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Persian Gulf(以下、PG)は、GDW社がThe Third World Warシリーズの第4作目のゲームとして1986年に発表したシミュレーションゲームだ。テーマはペルシャ湾岸地域における米ソの激突である。PGの大きな特徴は「外交ルール」で、米ソ両陣営による中東諸国に対する外交活動を再現する。毎Turn最初の外交フェイズに両プレイヤーは外交カードを1枚ずつプレイし合う。その結果、中東諸国の政治的な動向が変化する。

今回、PGを対人戦でプレイすることになった。下名はWPを担当する。

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10Turn

イメージ 6イメージ 7米軍RDFが漸く勢ぞろいしてきたので、米軍は第24機械化師団(14-16-7)を主力とする2個師団以上の兵力でアル・クウェート市奪回作戦を発動した。クウェートを守るソ連軍師団は練度に勝る米軍の攻撃を受けて壊滅。クウェートは再び米軍の手に帰した。しかしその戦闘の過程で地上支援に投入されたA-10サンダーボルトが対空砲火で撃墜されてしまう。A-10はNATO側最強の対地支援機であり、かつNATO側でA-10が1ユニットしかないだけに、NATO側のショックは大きかったようだ。

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イメージ 8米軍抗し難しと見たソ連軍は、米軍の後方に展開するサウジアラビア軍4個旅団のスタックを包囲攻撃。半数を撃破するという戦果をあげていた。しかし米軍も反撃を実施。サウジ領内に侵攻したソ連軍最強の第15戦車師団(11-9-6)と空中機動旅団(2-3-7)のスタックを包囲攻撃。退路を完全に断った攻撃によりこれを壊滅させていた。

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11Turn

外交フェイズ。両軍とも最後に残った1枚の外交カードを使用する。「総動員」。先のTurn、ソ連軍と米軍が戦場で激突したため、漸くその条件を満たしたのだ。これにより次のTurn、第3次世界大戦が始まる。

イメージ 9戦場を黒い雲が覆う。季節外れの雨雲の下、全天候攻撃能力を持つNATOの対地攻撃機が暴れまわった。ソ連軍のC級機械化師団(5-6-4)1個がF/A-18に打撃阻止攻撃を受け、一撃で壊滅していった。また敵の後方に回り込んだシリア軍の攻撃ヘリコプター旅団(1-1-6)が米海兵隊と刺し違えになって壊滅していった。

イメージ 10ソ連軍主力はクウェートから撤収。ユーフラテス川付近の低湿地帯に防衛ラインを引いた。米軍は防衛戦の突出部を守るシリア軍第9戦車師団(5-6-5)を攻撃。集中攻撃のよってこれを壊滅させていた。しかし再びソ連側の対空砲火炸裂。"6"の目を出して地上支援に当たっていたAV-8ハリアーが対空砲火の餌食となった。

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12Turn(戦争第1Turn)

イメージ 11第3次世界大戦が始まった。今までは戦争の局外にいたヨーロッパが戦火に包まれる。この西アジア方面でもトルコがNATO側に立って戦争に参加し、西アジアにおけるソ連軍と交戦状態に入った。
ペルシャ湾方面では、ソ連軍の機械化部隊がイラク西部を大きく迂回し、米軍の側面を突くべく機動反撃を実施する。史実における湾岸戦争の際に多国籍軍が通ったルートを逆方向に向かって移動していくような形だ。クウェートを奪回した米軍の最後尾を守っていた米第7軽歩兵師団(3-4-7)をソ連軍を主力とする機械化師団4個以上が攻撃した。比率7-1での攻撃は、残念ながら米軽歩兵師団を壊滅させるには至らなかったが、これに大損害を与えて一時的に使用不能とした。

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13Turn(戦争第2Turn)

イメージ 12トルコ軍が積極的な攻勢を仕掛けてきた。これに対抗すべく、ソ連軍は機動力を有する機械化師団3個、空中機動歩兵旅団2個をトルコ戦線に送り込む。その代わりイラン・イラク国境では前線をユーフラテス川流域の湿地帯まで下げて持久戦に出る。

米軍はシャットゥルアラブ川背後のアバダン(Abadan J1920)を守るイラク軍2個師団に対し、米軍2個師団を主力とする攻撃部隊が猛攻を実施した。2度に渡る攻撃によってイラク軍を完全に撃破することに成功したものの、戦闘結果によって米第9軽自動車化師団(8-9-7)が壊滅した。

軽自動車化師団の壊滅によって戦意を喪失したNATO側は休戦を申し入れ、ここにゲームは終了した。

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感想

イメージ 13外交戦についてはほぼ予想通り。イラクを味方にできたことは予想以上の成果だっと言えよう。ただ、今回はNATO側のミスに助けられた感もある。WP側についても言えることだが、このゲーム、軍事行動は外交よりも優先すべきである。イラン・イラクを味方に引き入れる努力も大事だが、それよりも米ソの精鋭部隊を敵に先んじて中東地域に展開することと一番に心掛けるべきだろう。ソ連軍がイラン侵攻を開始した時、RDFの先遣部隊は未だ米本土で待機していたのだから、米大統領は有識者からの批判を浴びることは確実だ。逆にソ連側としては、米軍の精鋭部隊と交戦することなくイラン南部の油田地帯を制圧できたのだから、僥倖だった。

イメージ 14米ソの直接対決についてもほぼ期待した通りの展開となったが、圧倒的な航空兵力を背景とした米軍の攻撃力は予想以上に強烈だった。下手にスタックするとB-52に叩き潰されるので散開配備を余儀なくされ、防御力が弱まった所で練度と火力に勝る米軍の攻撃を受けた部隊が各個撃破される。正直な所、ゲーム中盤には楽勝ペースだったので、米軍の反撃で次々とWP軍が葬られていく展開には恐怖すら覚えた。天候チェックのダイス目がNATOにとって良くなく、悪天候が続いたことがWPにとっては幸いだった。

このゲーム、WPの機動力が非常に効果的である。NATO側のユニット数が足りないので、戦線を構築できない。勢いNATO側は補給源を中心とした集中防御に頼ることになる。そこで敵の側面を容易に突けるWP軍は、実質的に12移動力で2インパルス移動・戦闘できることになる。逆にNATO側は予備移動をほぼ確実に封じられるので、実質的には6移動力で2インパルスだ。史実の湾岸戦争では大機動戦を展開した西側諸国であったが、本作では逆にWPの機動戦に翻弄されることになる。

プレイ時間はセットアップを含めて7~8時間。外交フェイズのみの期間はサクサク進むが(カードを選んで出すだけなので)、戦争が始めるとそれなりに時間を要する。特に第3次世界大戦が始まると、湾岸戦線とトルコ戦線が発生するので、より時間がかかるようになる。
ゲームとしては面白い。外交戦はシナリオの一種として考えるとゲーム展開にバリエーションを与えてくれる。また戦争が始まった後の展開は、「数のWP」「質のNATO」という形で明確に色分けされており、どちらの陣営も十分に楽しめる。PGを対人戦でプレイするのは今回初めてだが、TTWWシリーズの中では単品ゲームとしての面白さは随一といって良いのではないか。

古いゲームなのでコンポーネントには工夫の余地がある。例えば機動クラスは兵科マークではなく移動力のカラーコードで識別するとか、WP軍の所属軍も数値表記ではなくカラーバーにする等で格段にプレイアビリティが向上すると思われる。国際通信社で再販を望みたい作品であるが、何故か国通はGDWに冷淡なので(被害妄想?)、再販は難しいかもしれない。

でも、期待して待ちたい。

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