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何度か紹介しているので繰り返しになるが、自作空母戦ゲーム「海空戦!南太平洋1942」(以下、本作)は、太平洋戦争時における空母対空母の戦いを描いたシミュレーションゲームだ。1Turnは実際の4時間、1Hexは30海里(約55km)に相当し、1ユニットは1隻の艦艇、2~10機の航空機を表す。

今回、その中のシナリオの1本である「珊瑚海キャンペーン」をプレイすることになった。下名は連合軍を担当する。選択ルールは「生存者」を除いて全て採用した。

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「海空戦!南太平洋1942」の概要については-->こちらを参照して下さい。
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前号では連合軍側の作戦研究を紹介した。今回からいよいよ本番である。

1942年5月4日

0600

イメージ 6朝焼けの南太平洋を艦船の群れが進んでいた。空母「ヨークタウン」を中心とする米第17機動部隊である。空母1、重巡4、駆逐艦5の計10隻からなる空母機動部隊は、「ヨークタウン」に将旗を掲げるフランク・J・フレッチャー少将が指揮を執っていた。
現地時間午前6時、レンネル島近海20海里に到達した第17機動部隊は、攻撃隊を発進させた。現地スパイからの報告によると、ガダルカナル北方に浮かぶ要域ツラギに対し、日本軍が上陸を開始し、飛行艇用の基地設営を開始したとのことである。「ヨークタウン」を発進した攻撃隊は2波からなっていた。
第1波攻撃隊は、第5偵察爆撃中隊に所属するSBDドーントレスが18機でそれを8機のF4F-3ワイルドキャット戦闘が掩護していた。また第2波攻撃隊は、第5爆撃中隊のSBDドーントレス18機と第5雷撃中隊のTBDデバステータ9機、それに護衛のF4F-3ワイルドキャット8機からなっていた。
ツラギ上空に到達した彼らが眼下に見たものは、盛んに上陸作業を行っている2隻の輸送船とそれを護衛する数隻の護衛艦艇であった。最初に目標上空に到達した第1波攻撃隊は、散発的な対空砲火を無視して2手に分かれて2隻の輸送船を攻撃した。それぞれ9機ずつのSBDドーントレスに狙われた輸送船は、それぞれ数発の命中弾を受け、抵抗の余地もなく沈没の憂き目を見ることになった。
続いて飛来した第2波攻撃隊は、本命の輸送船が既に沈没していたので、護衛の艦艇を狙った。SBDドーントレスとTBDデバステータの共同攻撃を受けた敷設艦「津軽」が、爆弾数発を食らって轟沈する。護衛の駆逐艦「菊月」は2発の爆弾を受けて中央部から燃え上がった。

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1000

イメージ 7米機動部隊の攻撃は続く。攻撃を避けるためにツラギ西方30海里の地点にまで一旦後退した日本艦隊に対し、空母「ヨークタウン」に帰投した第5偵察爆撃中隊のSBDドーントレスが、再び爆装して襲いかかったのは正午過ぎであった。既に駆逐艦2隻(うち1隻はなおも炎上している)、哨戒艇2隻まで打ち減らされた彼らに対し、18機のドーントレスが容赦なく襲いかかった。これまで無傷であった駆逐艦「水無月」と哨戒艇2隻が相次いで沈没。唯一生き残ったのは中破しながらも航行能力を保持していた駆逐艦「菊月」だけであった。

ツラギ沖での小さな勝利に沸く米軍であったが、すぐに日本軍による手痛い反撃を食らうことになる。ラバウル基地を発進した零戦18機、陸攻54機の計72機からなる攻撃隊が、相次いでポートモレスピーを襲ったのだ。上空警戒に当たっていたのは48機のP-39エアラコブラ戦闘機であったが、彼らは零戦の防御ラインに全く歯が立たず、3機を失って後退していった。また陸攻の爆撃によってポートモレスピー基地は少なからず損傷し、9機のA-24軽爆撃機が炎上又は損傷した。

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東部ニューギニア主要図

1400

ポートモレスピー基地では被害の復旧作業を進めていたが、失われた航空兵力を補充するため、戦線後方のオーストラリア本土からは8機のP-39と9機のB-26マローダー中爆撃機が発進し、ポートモレスピーに向かっていた。

ツラギでは、米空母「ヨークタウン」を発進した攻撃隊が、ツラギの水上基地を襲った。対空砲火によって3機のドーントレスが帰らなかったが、爆撃により長距離索敵能力を誇る97式大型飛行艇3機が炎上。日本軍の長距離索敵能力に少なからずダメージを与えた。

一連の攻撃を終えた「ヨークタウン」は針路を南に変じ、南方から近づいてきた空母「レキシントン」を中核とする第11機動部隊との合同を図った。

1800

ニューブリテン島、セントジョージ水道を見張る連合軍スパイが日本艦隊の南下を報じてきた。位置及び時間から推測して空母部隊である可能性が高い。翌日の空母対空母の対決が予想される。

2200

米艦隊は珊瑚海をひたすら西へ進んでいる。日本側の索敵網を避けるためと、ポートモレスピーに近づきつつある日本船団を叩くためだ。

1942年5月5日

0600

決戦2日目の朝が来た。夜明けとともに両軍の索敵機が活発な活動を開始する。連合軍索敵機の1機が日本艦隊を捉えた。位置は米空母部隊の北北西360海里(12ヘクス)である。隻数や編成は不明であったが、位置から考えて日本空母部隊である可能性が高い。現在の位置では米空母にとってまだ攻撃圏外である。まだ決戦は早いと判断した米機動部隊(フレッチャー少将が統一指揮をとっていた)は一旦南西に退き、日本側の出方を見ることにした。

イメージ 8その頃、ポートモレスピーからは驚愕すべき情報がもたらされていた。空母艦載機と思われる日本機の大編隊がポートモレスピーに飛来してきたのである。P-39戦闘機がこれを迎え撃つ。今回もP-39は零戦の敵ではなく、零戦の損害なしで3機のP-39が失われた。しかし数で優るP-39は、一部が零戦の妨害を突破して艦爆隊を襲った。さらにポートモレスピーから打ち上げられる対空砲火も日本艦爆隊を苦しめた。
この攻撃で飛来した日本機は零戦18機、艦爆54機の計72機であったが、艦爆21機が撃墜され、他に10機が被弾して辛うじて母艦に引き返した。実に出撃機数の半数以上が何らかの損害を被ったことになる。一方でポートモレスピー基地自体は殆ど損害はなし。日本空母機によるポートモレスピー基地攻撃は、少なくともこの時点では失敗に終わったと言って良い。

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イメージ 9しかし日本機の攻撃はこれだけでは終わらない。昨日と同様ラバウルを発進した零戦18機、陸攻54機の編隊がポートモレスピー基地を襲ったのである。48機のP-39は一連の迎撃戦闘に疲れていたが、それでも何機かは果敢に日本機を迎え撃った。零戦や陸攻との空戦で8機のP-39が撃墜され、12機が被弾して基地に引き返した。しかし日本側も無傷という訳には行かず、15機の陸攻が被弾した。ラバウルからの長距離攻撃を強いられた陸攻隊にとって、被弾はほぼ死を意味していた。15機中何とかラバウルへ帰投できた陸攻は僅かに1機のみ。その他14機の陸攻はいずれも自爆又は未帰還扱いとなった。
陸攻隊の爆撃は、空母艦載機のそれよりは効果を発揮した。数発の爆弾が飛行場内に着弾し、9機のA-24軽爆撃機が炎上又は大中破した。


おまけ:P-39とA-24

イメージ 10イメージ 11今回のシナリオで殆ど良い所がなかったのがP-39とA-24の2機種である。しかしその理由は全く異なる。
まずP-39だが、こちらは純粋に性能と出目の問題。中高度以上では零戦相手に空戦力で2負けている。これが大きい。序盤に陸攻を護衛する零戦相手にP-39はしばしば果敢に挑みかかったが、その殆どは惨敗であった。時には3倍の兵力で攻撃しても、零戦に打ち負かされて陸攻に手つかず、ということもあった。その結果、シナリオの後半では、零戦の護衛がついた攻撃隊に対して、P-39が迎撃を見合わすような事態も起こっている。
一方のA-24が活躍出来なかった理由は、序盤の対地爆撃で優先的に「被害担当者」役を引き受けたことにある。また補充ポイントもP-39を優先したため、A-24は早々に戦闘力を失った。しかし、今から考えるとA-24を軽視したのは失敗だったかもしれない。A-24はSBDドーントレスの陸軍版だが、オリジナルのSBDに比べると索敵力と対艦攻撃力がダウングレードされている(機体性能ではなく搭乗員の技量面で)。そう考えると単なる駄作機のようにも思えるが、必ずしも「使えない機体」ではない。というのも、こと対艦攻撃についてはB-25やB-26よりも優秀である。一番のポイントは「急降下爆撃を実施可能」という点で、低空爆撃に依存するB-25/26よりも優位に立っている。急降下爆撃機は当時対空レーダーを持たない日本艦隊にとっては厄介な攻撃スタイルであり、さらに対空砲火に対する生残性も高い。従ってB-25/26よりも対船団攻撃機としては「使える」存在なのである。


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