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ソフトウェアテスト技法

ボーリス・バイザー 日経BP出版センター

ソフトウェアの品質はレビューとテストによって保証されている。費用対効果を考えれば、レビューの方がテストよりも有益であり、レビューでバグの過半を取り除くのが望ましい。しかし現実の組織ではレビューによるバグ検出率が十分とはいえず、テストに依存している現実がある。また一部のバグはレビューでは発見が困難であり、テストによるバグ検出が不可欠である。
本書はソフトウェアテストの進め方について工学的な視点から論じた著作である。本書ではいわゆる「かくあるべき」いった「べき論」を極力排し、数学的や工学的な手法によるテスト手法の説明に多くのページを割いている。ソフトウェアテストは、大きく分けると、仕様に着目した「ブラックテスト」と構造に着目した「ホワイトボックステスト」に分けられる。本書はホワイトボックステストに重点を当てている。
本書で取り上げられてる手法は数多いが、本書の中核となる考え方がフローグラフとカバレッジである。フローグラフとは、ソフトウェアの処理の流れを示したグラフで、古典的なフローチャートとは似て非なるものである。本書はフローグラフを処理の流れだけではなくデータ、トランザクション、ドメインといった分野に適用し、それぞれの問題について最適なテスト設計方法を紹介してる。また背景となる論理式や行列式といった数学的分野にも着目し、それぞれ解説を加えている。
本書はソフトウェアテストのバイブル的な存在であり、ソフトウェア品質に関わる者にとっては必読の著作と言って良い。しかし本書は専門的な内容も含んでおり、その全て理解するのは容易ではない。本書の使い方としては、本書の概要をまず理解した上で、後は実務での必要に応じて本書の詳細を読み進めていくというのが正しい使い方ではなかろうか。

お奨め度★★★★★