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カウントダウン・メルトダウン(上下)

舩橋洋一 文藝春秋

この本も福島第1原発事故を扱ったノンフィクションである。以前に紹介したメルトダウン(大鹿靖明)が原発事故のみならず、その後の復旧や損害補償、さらには大飯原発の再稼働問題にまで範囲を広げているのに対し、本書はほぼ原発事故そのものに絞った書き方をしている。逆に「メルトダウン」ではあまり深く触れていなかった3月16日以降の事故対策については、本書の方がより詳しく紹介されている。
もう一点、本書の特徴をあげるとすれば、本書がほぼ政治的には「無色」だということである。本書の著者は、原発に対して賛成とも反対とも言っていない。筆者はただ事故が起こり、それに対して様々な人々がどのように振舞ったか。そして事故がどのように拡大・収束していったのか、それだけを淡々とした筆致で描いている。従って読み物としてみた場合、「メルトダウン」に比べると本書はやや退屈に感じるかもしれない。しかし原発事故という未曽有の災害の実相と、それに対して立ち向かった人々の戦いを見るという点では本書の方が勝っていると思う。

お奨め度★★★★