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イメージ 16「決戦、連合艦隊」は、1980年代にエポック社から発売された「シミュレーションゲーム入門2」の1作品である。テーマはガダルカナル近海の夜間水上戦闘で、戦艦、巡洋艦、駆逐艦が1隻1ユニットで登場する。全て艦名入り。登場艦艇は「比叡」「霧島」「愛宕」「青葉」「長良」「雪風」「ワシントン」「サンフランシスコ」「ヘレナ」「オバノン」等計111隻。その中には日本海軍の誇る巨大戦艦「大和」も含まれている。

システム的には、Hobby Japanから発売されていた「IJN/Fleet Battles」に近いシステムで、砲撃戦はIJN/Fleet Battlesから射程距離の概念を除いたイメージ。雷撃戦も似たような感じ(個艦のレーティングについての考え方は異なっている)だ。またIJN/Fleet Battlesの「売り」であった陣形ルールは、本作ではオミットされている。

本作に含まれているシナリオは計4本で、史実シナリオが3本とキャンペーンが1本。史実シナリオは、サボ島沖海戦、第3次ソロモン海戦その1、その2である。

今回、この「決戦、連合艦隊」をソロで試してみた。選択したシナリオは、本作で最も小規模なシナリオであるサボ島沖海戦。日本側は5隻、米側は9隻の計14隻が登場する。

1Turn

日本軍は中央に主力となる重巡3隻を配置し、左右前方に警戒用の駆逐艦を1隻ずつ配置した。米軍の奇襲を警戒した配置である。一方の米軍は9隻の艦艇を全て単縦陣に配置し、前方に駆逐艦3隻、中央に巡洋艦4隻、後方に駆逐艦2隻を配置した。

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2Turn

イメージ 9米艦隊先頭を走る駆逐艦「ダンカン」がレーダーで日本艦隊を捕捉した。しかし米艦隊は砲火を開かない。ここで砲火を開いても大きな効果を期待できないからだ。米艦隊はなおも日本艦隊の接近を待つ。

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3Turn

イメージ 10距離8ヘクス(4海里)まで近づいた時、日本艦隊も米艦隊を姿を肉眼でとらえた。この段階で米艦隊も発砲準備を整える。両軍ともほぼ同時に砲火を開いた。重巡「青葉」の放った射弾がブキャナンの弾薬庫に命中。これを轟沈せしめた。対する米艦隊も軽巡「ヘレナ」の射弾が重巡「衣笠」の艦橋に命中。同艦に火災を生じせしめていた。また日本艦隊左舷側を警戒していた駆逐艦「初雪」は、米駆逐艦3隻の砲火を浴びて火災が発生する。

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4Turn

両軍は反航砲雷撃戦に入る。しかし両軍ともなかなか決定打を与えられない。駆逐艦「初雪」に米駆逐艦が放った魚雷が命中。これが轟沈する。また「吹雪」も多数の命中弾を受けて大破した。

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5Turn

イメージ 11すれ違った両軍は再び反転して交戦せんとする。その過程で重巡「衣笠」もまた上部構造物に多数の命中弾を受けて戦闘力を失った。米側は駆逐艦「ダンカン」「ファーレンホルト」「ラフィー」が上部構造物に被弾する、米駆逐艦2隻が重巡「青葉」を狙って魚雷を放ったが、いずれも命中しなかった。

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6Turn

両軍とも再び進路を変じて並行砲戦に入る。このTurnは日本側重巡2隻の砲火が冴えを見せ、米駆逐艦2隻を戦闘不能に陥れた。

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7Turn

イメージ 12形勢は明らかに米軍側に有利に傾いていた。重巡「衣笠」は火災を起こしたまま米重巡2隻の標的のような有様で、多数の命中弾を受けて今にも沈没しそうである。今まで奮戦していた6戦隊の旗艦「青葉」も米大型軽巡2隻の集中砲火を浴びて遂に火災を発した。日本艦隊でまともな戦力を残す艦は、遂に「古鷹」1艦となってしまう。

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8Turn

イメージ 13米大型軽巡「ボイシー」がクリーンヒットを得た。距離1ヘクスというベストのポジションから放った「ボイシー」の一撃は、ピンゾロ2連発という米軍プレイヤーにとって望み得る最高の結果を得た。戦闘結果は5G5M。既に重大な損傷を被っていた「青葉」は、クリティカルヒットのダイスを振るまでもなく轟沈した。さらに重巡「衣笠」も米重巡2隻の砲撃を受けて轟沈。サボ島沖海戦は米軍の圧勝に終わった。

両軍の損害

日本軍

沈没:重巡「衣笠」「青葉」、駆逐艦「初雪」
大破:駆逐艦「吹雪」
小破:重巡「古鷹」

米軍

沈没:駆逐艦「ブキャナン」
中破:駆逐艦「ラフィー」「マッカラ」
小破:重巡「ソルトレークシティ」、駆逐艦「ダンカン」「ファーレンホルト」


感想

水上戦ゲームにしてはプレイし易い作品である。初心者でも簡単にプレイできる点、流石だと思った。
僭越ながら、拙作「ソロモン夜襲戦」と比較すると、以下のことが言える。

イメージ 14まず本作が「ソロモン夜襲戦」よりも優れた点は、まずそのプレイアビリティにある。砲撃戦はダイスを振って命中判定をした後に損害判定のダイスを振るだけ。雷撃もダイスを振るだけである。また移動は完全な交互移動なので、1ヘクスずつ移動する「ソロモン夜襲戦」よりもプレイは楽だ。指揮統制ルールや探照灯、照明弾等のルールもないので、ルール量も少ない。
また(これは結構重要だが)スタックを禁止している点も大きい。スタックする、しないはプレイアビリティに直結する。特に海戦ゲームのようにマーカーを多用するゲームの場合、スタック禁止にすることによるプレイアビリティ向上効果は計り知れない。

イメージ 15一方で(些か手前味噌ながら)「ソロモン夜襲戦」が優れている点は、まずディテールの細かさがある。本作では米駆逐艦は全て同じ性能であり、米防空軽巡も単に「弱いだけの巡洋艦」としか評価されていないが、「ソロモン夜襲戦」では駆逐艦の性能はタイプ別に細かくその差が表現されており、防空軽巡も中口径砲多数を装備した「駆逐艦キラー」として特徴づけられている。火砲の性能、魚雷の性能についても事細かに表現されており、ディテールの表現では「ソロモン夜襲戦」が勝っていると言えよう。
ルールの量は確かの「ソロモン夜襲戦」の方が多いのは確かだが、手順を覚えればプレイのし易さでは本作に劣らない。さらに本作では指揮統制の制約がないので毎Turn全艦が砲撃を行うことになり、あまり効果の期待できない砲撃の解決に時間を取られることが多々あるが、「ソロモン夜襲戦」の場合は指揮統制ルールが厳しいため無駄な砲撃を行う機会が少ない。勢いゲームのテンポは良くなる。

総合的に評価するなら「ソロモン夜襲戦」の方が本作よりも優れていると意を強くした次第である。
人はこれを「身贔屓」といって笑うのだろうな・・・。まあ良い。笑いたければ笑え・・・。