「走れパットン」は、1985年にアドテクノスから発表され、21世紀に入ってGame Journal誌で再販されたシミュレーションゲームである。第2次大戦欧州戦線で勇名を馳せた合衆国陸軍パットン将軍の活躍をゲーム上で描いた作品で、シシリー、アブランシェ、バストーニュ、そして架空戦のプラハ(米軍とソ連軍が激突する)の4つのシナリオがそれぞれ共通のシステム、個別のスケールで描かれている。

ゲームの基本システムはシンプルで、基本的には移動・戦闘の繰り返し。2次移動等はない。戦闘解決はメイアタック。戦闘後前進は1ヘクスのみ。補給あり。まあこんなところだ。

本ゲームのシステムで特徴的なのは、まず支援攻撃ルールがある。航空機や砲兵による支援攻撃を再現したものだが、移動開始前に実施される。支援射撃の結果は、効果なし、混乱、除去の3種類がある。混乱の結果が出ると、目標ユニットは移動、攻撃が不可能になり、防御力半減の上、ZOCを失う。従って支援攻撃で防御側を混乱させた後敵のユニットをすり抜けて後方に回り込み、敵を包囲攻撃で殲滅する。これが本作における基本的な攻撃パターンだと思う。

今回、「走れパットン」の中からバストーニュ攻防戦をソロプレイしてみた。以下はその記録である。

セットアップ

このゲームはバルジの戦いが始まってから約1週間が経過した12月24日、すなわちクリスマスイブから始まる。バストーニュに籠る米第101空挺師団はドイツ軍に包囲され、ドイツ軍は3個師団を基幹とする兵力でこれを攻め落とそうとする。独軍の兵力は、第26国民擲弾兵師団、第5降下猟兵師団、第15装甲擲弾兵師団と、総統擲弾兵旅団、戦車教導師団の1個連隊、第352国民擲弾兵師団の1個連隊である。ドイツ軍は第26国民擲弾兵師団と第5降下猟兵師団、さらに総統擲弾兵旅団ににバストーニュー攻略を担当させ、残りは北上してくる米軍増援部隊に備える。

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米軍は第101空挺師団と若干の付属部隊がバストーニュで包囲され、マップ南端から2個戦車師団と1個歩兵師団が登場する。米軍としてはバストーニュが陥落する前に救援部隊をバストーニュに突入させたい。

1Turn(44/12/24AM)

パットン第3軍が増援のために登場する。パットン軍は最強の第4機甲師団を戦線右翼を進ませて森林地帯からバストーニュ東方を目指し、第9機甲師団は戦線左翼を進ませて南からバストーニュに直撃を狙う。パットン自身は第4機甲師団と共に前進する。第4機甲師団の攻撃でドイツ軍第352国民擲弾兵師団が1ユニットを失い、戦線に穴が開く。
一方のドイツ軍はバストーニュ包囲網の外側から攻撃を開始。支援攻撃で混乱状態とした敵の間隙を縫って2個部隊スタックを包囲攻撃。2-1攻撃でDRを出し、これを撃破するに成功した。

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2Turn(44/12/24PM)

米軍は最前線のドイツ軍スタックに支援射撃を集中。これを混乱状態とした上で包囲攻撃を実施する。しかし2-1の攻撃は見事に失敗。逆に最前線に残った米自動車化歩兵2個がドイツ軍の逆包囲を食らったが、これも何とか耐えた。
戦線右翼を進む米第4機甲師団は、パットン将軍の指揮のもと敵中へ突進。補給切れも何のその。Willtz(2310)付近で独第352国民擲弾兵師団司令部が単独で守っているのを捕捉した。猛烈な攻撃でこれを撃破する。
バストーニュではドイツ軍が激しい支援射撃を浴びせた上で突進攻撃を実施。支援攻撃は今一つ効果はなく、3ヵ所で実施した2-1攻撃も1ヵ所でDDを出して米軍1ユニットを撃破したのみ。それでもドイツ軍の一部はバストーニュ中心に接敵し、バストーニュの運命は風前の灯である。

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3Turn(44/12/25AM)

米軍は、戦線左翼の第9機甲師団が相変わらずモタモタして前進できない。挙句の果てには航空機による支援が誤爆となり、友軍の部隊はそれにより混乱してしまったのである。悪いことは重なるもので、ドイツ軍の砲兵射撃がクリーンヒットとなり米軍2個ユニットがスタックごと蒸発。包囲網に穴が開いたのでそこから包囲されていたはずのドイツ装甲擲弾兵がするすると逃げていく。
戦線左翼の第4機甲師団は順調に前進。孤立していた独軍部隊1個を包囲殲滅した後、バストーニュ東側に抜ける機会をうかがう。
そのバストーニュではドイツ軍の包囲攻撃を受けて米軍2ユニットが壊滅。バストーニュに残る米軍ユニットは、あと14個。

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4Turn(44/12/25PM)

第4機甲師団が前線の間隙を縫いてバストーニュに方面に向けて突進する。単独でいた独第26国民擲弾兵師団司令部を攻撃してこれを撃破した。しかしドイツ軍も黙ってはいない。突出してきたパットン機甲部隊を総統擲弾兵旅団その他で包囲攻撃。これには何とか耐えるパットン。

5Turn(44/12/26AM)

パットンは包囲を解こうと総統擲弾兵旅団に対して反撃を試みる、が、出目が最悪の1だったので包囲の輪は解けない。それでも「パットン効果」によってスタックしている2個戦車大隊を回復させたのは流石である。
戦線左翼の米第9機甲師団戦区では、砲爆撃による混乱と、その後の突破、包囲攻撃が理想的な形で決まった。第15装甲擲弾兵師団と戦車教導師団の連合スタックが吹き飛ぶ。
さらにバストーニュに対する圧力が弱まったのを見たバストーニュ内部の米軍が反撃開始。ドイツ軍1個を後退させて地積を確保する。
ドイツ軍は第267国民擲弾兵師団が増援として登場する。またドイツ軍がバストーニュで実施した2-1攻撃が見事に成功(成功率1/3)。米軍守備隊2ユニットが撃破された。バストーニュの守備隊は残り8ユニット。そろそろやばいぞ。ナッツの諸君。

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6Turn(44/12/26PM)

米第26歩兵師団の先遣隊がバストーニュに突入。バストーニュで包囲されている第101空挺師団と握手した。しかしドイツ軍もさるもの。直ちに反撃して両者の連結部を撃破する。その過程で米第26歩兵師団の司令部が壊滅。バストーニュの命運は如何に・・・。
ちなみにこのTurn、米軍の第35歩兵師団が増援として登場する。

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7Turn(44/12/27AM)

米軍はバストーニュを解放すべく強引な包囲攻撃を実施する。しかし出目に恵まれずドイツ軍の撃破に失敗。逆に敵中に突出した第4機甲師団は、ドイツ軍の包囲攻撃を受けて壊滅した。パットン将軍は這う這うの体で逃げだす。

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8Turn(44/12/27PM)

米軍の攻撃は先細りの感があり、それに対してバストーニュ市街の米軍は風前の灯である。このTurn、またもや米軍2個が壊滅し、遂にバストーニュ市街ヘクスのみが米軍に残された最後の場所になった。

この段階で米軍の勝利がほぼ不可能になったので、一旦打ち切りとした。

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感想

まずルール間違いについて。混乱状態だと防御力半減というルールをすっかり失念していた。これがあれば米軍がこれほどボロ負けすることはなかったと思う。
米軍の攻め方が不味かった。チャンスで包囲殲滅するという狙いは悪くないのだが、失敗した場合のリスク管理は慎重にすべきであった。一番不味かったのは第26歩兵師団の司令部を失ったこと。司令部を失った場合、部隊に補給を与えることができなくなるので、米軍の強みが生かせなくなる。司令部がやられることがないように戦うべきであった。
また兵力を分散したこともまずかった。ドイツ軍の防御力分散を狙った作戦だが、支援火力に勝る米軍の場合、小細工よりも力攻めの方が正解だったかもしれない。

もう少しマシなプレイを、と思って今回は終了しよう。