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これまで2度に渡って紹介してきたSPIの現代海戦ゲーム「Task Force」だが、この度対戦の機会を得た。そのレポートを以下に報告する。なお、Task Forceの基本的なシステム等は、こちらの記事を参照されたい。

「時に西暦1985年。世界は戦火に包まれた。貴方は今、機動部隊の指揮官になる」(箱絵より)

前回までの展開
--> 1回目と2回目
--> 3回目と4回目

時計を見ると2時半頃だった。ゲームを開始してからまだ5時間半しか経過していない。5時間半で曲がりなりにも4シナリオプレイできた。とはいってもまだ時間はある。そこで本来の予定になかった上級ルールに挑戦することになった。選択したのは以下のシナリオである。

シナリオ33.41「グアンタナモ撤退」

設定

戦争が始まった時、数隻の米艦隊は、インド洋方面への展開に備えての訓練の為キューバのグアンタナモ湾にいた。第3戦闘グループと命名されたこれらの艦艇に対してフロリダ州メイポートの米軍基地へ向けての突破が命じられた。同じ頃、ソ連の水上部隊がハバナ港へ訪問中であった。彼らは数隻のソ連原潜とキューバ哨戒艇と共同で米艦隊撃滅を命じられた。

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分析

イメージ 3ダイス判定の結果、下名は共産陣営を担当する。
今回は初めて航空兵力が登場する。米海軍は空母「サラトガ」とその艦載機。そして海兵隊のF-4ファントムとAV-8ハリアー各1個飛行隊が登場する。共産陣営はMiG-21が2個飛行隊。そして両陣営共長距離哨戒機を保有しているが、その兵力では米軍が優位に立っている。

水上兵力は米軍は「サラトガ」の他に駆逐艦4隻とフリゲート艦2隻。共産側はミサイル巡洋艦2隻と駆逐艦1隻、そしてキューバの哨戒艇が11隻である。隻数は多いものの水上打撃力以外は貧弱である。
潜水艦は共産側のみ登場し、原潜が3隻。内2隻は対艦ミサイルを搭載している。

展開

このシナリオは、グアンタナモ付近に米機動部隊がいて、それをソ連側が包囲している、という状況からゲームが開始される。米軍が自慢の航空哨戒能力を使ってソ連艦隊を探す。が、読みが外れてソ連水上艦隊を発見できない。何とか潜水艦を発見したにとどまった。ここで水上艦を見つけられなかったことが致命傷となる。

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イメージ 4先手を取った米艦隊は、位置を確定したソ連原潜を仕留めんと水上艦による対潜攻撃を仕掛ける。しかしその攻撃を辛くもかわしたソ連原潜は対艦ミサイルで即座に反撃を実施。米ミサイル駆逐艦「キング」が数発の対艦ミサイルを食らって轟沈した。

そしてハバナ港に潜んでいた共産側水上部隊計14隻がキューバ近海の米機動部隊をその射程距離内に捉えた。一斉に放たれた対艦ミサイル。その数は計68発。果たして米機動部隊の運命は如何に・・・。

と言う所でお開きとした。多分米艦隊の半数近くが海の藻屑になると思われるが、それは誰も知らない。

感想

イメージ 5このシナリオは先制攻撃が全てだと思う。共産側のミサイル火力は強力だが、それも先制攻撃ができたらの話。逆に米側が先手を取り、その搭載ミサイル計36発で先制攻撃を仕掛けたら、共産側、就中キューバ哨戒艇は半数以上が確実に海の藻屑となっていただろう。さらに米軍自慢の航空攻撃を併用すれば、最初のTurnに共産艦隊を壊滅させることも不可能ではない。仮に壊滅しなくても対艦ミサイル火力の大半を失った彼らは、最早米機動部隊の脅威ではない。従ってこのシナリオで米軍は何が何でもソ連艦隊を先に発見し、先制攻撃を仕掛けなければならない。

ゲーム全般の感想

まず褒める点から。
見た目に関わらずプレイアビリティは高い。ブラインドサーチにも関わらずルールは明確で、悪意のないミスを起こす可能性はかなり低い。戦闘システムもシンプルで、インストプレイも可能なぐらいだ。複雑な現代海戦を扱いながら、このシンプルさは魅力である。
プレイ時間も短く、今回5本のシナリオをプレイした場合の所要時間はセットアップも含めて7時間であった。この分では複数の空母が登場する大型シナリオでも1日あればプレイできそうだ。
またユニットデザインも秀逸である。航空機は平凡だが、横長のユニットを使った艦艇は現在の視点で見れば色使いが少し寂しいが、それでも及第点以上の出来だと思う。全ての艦艇に個艦名が入っている点も良い。これで例えば6th Fleet(VG)のように国籍別に色分けされていれば申し分なかったのだが・・・。

次に問題点。
本文中にも書いたが、シナリオのバランスが調整不足である。全てのシナリオとは言わないが、今回プレイしたシナリオの大半はバランス的に問題があると感じた。
リサーチも甘い。例えば射程約200海里を誇るソ連製大型対艦ミサイルP-6/SS-N-3シャドックが、何故か射程60海里(初期型)のRGM-84ハープーンよりもゲーム上は射程距離が短い。また同じく重量5トン前後のP6/SS-N-3と重量0.5tのSAM転用の対艦ミサイルSea Dartの威力がゲーム上は全く同じというの解せない(命中率の違いで差を出しているのかもしれないが・・・)。ヘリによる対潜能力を過小評価(というか全く無視)している点、原潜とディーゼル潜で違いが殆どない点も気になる。これらの問題の一部はTactics誌4号で示されている改定ルールを導入することで解消できるかもしれない。ただしただでさえ怪しい本作のシナリオバランスが、改定ルール導入によってさらに悪化する危険性もある。

総じていえば本作はゲームとしてみた場合、残念ながらデヴェロップ不足であり不完全だと言わざるを得ない。ただしこれらの欠点はハウスルールの導入によって解消可能な問題であり、本作の致命的な欠点ではない。フリートシリーズに比べれば荒削りな感は否めないが、現代海戦をブラインドサーチで楽しめるのは本作だけである(あとはGDWのハープーンかな?)。可能ならばTactics誌提唱の追加ルールを導入した上で複数の空母が登場する大規模シナリオ(例えば33.43の改訂版)を試してみたいと思う。

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おまけ

「対艦ミサイル多数接近中!!」
艦隊外周を警戒中のE-2Cホークアイからの緊急通報が旗艦空母「サラトガ」のCICに届けられたのは、まだ日の出間もない早朝のことであった。キューバのグアンタナモ港を出港してから約2時間。まだ50海里程しか進んでいない。約70発の対艦ミサイルが彼らに向けて一斉に発射されたのは正に瞬間の出来事であった。艦隊防空を統制する防空統制艦であるミサイル駆逐艦「ルース」からCAP機と各艦艇に指示が飛ぶ。
「各個に迎撃せよ」

敵のミサイルは4~8発のグループに分かれて艦隊上空に迫ってくる。それをCAP機や各艦の対空ミサイルが狙い撃つ。機動部隊上空は忽ち飛び交うミサイルの白煙と爆発光によって彩られていく。

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最初に飛来したのは9発のSS-N-9「サイレン」。命中精度の高い新型のミサイルだ。CAP機が3発を撃ち落とし、艦隊のミサイルがさらに2発を撃ち落とす。残り4発はフリゲート艦「ポール」に迫ったが、「ポール」のCIWSとチャフが全弾無力化した。
続いて9発の「サイレン」が続く。CAP機が2機を撃墜したが、艦隊のSAMは1発も撃墜できず。7発が防空統制艦であるミサイル駆逐艦「ルース」に迫る。「ルース」のCIWSがそのうち3発を阻止し、2発は誘導不良で海に落下したが、残リ2発が「ルース」に命中した。「ルース」は上部構造物を破壊され、対空火力を失った。
SS-N-9に続いて飛来したのは32発のSS-N-2「スティックス」。8発ずつの4波に分かれて飛来する。フリゲート艦「ボーグ」が2発食らって轟沈する。もう1隻のフリゲート艦「ポール」は命中弾1発だけだったが、当たり所が悪かったのかこの1発で吹っ飛んでしまった。新型のスプルーアンス級駆逐艦「ピーターソン」と「キャロン」にも複数のミサイルに狙われたが、近接防空火器によるハードキル、電子妨害によるソフトキル、そしてミサイル自体の誘導不良によって被弾を免れた。
最後に飛来したのは12発のSS-N-14「サイレクス」と4発のSS-N-3「シャドック」だった。既に米艦隊の防空システムはズタズタで、敵ミサイルは輪形陣を容易に突破して艦隊中央の超大型空母に迫る。「サラトガ」には3発の魚雷型ミサイル「サイレクス」が命中した。誇り高い超大型空母「サラトガ」は大きく右に傾き、航空機運用能力を失った。速度も半減。最早敵潜水艦から逃げることはまず不可能だろう。さらに先にミサイルを食らって中破していたミサイル駆逐艦「ルース」もSS-N-3を2発食らって沈没する。

68発のミサイルによる攻撃が終わった時、米艦隊は1隻の駆逐艦と2隻のフリゲート艦を失い、超大型空母も戦闘力を失って波間に漂っていた。68発のうちCAP機によって15発、SAMによって6発、近接防御兵器で22発が撃墜又は無力化され、残り25発のうち10発が命中した。

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以上は、本番のプレイで未実施だった対艦ミサイルによる波状攻撃をソロプレイで実験したものである。後で試算すると、1波あたりの平均阻止数は約4発(CAPで2発弱、SAMで1発弱、CIWSで2発弱)、9波のミサイルのうち36発が撃墜/無力化されることになる。残り32発。ミサイルの命中率は平均42%。従って13~14発のミサイルが命中する計算になる。今回の結果は試算値をやや下回ったが、それでも空母機動部隊を無力化するには十分であった。