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Naval FirePower Battleship Guns and Gunnery in the Dreadnought Era

Norman Friedman Seaforth Publishing

直約すれば、「海軍の火力、ドレットノート時代における戦艦の砲と砲運用」とでもなるだろうか。その言葉どり20世紀前半における戦艦による砲術について記載している。日本では、砲術の大家と呼ばれた黛治夫元海軍大佐が似たような書籍を出版しているが、本書はより広い範囲を扱っており、中立的な視点で記載されている点が特徴といえる。
本書は前半砲術全般に関する解説と20世紀初頭から第2次大戦までの主として英国海軍における砲術史について触れた後、後半では独米日仏露の各国における砲術史について触れている。著者が米国人なので米海軍のレーダー射撃について一般に評価が高いが、初期のレーダーでは視野角が狭く解像度も不十分で水柱と目標を分別できなかった等問題点にも触れており、中立的な視点で描かれていると評価できる。
さて、我々にとって気になるのは日本海軍についての評価だが、装備や運用面では日本海軍は概ね米英海軍のレベルに到達していると評価されている。しかし第2次大戦ではレーダー装備で米英に遅れを取ったことが致命的であり、また艦隊決戦に固執した運用構想を非主導的であるとしている。また水中弾については「利益よりも損失の砲が大きかった」と手厳しい。実際、戦争全期間を通じて水中弾の効能が確認されているのはサボ島沖海戦での重巡「古鷹」による軽巡「ボイシ」撃破のみであり、他にはサマール戦の「ガンビアベイ」が「その可能性あり」程度に過ぎない。逆に水中弾に拘ったために信管の作動時間を極端に遅くした日本の徹甲弾は、実戦で多くの不発弾を生み、結果的に連合軍艦船を救う結果となっている。
海軍砲術という専門分野を扱った書籍でかつ英文なので読みとおすのは結構大変だが、砲術に興味のある向きには必読書といえよう。

お奨め度★★★★★