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Frederic the Great(邦題「フリードリヒ大王」、以下本作)は、1975年にSPI社から発表されたシミュレーションゲームである。プロイセンのフリードリヒ大王がオーストリア、フランス、ロシア等と戦った7年戦争を1シナリオ1年で再現する。本作は、その後Avalon Hill社から再版され、そのライセンス版が日本でもHobby Japanから発売された。私が今手元に持っているのは、そのHobby Japan版である。

システムはシンプルだが、ユニークな点もある。シークエンスは移動、強行軍、戦闘となっているが、強行軍は非フェイズプレイヤーが行う。戦闘は同一ヘクス戦闘である。移動と戦闘の間に強行軍が挟まっている所がミソで、非フェイズプレイヤーは敵が同一ヘクスに侵入してきても、強行軍で離脱できる。従って敵に野戦を強要したい場合は相手側プレイヤーTurnの強行軍で敵ヘクスに侵入する必要がある。
移動については、ダイス目+指揮能力(ただし移動力の上限は6)で、指揮能力3のフリードリヒ大王なら4移動力以上が保証されているが、指揮能力0のバカ殿なら1移動力になってしまうかもしれない。他に攻城戦や補給に関するルールがあるが、いずれもシンプルである。

まず本作の感触を掴むため、一番簡単そうなシナリオ1「1756年シナリオ」をVASSALでソロプレイしてみた。このシナリオは、フリードリヒ大王による神聖ローマ帝国(ザクセン)攻略戦である。史実では勝利を収めた大王だが、果たして・・・。

セットアップ

今回の戦場は、現在のドイツ東南部からチェコ、オーストリア一帯である。フリードリヒ大王側(プロイセン軍)は、マグデブルグ(Magdeburg 2217)にフリードリヒ大王(Federich 3-3-2(1)、指揮能力-攻撃修正-防御修正(指揮順位)、以下同じ)麾下計19戦力を有し、シレジア方面にはシュヴェーリン(Schwerin 1-1-2(2))麾下21戦力が広く散開配備されている。
対する反プロイセン同盟軍(以下、同盟軍)は、神聖ローマ帝国軍がドレスデン(Dresden 1623)とトルガウ(Torgau 1821)にルトウスキ(Rutowski 0-1-0(1))麾下9戦力。オーストリア軍はブラウン(Browne 2-2-2(3))麾下計32戦力がオーストリア領内に広く展開している。
総兵力ではほぼ互角だが、国籍にばらつきがあって指揮能力も劣る同盟軍の不利は明らかだ。その代わり、ゲーム開始時点で獲得しているVPは、プロシア軍が45VPで同盟軍が50VP。従って攻撃の義務はプロイセン側に課される。

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9Turn(1756年8月後半)

(このシナリオは9Turnから始まる)
フリードリヒはマグデブルクを進発してドレスデンへ向かう。またシレジア方面ではブレスラウ周辺のプロイセン軍が集結してオーストリア軍北上に備える。
オーストリア軍はブラウン麾下で兵力を集結させてシレジアを伺う。またザクセン方面では、フリードリヒ接近の報を受けてルトウスキが早くもドレスデンを放棄した。

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10Turn(1756年9月前半)

フリードリヒ軍が二手に分かれてトルガウとドレスデンを包囲する。それぞれ攻城戦を試みたが、出目振るわず両方とも陥落せず。補給切れを避けるために強行軍を利用してフリーリヒは後退する。
一方の同盟軍は、シレジア西方のプロイセン補給基地をブラウン麾下のオーストリア軍が蹂躙に成功。補給基地を捕獲した。

11Turn(1756年9月後半)

再びプロイセン軍がトルガウとドレスデンを包囲する。今度はトルガウが陥落した。しかしドレスデンはなおも持ちこたえている。一方同盟軍は膠着した状況を打破すべくシレジア方面で攻勢を仕掛けた。ブラウン麾下の21戦力がシュヴェーリン麾下の15戦力と激突する。場所はシレジア地方シュフィドニツァ(Schweidnitz 1631)。兵力は同盟軍がやや強力だが、実質的にはほぼ互角である。攻撃を仕掛けたのはもちろん同盟軍である。戦闘結果はプロイセン軍の守り勝ち。同盟軍は3戦力を失い、1戦力が捕虜になった。プロイセン軍の損害は1戦力のみである。

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12Turn(1756年10月前半)

フリードリヒが東へ向けて進撃。シレジア地方に入った。オーストリア軍のブラウン将軍は、シュフィドニツァでの敗戦にも関わらず再びシレジアに向けて兵を進めてきたが、フリードリヒ軍の姿を見て南下後退していく。
逆にフリードリヒの不在を狙ってザクセン軍がドレスデンを解放。ルトウスキがドレスデンに入城する。

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13Turn(1756年10月後半)

プロイセン軍はドレスデン奪回に出る。プロイセン軍フェルディナンド(Ferdinand 1-1-2(3))麾下の6戦力がドレスデンに急行する。ドレスデンに布陣するルトウスキは強行軍により撤退する手もあったが、ドレスデンを放棄してもジリ貧になるのは目に見えているので、フェルディナンドの挑戦に応じることにした。ほぼ同戦力での「ドレスデンの戦い」は、指揮能力に勝るフェルディナンドの勝利に終わり、ルトウスキ率いるザクセン軍は少数の守備隊を残してドレスデンから叩き出される。

フリードリヒ直率の5戦力も急遽ザクセン方面に引き上げてきたが、フェルディナンドがルトウスキを撃破したので目標を失った。そこへプラハ(Prag 1125)から出撃してきたセルベロニ(Serbeloni 0-1-1(5))麾下の5戦力が攻撃可能範囲に入ってきた。強行軍でセルベロニを追うフリードリヒは、プラハ北東でセルベロニを捕捉した。兵力、指揮能力で勝るフリードリヒはセルベロニ軍を文字通り殲滅し、セルベロニ自身をも捕虜にした。と、そこまでは良かったのだが、最前線で指揮をとるフリードリヒに流れ弾が・・・。戦闘結果表にひっそりと"L"と書かれているではないか・・・。大王が死ぬとプロイセン軍がサドンデスで負けてしまう。

・・・・・

「なかったことにしよう」

という訳で「実はそこにいた」ことになったプロイセン軍マウリス将軍(Maurice 0-1-1(6))が大王の弾除けになって散華した。哀れ・・・。

<<教訓>>
リーダーは可能な限り2人以上で行動し、戦死の結果が出た時に「弾除け」に使うべし。

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14Turn(1756年11月前半)

フリードリヒは東へ向けて進撃する。ドレスデンのザクセン軍守備隊は降伏し、ドレスデンは再びプロシア軍の支配下となった。オーストリア軍はシレジアで限定攻勢を実施。ナイゼ(Neisse 1434)要塞を攻撃してこれを開城せしめた。

15Turn(1756年11月後半)

フリードリヒが東に向かうのを見てブラウンはナイゼに守備隊を残して撤退する。そして今度はプラハ方面へ向けて進撃を開始する。フリードリヒは兵力の半数を自らが率いてブラウンを追う。

16Turn(1756年12月前半)

冬になった。冬季損耗が両軍を苦しめる。ブラウン将軍は雪の中、ドレスデンを包囲攻撃。フリードリヒも反転しブラウンを追うが、間に合わない。ブラウン軍の攻撃でドレスデンは陥落した。

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17Turn(1756年12月後半)

フリードリヒはドレスデンに突入する。ブラウンはフリードリヒとの戦闘を避けて南へ撤退する。ドレスデン攻囲戦はプロイセン軍の勝利に終わり、ドレスデンは三度プロイセン軍の軍門に下った。

18Turn(1757年1月前半)

最終Turnである。ブラウンがフリードリヒの隙をついて再びドレスデンを包囲する。しかし今回は攻略に失敗した。ドレスデン郊外のブラウン軍は冬の寒さに震えていた。また同じ頃、野外冬営を余儀なくされていたルトウスキ率いるザクセン軍残存部隊は、極寒の中、雪に押しつぶされるように消えていった。

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結果

プロイセン軍

要塞確保:55VP
兵力損耗:13戦力(-13VP)
計:42VP

同盟軍

要塞確保:40VP
兵力損耗:オーストリア軍14戦力+捕虜3戦力、ザクセン軍7戦力+捕虜2戦力(-31VP)
計:9VP

プロイセン軍の決定的勝利

感想

戦闘結果表にクセがあるので要注意だ。兵力の損耗が自軍兵力を基準としたパーセント計算なので、集めすぎると損耗が大きくなり合戦に負けやすくなる。5の倍数で組むのが良い。また敵兵力を見て1:1を超えるオッズが立たない場合は、丁度1:1になるように兵力を揃えるのが良い。なかなか上手くは行かないが・・・。

このシナリオに関してはプロイセン軍が有利だと思う。同盟軍の戦い方にも工夫の余地はあるとは思うが、プレイする場合には初心者がプロイセン軍、ベテランが同盟軍を担当し、インストするのが良いと思う。プロイセン軍は結構気持ちよくプレイできるはずだ。

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