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シミュレーションウォーゲーム(以下、SWG)デザインにおけるデヴェロップの重要性について叫ばれて久しい。今回はSWGデザインのデヴェロップの中で重要な要素を占めるテストプレイの在り方について考察してみたい。
なお本稿の目的は、SWGデザインの品質を高めることにある。今回は「欠陥の少なさ」をデザイン品質と捉え、どうすれば欠陥の少ないSWGが可能になるかをテストプレイの視点から考察してみたいと思う。

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解決策

ところで私は第3の解決策があるのではないかと思っている。それは「テストの質を高めて短時間でバグを抽出する」というものだ。

テストプレイで良くある風景に「事前に何も知らない人を集めてテストする」という方法がある。私は、実の所、この方法についてはかなり懐疑的になっている。SWGのテストには、特にコアな層を狙ったヘビーなゲームでは、この手のテストは「バグ抽出に殆ど無力」ではないかと思っている。

無論、この種のテストプレイが有効な場合もある。ライト層を狙った簡単なゲームの場合だ。この種のゲームはゲームとしての奥深さよりも「誰がプレイしてもそこそこ楽しい」といった楽しさが重要になってくる。ただ、私個人的な意見としては、この種のライト系ゲームがSWGの主流になることはないと思っている。

SWGにおけるバグとは何だろうか。色々考えられるが、概ね以下の2つに大別できるのではないかと思う。
(1) ルールが論理的に矛盾している。
(2) デザイナーが意図していないような有効性のある戦略・戦術が存在する。

上記のうち(1)は実の所それほど大きな問題ではないと考える。論理的に完全なコンピュータ様とは違って人間は普段から矛盾に満ちた世界に生きている。従って少々の矛盾であれば自己流に解釈して回避する術を心得ている。SWGの対戦風景で良く見る「ルールの事前確認」は、この種の矛盾解消に有効な対策である。無論、ルールの穴や矛盾を「放置しても良い」と言っているのではない。深刻度の高い矛盾点ならまだしも、自己流解釈で乗り切れる矛盾については、対策の優先度を下げても良いと提言しているだけである。

実の所、SWGのバグの大半は上記(2)ではないかと思っている。分かり易く書けば「必勝法」だ。必勝法が存在する場合、その対策はかなり難しい。論理的な矛盾と異なってそのバグが「デザイナーの意図通りなのかそうではないのか」がわかりにくい。さらにバグの解消法がわかりにくく、自己流解釈での対応が難しい。
この種のバグに対して、先に示したような「初心者が集まってテストする」スタイルのテストプレイでは、バグの検出が難しい。簡単なゲームならまだしも、複雑で労力も必要とするゲームの場合、初見のテストプレイヤーにとってその手のバグを検出するのはかなり敷居が高いと考える。私が本項の冒頭で「何も知らない人を集めてテストしても効果が乏しい」と書いたのは正にこの点である。ゲームやルールを使いこなせるだけの技量がなければ、深刻度の高いバグを見つけることは不可能に近いことだと思うのだ。

このように考えると、不特定多数の人数を使ったテストよりも少数精鋭のテストの方が有効であると御理解いただけると思う。極端な話をすれば、デザイナー自身が一番ルールやゲームシステムに習熟しているのだから、デザイナーによるセルフテストで、かなりの部分バグを検出できると思っている。

ただしこの種のバグを見つけるにはテクニックが必要である。ただ単に「歴史通りに」ユニットを動かしていても、バグは絶対見つからない。ソフトウェアテストと同じだが、バグを見つけるためには、「そこにバグがあるから絶対見つけてやる」という積極的な姿勢と、網羅的にバグを見つけるためのテクニックが必須である。

具体的なテクニックについて考えてみる。なお、以下の方法はあくまでも私が個人的に考えている方法であり、実務での検証行為が終わっていないので有効性については保証できない。

まず最初にすべき事は、歴史的な背景を完全に無視して勝利条件だけを見て「勝利するためには最適な極論的方策」を一方の陣営について考えてみることだ。これを仮に「必勝プランA」と呼ぶ。そして頭の中のシミュレーションでその方法を試してみる。対応する陣営については、様々な方法で「必勝プランA」に対策を考える。この時「必勝プランA」に対する対策がどれも有効でなければ、ゲームシステム又はシナリオを見直した方が良い。有効性があると判断できる対策が見つかれば、次に同じ要領で「必勝プランB」を考える。そして同じように相手側の出方を考察する。このように様々な極論的方策を机上シミュレーションで検証する。机上シミュレーションだけではわからない所は実際に駒を動かしてテストする。
ここでデザイナーが自身以外のテストプレイヤーに求める作業は以下の2つだ。

 (1) デザイナーが思いつかないような「必勝プラン」を他者の視点から見つけてもらう。ここではブレスト的な発散思考が有効だ。
 (2) 机上シミュレーションだけではわからない検証のためのテストプレイのお付き合い

この時、テストプレイヤーにとってのテストプレイの意味も従来とは異なった意味になる。今までのテストプレイでは、テストプレイそのものが品質を担保する手段であった。しかし私が提唱する方法でのテストプレイは、単なる品質担保とは別の意味が出てくる。それは「デザイナー及びテストプレイヤーがゲーム及びゲームシステムに習熟するための準備段階」としての意味だ。本当の意味での品質担保は、ゲームやゲームシステムに習熟した後のブレストの中で行われる。そう考えると、テストプレイヤーを広く浅く広げることの無意味さも理解できると思う。

もうひとつの重要な問題

実はテストプレイを考える際に、もう1つ重要な問題があると考える。それは、対象としている作品が
「様々なバグを乗り越えてでもプレイする価値があるかどうか」
という視点だ。

先にも書いたが、SWGの品質を担保するための有効なな手段は「短時間で終了し、ルールが簡単なゲームを作ること」だ。その有効性は否定しない。しかしそのようなゲームが果たして「様々なバグを乗り越えてもプレイする価値があるか」という視点が欠落したままの議論が横行しているように思える。

Pacific Fleet
ラストギャンブル
地中海キャンペーン
Voctory Roads

これらのゲームはゲームシステムに欠陥があった。しかし(一部は改良された形ではあるが)今でも愛されてプレイされ続けている傑作である。そしてこれらのゲームが内在する欠陥は、様々な有志たちが改善策を提言し続けている。「バグがないゲーム」は勿論重要だ。しかし(バグの有無や手間暇に関係なく)「プレイヤーが"やりたい"と思えるだけの魅力のあるゲーム」をデザインするという視点がなければ、SWGがここまで発展することはなかったし、これからも発展することはないと私は確信している。


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