イメージ 16

「走れパットン」(以下、本作)は、1985年にアドテクノスから発表され、21世紀に入ってGame Journal誌で再販されたシミュレーションゲームである。第2次大戦欧州戦線で勇名を馳せた合衆国陸軍パットン将軍の活躍をゲーム上で描いた作品で、シシリー、アブランシェ、バストーニュ、そして架空戦のプラハ(米軍とソ連軍が激突する)の4つのシナリオがそれぞれ共通のシステム、個別のスケールで描かれている。

本作の基本システムは、過去の紹介記事を参照されたい。

今回、「走れパットン」の中からバストーニュ攻防戦を再びソロプレイしてみた。以下はその記録である。

セットアップ

このゲームはバルジの戦いが始まってから約1週間が経過した12月24日、すなわちクリスマスイブから始まる。バストーニュに籠る米第101空挺師団はドイツ軍に包囲され、ドイツ軍は3個師団を基幹とする兵力でこれを攻め落とそうとする。独軍の兵力は、第26国民擲弾兵師団、第5降下猟兵師団、第15装甲擲弾兵師団と、総統擲弾兵旅団、戦車教導師団の1個連隊、第352国民擲弾兵師団の1個連隊である。ドイツ軍は第26国民擲弾兵師団と第5降下猟兵師団、さらに総統擲弾兵旅団ににバストーニュー攻略を担当させ、残りは北上してくる米軍増援部隊に備える。

イメージ 1


1Turn(44/12/24AM)

前回の失敗を鑑み、米軍は3個師団を同一戦線に集中投入して突破を図る。ドイツ軍は二重戦線を張って大突破を防ぐが、米軍の攻撃によって2ユニットを失う。
バストーニュ正面ではドイツ軍の砲爆撃が炸裂。2個ユニットが混乱状態となり、戦線に穴が開いた。包囲攻撃を受けて4ユニットが壊滅。早くもバストーニュ守備隊はバストーニュから1ヘクス以内に押し込まれる。

イメージ 2

イメージ 3


2Turn(44/12/24PM)

南方からバストーニュに近づく米軍3個師団は、パットン麾下の第4機甲師団の攻撃によってさらにドイツ軍の1個大隊を撃破する。バストーニュではドイツ軍による砲爆撃は失敗。しかし2ヵ所で実施した直接攻撃は1ヵ所が成功。バストーニュ守備隊1ユニットが壊滅した。そしてドイツ軍はいよいよバストーニュに迫る。

イメージ 4


3Turn(44/12/25AM)

ドイツ軍の砲爆撃がさく裂してバストーニュ守備隊の1スタック(2ユニット)が瞬殺される。他の1スタックも砲撃を受けて混乱したところを包囲攻撃を受けて壊滅した。ドイツ軍はバストーニュ市街前面に迫ってくる。しかし南方から近づくパットン第3軍もバストーニュ外周防衛線から3ヘクスの距離まで肉薄してきた。バストーニュを巡る競争はどちらが勝者か?。

イメージ 5


4Turn(44/12/25PM)

パットン第3軍がバストーニュ南方のドイツ軍を撃破し、バストーニュ守備隊と手をつないだ。しかし時すでに遅し。バストーニュ市街地に対して猛砲撃を加えていたドイツ軍は、在守備隊を混乱状態にせしめて防御力を半減せしめた後、7-1の比率で万全の態勢で攻撃を仕掛けてきた。バストーニュ市街地を守る米軍部隊は壊滅。第101空挺師団司令部もドイツ軍の餌食となり、第101空挺師団は事実上壊滅した。

イメージ 6


5Turn(44/12/26AM)

米軍はバストーニュ奪回の攻勢に出る。米第4機甲師団の攻撃を受けてドイツ第26国民擲弾兵師団は2ユニットを失う。しかしドイツ軍も第4機甲師団に向けて反撃を実施。砲撃によって混乱を強いられた2ユニットが退路を失って壊滅した。

イメージ 7


6Turn(44/12/26PM)

バストーニュ前面で砲兵火力を集中した米軍が反撃を実施。2ユニットを包囲して殲滅。他2ユニットをパットン麾下の攻撃によって撃破した。独軍は戦線を後退させて米軍と離隔する。

イメージ 8


7Turn(44/12/27AM)

米第4機甲師団がバストーニュを奪回した。さらに戦線右翼からは新登場の米第35歩兵師団が北上し、独軍の左翼を圧迫する。ドイツ軍も機甲兵力による反撃を企図するが、米軍はスキを見せない。

イメージ 9


8Turn(44/12/27PM)

第4機甲師団先鋒がマップ北端に到達した。砲爆撃で戦線に突破口を穿った米軍は、戦線後方の総統擲弾兵旅団(FG)司令部を攻撃し、これを撃破した。ドイツ軍はその総統擲弾兵旅団を使って突破してきた米軍機甲部隊に対して反撃を実施した。比率3-1でリスクのある攻撃であったが、攻撃は成功し、米機甲部隊2ユニットが撃破された。

イメージ 10


9Turn(44/12/28AM)

米軍はさらにドイツ軍を追い詰めて4ユニットを撃破した。ドイツ軍は反撃のための兵力がないが、後退する地積もない。黙って耐えるだけだ。しかし次のTurnに増援が来る。次のTurnに・・・。

イメージ 11


10Turn(44/12/28PM)

米軍は既に残敵掃討モードに入っている。強行と包囲攻撃で6ユニットを撃破した。しかしドイツ軍にもようやく増援部隊が登場する。総統護衛旅団(FE)に所属する装甲部隊4ユニットだ。米軍戦線左翼を守る米第26歩兵師団を攻撃。2ユニットを撃破して突破口を穿った。

11Turn(44/12/29AM)

米軍は左翼戦線を再構築する。そのためこのTurnは攻撃を行わず、全体的に戦線を整理した。
ドイツ軍は強力な第1SS装甲師団が登場。攻撃のための布陣をしく。

イメージ 12


12Turn(44/12/29PM)

米軍の最後の増援である第11機甲師団が登場する。戦線左翼を守る米第26歩兵師団、さらに戦力が半減した米第4機甲師団、第9機甲師団が戦線左翼を守る。ドイツ軍も第1SS装甲師団を前進させて米軍と接触。次ターンからの総攻撃に備える。

イメージ 13


13Turn(44/12/30AM)以降

ここから残り4Turnの経緯は簡単に記したい。VPで劣勢に立つドイツ軍は、増援の第1SS装甲師団を中核として反撃を試みる。しかし兵力及び補給力で劣るドイツ軍による反撃は自殺行為に等しく、第1SS装甲師団は突破口を穿つどころか、逆に米軍の反撃を受けて立ち往生する始末であった。結局ドイツ軍は一部を残して敗退を余儀なくされ、ここにバストーニュを巡る戦いは米第3軍の勝利に終わった。

イメージ 14


感想

システムはシンプルだが、かなり癖のあるものだ。支援攻撃と戦闘後の強制損耗が本作(及び本システム)のウリだが、そのために普通のゲームとは少し異なったプレイスタイルを要求される。
まず本作では先制攻撃が必ずしも有利ではない。何故なら先制攻撃を実施する場合、自軍の支援攻撃の威力は制限され(移動開始前に敵に隣接していないと砲兵射撃は使えない、空爆は可能)、さらに損耗していない敵と戦うことにためオッズが立ちにくい。一方で戦闘に勝利しても自軍は強制損耗する上、戦闘後前進も強制されるため敵中に取り残される危険もある。従って続く敵側の反撃に対して極めて脆弱になる。
無論、敵が反撃してきた場合、今度は敵側にも同じ不利が適用されるため、敢えて不利な先制攻撃を行って敵の反撃を誘い、反撃によって弱体化した敵に対して本命の攻撃をぶつける、といったような駆け引きが発生する余地がある。その点は興味深い。

気になった点はやはりプレイ時間だ。ハーフサイズのマップと比較的少ない数のユニットでプレイできることから一見すると「手軽なゲーム」に思えるが、全16Turnはやはり長い。慣れればサクサク進むのでそれほど気にならないが、それでもプレイを始める際の精神的障害にはなる。無論本作が発売された1980年代では今よりもウォーゲームの数は遥かに少なかったので、スモールサイズのゲームに対しても高いゲームヴァリューを求める傾向が強かったのかもしれない。
後はスモールげーむの常なのだが、ダイス目の影響が大きい。特に支援攻撃は効果が大きい(当たればZOCが消えて防御力半減、場合によっては1発でスタック全滅もある)ので、そのダイス目によって戦局が大きく動く可能性がある。

何はともあれ、アルデンヌ戦後半のパットン反撃を扱った作品自体があまり多くはなく、その殆どが所謂「バルジゲーム」のシナリオ扱いになっている。そういった意味で、パットン反撃を単独でゲーム化した本作の意義は大きく、現在でもプレイする価値は十分にある作品だと考える。

イメージ 15