自作空母戦ゲーム「海空戦、南太平洋1942」(以下、本作)。今回は、追加シナリオである真珠湾シナリオについて紹介する。
このシナリオは、2019年5月26日のゲームマーケット春で発売予定の「雑誌、海空戦No.2」に収録予定である。

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「海空戦、南太平洋1942」の概要については-->こちらを参照して下さい。
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前号まで

真珠湾攻撃シナリオである。史実通りだと一方的すぎるので、史実をややアレンジし、仮想戦とした。すなわち米側の防御態勢を史実よりもやや強化し、さらに実際には真珠湾近海にいなかった「レキシントン」や「サラトガ」機動部隊も真珠湾近海にいたものとする。従って日本軍にとっては、史実よりもやや厳しい状況としている。

第1Turn。日本軍はほぼ史実通りの攻撃編成で真珠湾に襲い掛かった。しかし戦果は史実を遥かに下回るものとなり、戦艦5隻が中小破したに過ぎなかった。それに対して米艦隊もすかさず反撃を実施する。偶々ハワイ北方を遊弋中の米空母2隻から攻撃隊が発進する。米空母機の攻撃によって南雲機動部隊は空母「蒼龍」「飛龍」が中小破した。
開戦2日目、日米の空母がハワイ北方海域で激突する。先手を取った日本艦隊は米空母に対して攻撃を実施した。空母「エンタープライズ」「サラトガ」が日本空母機の猛攻を受けて海の藻屑となる。残った米空母は「レキシントン」のみ。しかし日本艦隊もハワイからの基地機と「レキシントン」艦載機の反撃を受けて大きな損害を出していた。新鋭空母「翔鶴」「瑞鶴」が大破。「赤城」「加賀」の2艦も損傷を被ったが、それでもこの2艦は未だ航空機の運用が可能な状況であtった。

前号の詳細は-->こちら

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12月8日(承前)

1400

イメージ 4既に日本艦隊は真珠湾を再攻撃する能力を失っていた。6隻の空母のうち、第2航空戦隊に所属する中型空母2隻は昨日の戦闘で戦闘能力を失って北方へ離脱中。第5航空戦隊の所属する2隻の新鋭空母は大中破して航空機運用能力を完全に失っていた。第1航空戦隊に所属する大型空母2隻だけは未だに航空機運用能力を残していたが、稼働機数は著しく減少し、現在使用可能な艦載機は以下の通りであった。

 零戦 18機
 艦爆 13機
 艦攻 50機

合計81機。空母1隻分の兵力に過ぎない。護衛兵力も戦艦2隻、重巡2隻、駆逐艦7隻の計11隻に過ぎず(他に軽巡1隻、駆逐艦1隻が「蒼龍」「飛龍」を守って北方へ離脱中)、ハワイ周辺で行動中の米水上部隊と比べて著しく劣っていた。何しろハワイ周辺で行動中の米艦隊は、空母「レキシントン」の他、戦艦2隻、重巡9隻、軽巡4隻、駆逐艦37隻の計53隻もの兵力に達していたのだから。
このような状況下で日本艦隊にできる事は限られていた。全力で安全圏へ撤退することである。西へ向けて全力航行する日本艦隊。それを追う米艦隊。両者の距離は今や120海里まで迫っていた。30ノットの高速艦なら僅か4時間の距離である。

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イメージ 5米軍機のよる追撃も続いている。オアフ島を発進した旧式のB-18爆撃機は南雲艦隊上空に到達したものの、零戦の迎撃を受けて壊滅してしまう。
次に飛来したB-17 9機とA-20 13機の混成編隊が南雲部隊を奇襲。空母「加賀」に1弾を命中させて「加賀」の傷を広げる。
最後に飛来した「レキシントン」のF2Aバッファロー8機、SBDドーントレス18機の計26機だが、これは零戦の迎撃を受けて壊滅的な損害を被り撃退された。

1800

イメージ 6夕闇が迫っている。敵水上部隊の追撃をまくため日本艦隊は速度の低下した「翔鶴」と駆逐艦1隻を分離する。速度の落ちた「翔鶴」を米潜水艦が追う。魚雷が「翔鶴」目指して発射されたが、惜しくも外れ。

2200

イメージ 7このTurn終了時に日本軍のサドンデス負けが決定した。仮にこのまま続けていた場合、速度の落ちた「翔鶴」は米水上部隊に捕捉されて護衛と共に撃沈させられること間違いなし。残る南雲部隊も敵水上部隊の追撃を躱しきれるかどうか、かなり怪しい状況である。

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結果

日本軍の損害

沈没:甲標的1ユニット
大破:空母「翔鶴」「瑞鶴」「飛龍」
中破:空母「赤城」「加賀」「蒼龍」
航空機(ユニット数):5.5x零戦、5.5x99艦爆、3x97艦攻、0.5x零式三座水偵、合計14.5ユニット(130機)

連合軍の損害

沈没:空母「サラトガ」「エンタープライズ」、重巡「チェスター」
大破:軽巡「ヘレナ」
中破:戦艦「アリゾナ」「ウェストバージニア」「カリフォルニア」「メリーランド」
小破:戦艦「テネシー」
航空機(ユニット数):1xP26、2xP40、1xB18、3xF4F、1xF2A、8xSBD、2xTBD、1xPBY、計19ユニット(164機)

VP

日本:162VP、連合軍:286VP

感想

日本軍にとって辛い展開になったが、本来真珠湾攻撃は投機的かつ危険性の高い作戦であった。そういった意味では筆者にとっては嬉しい展開だっといえる。一見優勢に見える空母機動部隊が、敵基地の制空権下では如何に脆い存在であるか。史実のMI作戦がその事を事実を以て証明しているが、本シナリオはそれを実感できるようになったと思う。
気になるのは、今回のテストで真珠湾攻撃時の対艦攻撃戦果が小さすぎること。戦艦2隻撃沈ぐらいは行けると踏んでいたのだが、実際には撃沈ゼロで中小破5隻のみ。史実に比較するとあまりに寂しい戦果である。
後で計算してみたが、97艦攻1ユニットあたりの平均ヒット数は1.8~1.9である。浅深度魚雷を装備した97艦攻は10ユニット。従って平均値通りなら18~19ヒットが期待できる。出目が悪いとどうしようもないが、その時は日本軍プレイヤーに諦めてもらうことにしよう。
逆に日本軍の出目が走った場合、最初の艦攻隊による攻撃で戦艦4隻沈没ぐらいの被害は出るかもしれない。地上基地の損害と急降下爆撃機による艦船被害(巡洋艦3~5隻程度)を加えると、日本軍が獲得するVPは最大で200VPを超えるかもしれない。ただしサドンデスを宣言するには不十分な数値なので、日本軍は勝ち逃げできず、従って戦いは続くことになる。

いずれにしてもこのシナリオは「史実に潜む別の可能性」を楽しむためのシナリオである。勝利条件を重視しつつ、それだけには拘束されない大らかな気持ちでプレイして頂ければ幸いである。