これまで2度に渡って紹介してきたSPIの現代海戦ゲーム「Task Force」だが、この度対戦の機会を得た。そのレポートを以下に報告する。なお、Task Forceの基本的なシステム等は、こちらの記事を参照されたい。
「時に西暦1985年。世界は戦火に包まれた。貴方は今、機動部隊の指揮官になる」(箱絵より)
シナリオ33.12「ソ連艦の襲撃」
設定
6週間戦争の初期、ソ連海軍のクレスタ1型とキンダ型の巡洋艦はノルウェー海で通商破壊戦を開始した。アイスランドのケプラヴィークに位置するSTANAVFORLANT(大西洋常設艦隊)から2隻の米駆逐艦に対してこれを撃破するよう命ぜられた。分析


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展開
全7Turnのシナリオで、最初の5Turnは両軍共電波の発信を抑制したのでお互いに発見できなかった。兎に角電波を出せば不利になるので、お互いに電波を出さずに搭載ヘリによる索敵だけで敵を見つけようとする。しかしヘリ捜索能力は小さく、探すべき海は余りに広い。
第7Turn、2隻の米駆逐艦が全16発のハープーン対艦ミサイルを一斉に発射する。16発のハープーンは4発単位の4グループに分かれてソ連艦隊に殺到する。ソ連艦は艦隊防空用ミサイルを装備していたため懸命に対空戦闘を行ったが、多数のハープーンがその防衛線を突破した。複数のミサイルがソ連巡洋艦2隻に命中。2隻共その損害に耐えられず、ノルウェー海に沈んでいった。
感想
勝利条件が両軍とも損害の大小だけなので、お互いに勝ちを目指せば今回のような展開になりやすい。今回はソ連軍プレイヤーが好奇心で電波を出してくれたが、多分に勝敗を度外視した感が強い。これはプレイスタイルの問題ではなく、シナリオの勝利条件に問題があると言える。今回のシナリオについていえば、例えばソ連艦が盤外突破すれば勝利とか、特定のメガヘクスに入ればサドンデスというような勝利条件を設定し、それに対応して米側の索敵力を強化するなりすれば、もう少しエキサイティングなシナリオになったのに、と思う。この先紹介する機会があると思うが、本作のシナリオはいずれもバランス面で首を捻るようなものが多く、デヴェロップ不足、テストプレイ不足を感じる。
シナリオ33.21「グアンタナモ救出作戦」
設定
グアンタナモの米軍基地は、開戦劈頭キューバ軍の包囲を受けることとなった。対する米軍はブルク級フリゲート艦1隻とペリー級フリゲート艦3隻に護衛された10隻の輸送船団をパナマ運河経由でキューバに向かわせた。しかし彼らとグアンタナモの間にはソ連海軍所属のコトリン型駆逐艦1隻とキューバ哨戒艇11隻が待ち構えていた。分析

地図の関係で、パナマ運河から北上してグアンタナモに向かう米船団は、必ずジャマイカ海峡を通過する必要がある。従って我としては敵がジャマイカ海峡に来るのを待ち、そこで捕捉・撃滅するという手が考えられる。しかしこの手はあまりに単純かつ敵も当然警戒しているので、我の裏をかいてくる恐れがある。
そこでヘリを搭載し、索敵能力の高いコトリン型駆逐艦「スヴェートルイ」(注1)を先行させて敵船団を位置を突き止める。そこへキューバ哨戒艇部隊を突っ込ませるという作戦を立てた。11隻の哨戒艇が装備する対艦ミサイルは計50発。これだけのミサイルの一斉射撃を受けたら、米艦隊と言え無事では済むまい。
(注1)実際のコトリン型駆逐艦は、ヘリ搭載能力を持たない。

展開

「敵ミサイル多数、本艦に向けて急速接近」
この報告を最期に駆逐艦「スヴェートルイ」からの連絡は絶たれた。戦後の調査によれば、帝國主義者のペガサス級哨戒艇「ハーキュリーズ」が放ったハープーンミサイルの攻撃を受けて撃沈されたという。生存者は一人もいなかった。



その直後、今度はキューバ哨戒艇が敵ミサイル攻撃に晒される。飛来したミサイルは計16発。いずれも米国製のハープーンだ。いつもなら帝國主義者のミサイルは不思議なぐらい命中精度の高いが、この時は欠陥品でも掴まされたのだろうか?。1隻の哨戒艇が数発のハープーンを食らって轟沈したものの、損害はこれだけ。米国内の労働者達も我々に協力してくれたのだろう。
とまあ、なんやら妄想半分でゲームは進んでいったが、結局最終Turnに全輸送船が無傷でグアンタナモに入港。帝國主義者の圧勝に終わった。

感想
敗因は敵船団を航路を読み間違えたことだ。また前半に駆逐艦が撃沈されたのも痛かった。駆逐艦を先行させること自体は悪くない手だと思うが、駆逐艦の至近海面にミサイル艇を待機させておき、敵発見から時を置かずにミサイルの一斉射撃を仕掛けるべきであった。このシナリオも例によってバランスが悪い。例えば登場する米輸送船10隻のうち、9隻を撃沈し、1隻がグアンタナモに入港したとしても、勝利得点上は米軍の勝利である。何故なら輸送船を沈めてもソ連/キューバ側はVPを得られないからだ。そして勝利はVPの大小だけで決定される。ちなみに対艦ミサイルの命中精度と輸送船の耐久力を考慮すると、10隻の輸送船全てを撃沈するのは、物理的に困難である。
まともなプレイを望むのなら、デフォルトでソ連/キューバ側にハンディキャップとしてVPを与えておくべきであろう。20点ぐらいでイーブンバランスのシナリオになると思うのだが、如何だろうか。
まともなプレイを望むのなら、デフォルトでソ連/キューバ側にハンディキャップとしてVPを与えておくべきであろう。20点ぐらいでイーブンバランスのシナリオになると思うのだが、如何だろうか。