても良い陣営です。

ゲーム展開

第1~3Turn --> こちら
第4~7Turn --> こちら

感想

イメージ 6さあこれから、という状況で突然ゲーム終了。トルコが勢力を広げて勝利ラインである25VPを達成したからだ。とはいっても朝10時過ぎから始めたゲームは、気が付けばいつの間にか午後7時を回っていて、「もうお腹一杯」というのが正直な所。このゲーム、フルTurnをプレイすると9Turnになるが、実際9Turnプレイすることは稀であるとのことだった。
プロテスタントの獲得VPはこの時点で22VP。順位的にはトルコ、イングランドに次いでハプスブルクと並ぶ3位。勝ちを目指した訳ではなく、どちらかといえばルールの理解が目的のプレイだったが、負けるとやはり悔しい。次は勝ちたいと切に思う。

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イメージ 3初プレイで敗因を語るのも何だが、強いてあげるならば勝負を仕掛けるのが遅すぎたことだろうか。プロテスタントの場合、最初の4~5Turn頃までが勝負だろう。この時点であればカトリック側司祭の能力も数もプロテスタントに及ばない。それが第6Turnになると、カトリック最強の論客イグナチオ・デ・ロヨラが登場し、プロテスタント側ではルターが死亡したりカルヴァンが追放されたりして相対的にカトリック側が有利になってくる。さらにシュマルカルデン同盟によってプロテスタントも軍事的な活動が必要になると、今度はハプスブルク(本文中は神聖ローマ帝国と表現)との軍事的衝突にも対応する必要が出てくる。そういった意味では、プロテスタントは電撃的に勝利を得るのが最良ではないだろうか。

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イメージ 2さらに根源的な敗因を求めるとすれば、勝利のためのプランを持たなかったことと外交関係を使いこなせなかったことだろう。まず勝利のためのプランとしては、本ゲームの勝利条件は、いずれの陣営も25VP以上を獲得することである。また勝利得点を達成した時点でゲーム終了となる。勝利得点はオープンなので、勝利に近づいたプレイヤーは他のプレイヤーから攻撃を受けて足を引っ張られることになる。勝つためには他のプレイヤーの妨害を見越した上で、それを凌ぐ形でVPを獲得していく必要がある。ただ漫然とプレイしていても勝てないようになっているのだ。
外交関係についていえば、本作は「自分以外は全部敵だが、全部味方のように振る舞う」ゲームではない。歴史的な枠組みと陣営毎の特徴づけによってある程度潜在的な敵と味方がハッキリしている。プロテスタントにとって不倶戴天の敵は間違いなくローマ法王。次いでハプスブルクが潜在的な敵となる。逆に潜在的な味方は、同じくプロテスタント陣営に属するイングランドとカトリックの天敵トルコといった所か。フランスは中立といった所。プロテスタントが勝つためには彼らの力関係を把握しつつ、そのバランスを利用して自陣営に有利になるように外交戦を仕掛ける必要があるだろう。そういった意味ではプロテスタントとはいえ宗教ルールだけではなく、軍事面でのルールや新大陸の探検、海賊行為といった一見プロテスタントには関係なさそうなルールについても把握しておく必要があるだろう。

不倶戴天と書いたが、実の所、プロテスタントとローマ法王は意外な所で協調できる場合がある。それは論争だ。お互いに論争合戦を仕掛けて「火炙り」や「破門」を出すことだ。これによってお互いVPを稼げるので、勝利ラインに近づくことができる。やや苦しいたとえ話だが、プロテスタントによる宗教改革によってカトリック側で危機意識が高まり、そのことがカトリック側の自浄作用を引き起こした、と言えるのかもしれない。

イメージ 8Here I Standについては、これまで色々と噂話は聞いていたが、ゲームのテーマが私にとってのストライクゾーンからやや(大幅に?)外れていることやマルチゲームは守備範囲外という意識もあって今までは手を出しかねていた。またルールの多さや対戦相手にゲーム慣れしたプレイヤーが多いという点もネックになったように思う。
「初心者がいきなり参加しても、何をして良いかわからない間にカモにされて終わりでしょ?」
という偏見があったことも否定できない。

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今回参加した感想としては、本作の魅力を云々できるほど本作に習熟した訳ではないが、間違いなく佳作以上の作品であると感じることはできた。軍事的な対決を軸に置きながらも、その裏で繰り広げられる宗教上の争い。さらに新大陸発見やヘンリー8世の6人の妻といった生々しい話など、16世紀の欧州情勢を余すことなく再現している。確かにルールは多いが、これだけ多彩なドラマ性を持ったゲームで、しかも十分理解できる範囲のルール量で収まっていることは素晴らしい。ドラマ性といえば、中世史について殆ど素人の下名が、プロテスタントという限られた立場で、しかもルールブックとWikipediaだけを片手に、(内容は兎に角として量的には)これだけの文章をでっち上げることができることからも本作のドラマ性が伺えよう。

本当に再戦したいと思える作品だった。

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