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Triumph and Tragedy(以下、T&T)は、1936~45年にかけて戦われた第2次世界大戦及びその開始前における国際情勢を描いたシミュレーションゲームだ。プレイヤーはドイツ、西側諸国、ソ連の3陣営をそれぞれ担当し、自陣営の最終的な勝利を目指して国益追及を図ることになる。

T&Tの特徴は、3人ゲームであるということ。通常のウォーゲームは1対1の対戦型である場合が殆どで、基本的にはゼロサムゲームである。つまり「自陣営が嬉しい=相手陣営が辛い」という図式が成立する。スポーツ等で解りやすい図式だ。

3人ゲームはその点で難しいアイテムだ。2対1という図式が成立すれば、1の側に勝ち目はない。かといって2対1という状況を成立させないというのも無茶な話。ゲームとしてのバランスを破綻させず、しかも面白いゲームを作るという意味で3人ゲームは極めて難しい課題と言えよう。

T&Tがこの難しい課題にどのようにチャレンジしているのかを実際のプレイを通じて確認してみたい。

第1回

今回参加したのは3名。参加者の中で一番ベテランの方が西側陣営を希望されたので、その希望を優先した。残り2つを素人2人が分割。多分一番素人の私がドイツを担当することになったが、それが間違いの始まりだった・・・。

序盤、国力で他の2陣営を圧倒するドイツは、オーストリアを外交的に支配した後、チェコスロバキアへ軍事侵攻をを行い、瞬く間に支配を確立する。さらにデンマーク、フィンランドといった北欧諸国を外交支配。さらにポーランド、ルーマニアを立て続けに軍事支配し、ソ連の出口を塞いだ。

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しかしルーマニア、フィンランドの支配に怒ったのがソ連。史実と比べれば別にどうという事はない筈だが、何故かソ連はドイツの行為を激しく批判した上で、ドイツに対して一方的に宣戦を布告。フィンランドを軍事侵攻しただけでは飽き足らず、さらにポーランド、ルーマニアへの侵攻を画策する。

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ドイツはソ連に対してトルコの提供を申し出、休戦の提案を行ったが、ソ連側はそれを一蹴。

「我々は"やる"と決めたことは必ず"やる"」

とドイツに対して無条件降伏要求に等しい声明を発した。

それに対してドイツ側。マジ切れ状態となり「ざけんなよボケ」と関西弁炸裂。この段階で前途を悲観した西側陣営からゲーム終了が提起されたので、「今回は練習用」ということでお開きとなった。

第2回

食事を挟んでクールダウンした一同。素人がドイツを担当したのが敗因ということで、今度は一番ベテランの方がドイツを担当。下名は一番素人向きと思われるソ連を担当することになった。

序盤ソ連はドイツの拡張を妨害する後方でゲームを進める。フィンランドとルーマニアに軍事侵攻してこれらを奪取。ドイツから資源の獲得を妨害する。その結果ドイツは資源確保が困難となり国力伸長が阻害された。しかし対ドイツに国力を傾注した関係上、対米英政策が疎かになり、1940年の段階で米国参戦を招いてしまう(参戦も糞も戦争自体始まっていなかったのだが・・・)。

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窮したドイツは当方の目論見通り対英宣戦布告。パリへ向けて装甲突破を図る。マンシュタイン計画に基づいてパリ陥落、と行けば良かったのだが・・・。ドイツ軍が意外と不甲斐ないというか、あるいは米を味方につけた英仏の抵抗が見事と見るべきか。パリは遂に落ちなかった。
それでもUボートが大西洋の交通線を遮断するとか、イタリアが地中海を支配して中近東方面から英本土へ補給線を遮断するとか、西側を陣営を苦しめてくれたのだが・・・。

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その間、我がソ連は漁夫の利とばかりブルガリア、ギリシアを支配。ハンガリーはドイツに譲ったが、スウェーデンも支配下に置いて確実に戦後に向けた布石を打っていた。しかし戦争をしないことが災いし、工業力が伸びない。それに対して西側は元々の潜在的能力に加え、米国の参戦やドイツからの宣戦布告を受けたことなどで国家総動員体制が確立し、工業力が着実に伸びている。資源や人口では世界有数の強国になった我がソ連邦だが、このままでは工業力がネックになって西側陣営に負けてしまう。

焦ったソ連邦は遅ればせながら近東諸国に目を向けた。1943年に中立のトルコとペルシアに侵攻。これらを軍事支配すると、続く1944年には遂に西側諸国に対して宣戦を布告。ペルシアを拠点としてイラク、そして英連邦の至宝ともいうべきインドへ進攻を行った。これらの侵攻作戦は成功裡に終わり、中近東一帯から中央アジアにかけて英国勢力を一掃。共産陣営を同方面に浸透させることに成功した。

しかし時すでに遅し。地中海から中近東を失った西側陣営であったが、それでも潜在能力でソ連を上回り、しかも序盤の平和攻勢で稼いだ「平和の配当」が大きかったこともあり、西側陣営の圧勝に終わった。


上記の結果については一部計算ミスがあり、特にソ連側に副首都支配による+2点を加算し忘れていた。それを加算するとソ連側と西側陣営の得点差は小さくなるが、最終的な勝者が西側陣営になることは動かないようだ。

感想

1回目は兎に角、2回目の勝敗については「平和の配当」チットの引きに依存すると所が大きかったので、ソ連側の戦略が一概に間違いだったとは言えない。その点を踏まえて感想を書いてみたい。

まず難易度だが、一番簡単なのはソ連だと思う。後背地に敵を持たず順調に国力を広げていける。2回目のプレイを見ていても戦争をせずに西側とドイツが争っている隙に中近東をかすめ取れば、漁夫の利を得られる。何も考えずにプレイできる、という点ではソ連がサイコーだ。とはいっても慣れたドイツ軍プレイヤーならソ連の利点を十分に理解しているはずで、ソ連の伸長を止めにかかるだろう。そこでソ連としては対独戦争を決意するか、あくまでも対独宥和で英独戦争の勃発を待つかが判断の分かれる所だろう。

ドイツは難しい。二正面に敵を抱えているので挟撃を食らう可能性が高い。ドイツとしては早めに戦争に訴えて英ソの各個撃破を狙うか、あるいはあくまで平和に徹するかが難しい。ソ連の場合はある程度自分で戦争・平和を選択できるが、ドイツの場合は「出る杭」なので自分の意思以外で戦争に巻き込まれる場合がある(第1回目のプレイのように)。だから平和攻勢を狙う場合でも敵側からの宣戦布告に備えて対応策は考えておくべきだろう。戦争を仕掛けられた場合、工場のコストが小さくなるとか、VPが減らないとかメリットも多いので、逆にワザと相手を挑発するような外交攻勢を仕掛けて戦争を起こさせるのも手である。

いずれにしてもドイツの場合明確なグランドデザインがないと勝ち筋が見えてこないので、ある程度場数をこなす必要があるだろう。

西側はどうすればよいのだろう。史実通りの結果なら勝利できるが、果たしてソ連が中近東に手を出さないまま済ませるか?。それとも国力を傾けても中近東の守りを固めるか。それとも最初から国力による勝利を諦め、核開発による勝利を目指すのか?

何度かプレイすればそれぞれの国別に勝ち筋が見えてくるとは思うが・・・。