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以前にAHのFlight Leaderをプレイした際、参加した方から「何をして良いのかわからない」というご意見を伺った。多くのウォーゲーマーが空戦ゲームに期待するのは、まるで「エ○ア88」のように「華麗に大空を舞い、敵機をバタバタと撃ち落とす」ような展開だと思う。しかし現実にプレイしてみると、膨大なルールの量に圧倒され、いざプレイに漕ぎ着けても今度は「何をして良いかわからない」状態になる。で、対戦相手が空戦ゲームに慣れたプレイヤーなら、それこそ自分がまるで反政府軍やガミラス軍のように「バタバタと落される」側になってしまう。で、結論
「空戦ゲームはつまらない」
となってしまう。

これは、例えば陸戦ゲームで戦線の張り方をわからないプレイヤーが、軍神級の相手と戦って惨敗するようなもの。いや。相手が軍神級ではなくても、中級以上のプレイヤーが相手なら悲惨な結果を招くであろう。当然「戦線の張り方もわからないプレイヤー」は、2度と作戦級ゲームをプレイしなくなる。

このような悲劇を避けるためには、陸戦の初心者に対して戦線の張り方をレクチャーするのと同様、空戦ゲームについても「戦線の張り方」に匹敵するような初歩的情報を予め開示しておくのが有効であろう。しかし悲しいかな空戦ゲームはマイナーなので、今までそのような情報があまり一般的ではなかった。無論、ゼロではない。空戦ゲームを発売したメーカーは、雑誌等のメディアを使って空戦戦術のイロハをレクチャーしてきた。しかし悲しいかな、20世紀に作られたこれら資産は、20世紀末の暗黒時代にその多くが失われてしまった。そして21世紀の今日、エアフォースやエアウォーあるいはエアスペに匹敵するメジャーな空戦ゲームが出版されていないこともあり、空戦戦術に関する記事が雑誌等で発表される可能性は高くない。

そこで私が空戦戦術の基礎の基礎をここで紹介したいと思う。
本記事を読む際に注意して頂きたい点は以下の通りである。

 (1) 内容を単機の戦術に絞った。何故なら単機での戦い方が分かれば、複数機の戦術はその応用に過ぎない(単機戦術を有効に活用するため、あるいは相手の単機戦術を打ち消すために複数機を使う)
 (2) 時代は20世紀。ジェット機時代のミサイル戦を想定する。ミサイル戦はルールが難しいので敬遠されがちだが、ミサイルを使わないとジェット機を落すのは至難の業。機銃だけでジェット空戦を戦うのは、竹槍でB-29を落すようなもの(と言えば少し言い過ぎ)。また21世紀を入れなかったのは、ステルス戦闘機とかオフボアサイトミサイルとか厄介なファクターが入ってきたので、面倒なので除外。
 (3) ゲームによっては記事の内容がそのまま使えない場合がある。特にSPIのエア○ォーは要注意。ルールが多い癖に航空力学的には「トンデモ」な部分が多い。一応今回の記事で想定したゲームは、AHのFlight LeaderとCOAのAir Powerである。また、GDWのAir SuperiorityはAir Powerの親戚のようなものなので、応用できるはず。

ミサイル回避術

いきなりミサイル回避から入ると違和感を覚えるかもしれないが、意外とこれがわかっていない。正しい回避方法がわかっていれば空対空ミサイルはそれほど恐れる事はないのに(注1)、避け方をわかっていないので「ちゅどーん」となる例が多い。そこで「ミサイル避けの魔法」をいくつか紹介したい。いずれも知っている人にとっては「アタリマエ」の内容ばかりである。

 (1) ミサイルを撃とうとしている敵機を見落とさない。死角から撃たれないようにする。
 (2) 赤外線誘導ミサイルに狙われた時はエンジン出力を絞れ(これで生還率を倍以上にできる)
 (3) ミサイルの命中率が低くなる方向に機首を向けろ。多くの場合、斜め前から飛んでくるミサイルが一番命中し難い。逆に最悪はケツから当たる場合。真正面(ヘッドオン)も意外と当たり易い。
 (4) こちらがレーダー誘導ミサイルを持たず、相手が持っている場合、ビーム機動が有効。ビーム機動とは相手を斜め前から真横に見るような形に機動することである。
 (5) 可能なら超低空に逃げろ。大抵のミサイルは超低空の目標に対して命中率が激減する。
 (6) チャフやフレアは出し惜しみしない。ケチって落されたら元も子もない。

ま、こんな所かな。これだけでも知っているか知っていないかで生還率は数倍違うはず。

(注1)第4世代とか第5世代のミサイルは別ね。あんなのは避けられましぇん。

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機動戦術

機動戦術の基本のキは、「相手を自分の射界に捉える」「相手の射界に自分が入らない」の2点である。そのためにはどうすれば良いか。そのための手段がBFMとか空戦機動とか呼ばれるものの正体である。
空戦機動には色々あって専門的に勉強すると奥が深いが、実の所、筆者も詳しくは良く知らない(注2)ので、滅茶苦茶かいつまんで説明すると、要は「速く回ること」と「小さく回ること」の組み合わせである。

「速く回る」とは機首の向きを早く変えること。「小さく回る」とは旋回半径を小さくすることである。少し専門用語を使えば(注3)、「速く回る」とは「旋回率を大きくする」こと。「小さく回る」とは「旋回半径を小さくする」ことである。

まず「小さく回る」ためには、一般的には速度が遅ければ遅い程良い。極端な話、速度ゼロで旋回できれば旋回半径はゼロになる(注4)。厳密には上記の考え方は不正確なのだが、ある程度の速度以上なら間違った考えではないので、目安として「遅ければ遅い程小さい旋回半径で回れる」というのは覚えておいて損はない。
ただしヒコーキには失速速度という厄介なものがあり、失速速度付近では曲がれない。さらに速度が遅いと敵の良いカモ(敵戦闘機以外にも対空砲だとSAMだとか・・・)なってしまうという。さらには速度が遅すぎると攻撃に移るのも困難になる。ではどうすれば良いか。その答えに移る前にもう1つの要素「速く回る」について考察してみたい。

「速く回る」ためにはどうすれば良いか。全てのヒコーキには一番早く回れる速度が実は決まっている(勿論飛行高度その他の条件によって異なる)。これを「コーナー速度」と呼ぶ。機体によって異なるが、例えば零戦の場合、計器速度300km/h前後がコーナー速度である。コーナー速度がどの程度なのかは結構専門的な話になるので割愛する。超音速戦闘機の場合、概ねマッハ0.5~0.9程度がコーナー速度だと考えておけば良い(低空の方がマッハ数が小さくなる)。要するに「速く回る」ためには、ある程度「速くく飛ぶ」必要があるということだ。これが先に述べた「小さく回る」場合と異なっている点である。また一般に重い機体ほどコーナー速度が速くなる傾向がある。例えば重量約15トンのF-4ファントムは、重量5トンのMiG-17よりもコーナー速度が速い。

ちなみに、ある程度の速度が出ている場合、コーナー速度に達していなくても旋回率はあまり変わらない。逆にコーナー速度を超えると急激に旋回率が低下する。現実的な話、ジェット戦闘機がコーナー速度で最大の旋回率を発揮しようとすると、7Gとか9Gとかいった凄まじいGをかける必要がある。そんな高G環境下では、如何な強靭さを誇るファイターパイロット達であっても、Gに耐えるのが精一杯である。それよりもコーナー速度をやや下回る速度でやや強いGをかけて、鋭く回る方が良い。だからコーナー速度を超えないように注意していれば、コーナー速度ギリギリで飛ぶ必要はあまりない。

「小さく回る」「速く回る」。空戦ではいずれも重要なのだが、どちらがより重要かと言えば、実は「速く回る」方なのだ。だからドグファイトに勝つためには、「コーナー速度に近い速度で飛ぶ」。これが鉄則である。
しかしいくら「速く回る」ことができても、旋回半径が大きいと敵を射界に捉えることはできない。旋回半径が大きすぎてオーバーシュートしてしまうからだ。ではどうすれば良いのか。ここから先が空戦戦術っぽい話になってくる。


(注2)パイロットでも自衛官でもない筆者が真面目に空戦機動を勉強しても一文の得にもなりません。
(注3)専門用語といっても高校生の物理学程度
(注4)速度ゼロで旋回できる機体といえばハリアーが有名だが、バトロイドバルキリーも上手く使えば速度ゼロで旋回できる。空中戦にバトロイド形態を応用した誰かさんはやっぱり天才だなぁ・・・。
(注5)いくら初心者でも失速速度ぐらいは知っているはず

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