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Avalon Hill社のVictory in the Pacific(以下「VITP」)は、私が生まれた初めて購入し、プレイしたウォーゲームである。その後約30年の時を経て、久しぶりにVITPに触れる機会があった。改めてプレイしてみると、新たな発見があった。例えば勝敗ラインをゃんと計算し、日本軍をして「勝つために最適な手段」をゲーム上で実践してみる意外と史実に近い展開になることもわかってきた。
よし、それならVITPを一度通してプレイしてみよう。ルールは標準ルールのみ。当然キャンペーンだ。私自身の問題として、、ゲームそのものは保有していなかったが、VASSALを使えばソロプレイは可能だ。

第1回目-->こちら
第2回目-->こちら
第3回目-->こちら

7Turn(1944年5月)

イメージ 11このTurnは史実でマリアナ沖海戦が行われた時期である。日本側に待望の増援部隊が登場した。期待の大型空母「大鳳」(0-3-7[3])を始め、3隻の軽空母「龍鳳」(0-0-4[1])、「千歳」(0-1-6[1])、「千代田」(0-1-6[1])が艦隊に加わる。それにしても「大鳳」のこの低評価は何?。かつて1/700で再現された「大鳳」の精悍なスタイルを見て「日本もこんな凄い空母を造っていたんだ」と憧れに似た思いを抱いていた少年の夢は、0-3-7[3]という余りに惨めな評価をみた瞬間、崩れ去った。何故「赤城」「加賀」よりも脆いんだ。何故攻撃ボーナスが無いんだ。何故、何故、なぜ・・・・。

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イメージ 12余談ついでに3隻の軽空母についても味わい深い評価になっている。実鑑については「瑞鳳」とほぼ同性能で同数の搭載能力を有しながら、VITPでは何故か空襲力が半減された「千歳」「千代田」。同じく空襲力が半減されただけではなく、速度、防御力まで下げられてしまった「龍鳳」(まあ「龍鳳」については実際にも速度性能に難があったのは事実だが・・・)。空襲力について攻撃ボーナスがないのは「大鳳」と同じで、理由は恐らく戦争後半に登場してきたため搭乗員の技量不足を反映してとのことだろう。
ともあれたった4隻とはいえ、弱体化しつつある日本軍にとって嬉しい増援には違いない。尤も今更役に立たない軽空母の1隻よりは、高速重巡の1隻の方が、日本軍にとっては嬉しかったかも知れない。

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イメージ 13一方の米軍は恐るべき兵力が増援として登場してきていた。新鋭高速戦艦2、正規空母4、軽空母3、重巡2がその全貌である。高速戦艦というのは、言うまでもなく「アイオワ」級のことで、その性能(⑤-9-7)は、総合力で日本の「大和」(6-9-5)を凌いでいた。これらの兵力を加えた両軍の兵力バランスを下表に示す。

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イメージ 14日本軍の戦略は「本土死守」であった。稼働艦艇のほぼ総てと基地航空兵力を本土水域に集中。同方面を保持せんとする。また一部の高速艦艇を各地に派遣し、連合軍の制海権を揺さぶる。
対する連合軍は、現段階では本土に集中する日本艦隊との決戦はリスクが大きいと判断した。なんといってもオーストラリア方面から出撃する艦艇が日本本土に届かないというのが大きい。水上戦力の不足は明らかで、仮に本土近海で戦った場合、水上戦力の不足によって大損害を被る可能性がある。そう判断したのだ。
その代り連合軍は日本本土以外の水域をカッチリ押さえる戦略を採った。

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イメージ 15従ってこのTurnは大きな戦闘はなく、各地に陽動のために派遣された日本艦艇が何隻か失われただけであった。ベンガル湾では重巡「愛宕」(①-2-7)が基地機の攻撃によって。インドシナでは戦艦「伊勢」(4-4-4)が米空母機の空襲によって。南太平洋では重巡「高雄」(①-2-7)が米空母機の空襲によって。そして中部太平洋では重巡「古鷹」(①-1-7)が米新鋭戦艦「アイオワ」の砲撃によってそれぞれ撃沈されていた。

このTurn終了時、日本軍に残された支配海域は日本本土のみとなった。POCは3点である。一方の連合軍は日本本土とアリューシャンを除く全海域を支配した。POCは13点。差分はー10点で累積POCは9点まで減少した。

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8Turn(1944年10月)

イメージ 16最終Turnである。このTurnの増援は、日本軍が2隻の正規空母「雲龍」「天城」(いずれも1-2-7[3])、連合軍は正規空母、軽空母各1隻と「アイオワ」級高速戦艦(⑤-9-7)が2隻だ。両軍の稼働兵力を下表に示す。

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イメージ 14日本軍は4つの海域を狙う作戦に出た。すなわち日本本土、インドシナ、マリアナ、南太平洋だ。4つのうち2つを支配すれば勝ち逃げできるという算段だ。日本軍は艦隊戦力のほぼ全力と基地航空兵力の半数を本土海域に展開。本土を死守する態勢である。その一方で基地航空隊各1個をインドシナ、マリアナ、南太平洋に向けた。基地航空隊1個でも出目如何では制海権を奪えるはず。何故なら水上艦に基地機を攻撃する能力はないからだ。さらに連合軍には別の弱点があった。この方面で使用できる航空基地が少なく、特にマリアナ方面へ基地航空部隊を展開させるためにはフィリピンを必ず確保しておく必要があった。フィリピンを奪われるとマリアナ方面の連合軍基地航空部隊は撤退を余儀なくされるのだ。

対する連合軍は各地に対応する兵力をばら撒きつつ、それぞれの海域で制海権を狙う。そして主力である日本本土攻略部隊は、空母13、戦艦8、巡洋艦11を投入した。対する日本本土防衛艦隊は空母14、戦艦9、巡洋艦1だ。

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イメージ 17まずインドシナ海域。この海域では日本軍上陸部隊3個が投入された。彼らのうち2個が第1次戦闘を生き延びれば、フィリピンを奪回できる。しかし運命の女神は連合軍に微笑んだ。上陸部隊3個中2個は航空攻撃で撃沈され、この時点でフィリピン奪回の夢は断たれた。さらに残った最後の上陸部隊も米潜水艦(①-*-*)の餌食となり、フィリピン奪回を目指した日本軍上陸部隊は、いずれも目的を達成できなかった。
基地航空部隊についても、上陸部隊が米軍機の攻撃を引き付けている間に軽空母「キャボット」(0-2-7②)を撃沈、同じく「バターン」(0-2-7②)を帰還させたが、そこまでだった。米軍機の猛攻を受けた日本軍基地航空部隊もまた沈黙を余儀なくされてしまう。

イメージ 18続いて南太平洋。ここでは日本軍基地航空部隊1個と連合軍基地航空部隊2個+軽空母2隻の戦い。ここでも展開はインドシナ戦と酷似した結果となった。すなわち日本側基地航空部隊の攻撃で軽空母「ベローウッド」(0-2-7②)が沈没。同「ラングレー2」(0-2-7②)も帰還を余儀なくされるが、生き残った米基地航空部隊の反撃によって、日本軍基地航空部隊は撃破された。

マリアナ海域では日本軍基地航空部隊1個と連合軍基地航空部隊3個の戦い。この戦いは双方基地航空部隊を1つずつ失って終了した。

イメージ 20この段階で日本軍の勝利はなくなったが、最後のクライマックスというべき日本本土沖での大海戦の結果を記しておこう。最初の航空戦で日本側は空母3、基地航空隊1を失い、空母4が帰還。対する米軍は空母4を失い、空母6が戦闘不能となった。
イメージ 19第2ラウンドは水上戦となり、日本側は空母5、戦艦2、巡洋艦1を失い、戦艦2、空母1が戦闘不能となった。撃沈された空母の中には、「ニュージャージー」(⑤-9-7)に追撃されて撃沈された空母「大鳳」(1-3-7[3])や「ミズーリ」(⑤-9-7)の追撃を受けて撃沈された空母「飛鷹」(1-2-4③)等もある。米軍は戦艦1隻沈没、戦艦1隻大破、戦艦5、巡洋艦1戦闘不能となった。
第3ラウンドは航空・水上戦となり、米空母2隻が沈没。水上砲戦で日本戦艦1隻沈没、1隻大破。この時点で航空戦力を失った米軍が戦闘を諦め後退していった。
両軍の損害を比較すると以下の通りになる。

(1) 日本軍
 沈没:
  戦艦2(「山城」「陸奥」)
  正規空母3(「赤城」「加賀」「大鳳」)
  軽空母5(「隼鷹」「飛鷹」「龍驤」「千歳」「鳳翔」)
  重巡1(「羽黒」)
 大中破:
  戦艦4(「大和」「武蔵」「金剛」「日向」)
 基地航空隊1隊壊滅
(2) 米軍
 沈没:
  戦艦1(「ワシントン」)
  正規空母5(「ワスプ2」「ホーネット2」「バンカーヒル」「イントレピッド」「タイコンデロガ」)
  軽空母1(「プリンストン」)
  重巡1(「ポートランド」)
 大中破:
  戦艦4(「ミズーリ」「ノースカロライナ」「マサチューセッツ」「インディアナ」)
  正規空母2(「ヨークタウン2」「レキシントン」)
  軽空母1(「サンジャシント」)
  重巡1(「キャンベラ2」)

何はともあれ、日本本土近海の戦いは辛くも日本軍の勝利に終わった。米艦隊、なかんずく空母群は大損害を被り、無傷で行動可能な空母は正規空母1隻「エセックス」(1-3-7④)、軽空母2隻「カウペンス」「インデペンデンス」(いずれも0-2-7②)の計3隻にまで激減した。このTurnだけで失われた米空母の隻数は8隻、大中破3隻に及び、威容を誇った太平洋艦隊は一気に戦力を半減せしめられたのである。

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このTurn終了時、日本軍に残された支配海域は日本本土のみとなった。POCは3点である。一方の連合軍は日本本土以外の全海域を支配した。POCは14点。差分はー11点で累積POCは-2点である。僅差であるが、最終的な勝利の栄冠は連合軍の元に輝いた。

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