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不合理-誰もがまぬがれない思考の罠100

スチュアート・サザーランド 伊藤和子/杉浦茂樹訳 CCメディアハウス

「鉄道の旅は道路の旅よりも安全だ。何故なら1年間で鉄道事故で死亡する人よりも、1週間に路上の交通事故で死亡する人の方が多いからだ」
この命題はデータを見る限り結論の部分は正しいが推論過程は間違っている。何故か。それは鉄道や道路を安全に移動できた人数、すなわちネガティブケースが考慮されていないからだ。このように我々が普段考えていることは様々な不合理が満ち溢れており、人間は必ずしも常に合理的に行動している訳ではない。本書ではこれら様々な「合理的ではない人間の行動」を取り上げ、その傾向と原因について考察している。
例えば「人はなぜ群れると無意味な暴力に走るのか」。我々は個々人レベルでは皆正直で善良なのであるが、群れると途端に狡猾で暴力的になる。その理由の1つとして憎悪の感情は伝搬しやすいということ。ある1人の人物が憎悪を抱くと、その憎悪が周辺に広がっていく。さらに集団の中で自分が勇敢であることを示したい者がいれば、その憎悪がさらに拡大していく。
他にも「間違った首尾一貫性」「因果関係の誤り」「過信」「リスクの過小評価」等、我々は常に不合理な決定を行い、不合理な行動を強いられている。
ヒューマンファクターを議論する上で極めて有益な著作と言えよう。

お奨め度★★★★