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牟田口廉也とインパール作戦

関口高史 光文社新書

本書は、日本陸軍の中でも悪名高い牟田口廉也と彼のインパール作戦における戦いを再評価した著作である。本書は基本的に牟田口廉也を擁護するために書かれた著作と言えるもので、世評における牟田口評をほぼ完全に否定する。
牟田口が批判されるのは、何と言ってもあの悲惨なインパール作戦を指揮し、大敗を喫したからである。無論太平洋戦争の中ではインパール作戦に比すべき悲惨な戦いがいくつもあり、ニューギニア、フィリピン、沖縄等の戦い等は、死者数においてインパール作戦を凌駕する。しかしインパール作戦とこれらの作戦の違いは、インパール作戦は専ら日本側が望んで起こした戦いだということ。従って、ある意味「必要がなければ実施しなくても良かった」戦いと言える点だ。牟田口が批判されるのは、「やらなくても良い作戦」を強引に推し進め、「止めれば良いのに」止めずに被害を拡大した点にある。その点を本書はどのように評価しているのか。
筆者の主張によれば、インパール作戦は大本営も含めた日本陸軍の総意であったとしている。従って牟田口個人に責任を擦り付けるのは間違いだとしている。さらに作戦の失敗については、牟田口自身は作戦完遂のために尽力したにもかかわらず、無責任な参謀や部下たちが足を引っ張った、とのこと。
筆者の主張をどう感じるかは読者次第だが、私自身はやや過剰な「牟田口擁護」が気になった。ただ、読んでいて面白い本だったことは確かだ。

お奨め度★★★★