もりつちの徒然なるままに

ウォーゲームの話や旅の話、山登り、B級グルメなどの記事を書いていきます。 自作のウォーゲームも取り扱っています。

2007年01月

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補給戦 何が勝敗を決定するのか

マーチン・ファン・クレフェルト 佐藤佐三郎訳 中公文庫

過去から現在にかけて、戦史における補給戦の意味について分析した著作です。本書は8章構成になっています。1~7章は戦史研究で、過去の戦史における補給戦のあり方について時代別に分析しています。

1.16~17世紀の略奪戦争
この時代はいわゆる「補給線」の概念はなく、軍隊はその補給を現地調達(略奪)により依存していました。当時の軍隊は略奪を続けていくために定期的に移動する必要があり、そのことが長期に渡る攻城戦の足枷になっていました。
2.軍事の天才ナポレオンと補給
アウステルリッツ会戦とロシア遠征をテーマにナポレオン時代の補給について考えています。
3.鉄道全盛時代のモルトケ戦略
1870年の普仏戦争を中心に、大モルトケの兵站術について考えています。この戦いは「近代的な補給線が確立された最初期のもの」というのが一般の評価ですが、それに対する筆者の評価は冷淡です。
4.壮大な計画と貧弱な輸送と
WW1のドイツ軍をテーマにしています。この時期の特徴は、補給物資における「食料」と「弾薬」の重量比が逆転し、最早現地調達で補給を維持することが不可能になったことです。しかし当時の補給能力は、軍隊の供給を満足するにはあまりに不十分でした。そういった観点を踏まえて筆者はシュリーフェン計画についても再検討しています。
5.自動車時代とヒットラーの失敗
いわゆるバルバロッサ作戦について、ドイツ側の兵站状況から見た視点から評価しています。その中で筆者はモスクワ正面に攻勢戦力を集中する案は兵站面から不可能とし、さらに中央軍集団の南方旋回については「全く正しい」としているのは興味深い所です。
6.ロンメルは名将だったか?
兵站面から北アフリカ戦役におけるロンメルの活動を手厳しく批判しています。
7.主計兵による戦争
WW2の西部戦線連合軍を扱っています。この戦いは今までのものとは違ってほぼ「理想的な」兵站活動の元で軍事行動が行われました。しかし連合軍の活動は緩慢であり、兵站面での優位を生かしきれませんでした。ここで筆者は兵站の有無のみが軍事行動を決定する訳ではなく、時には指揮官の強い決断力といったヒューマンファクターが重要になってくる、としています。ここでの筆者の主張は今までとはややニュアンスが異なってきているのに興味深いものがあります。
8.知性だけがすべてではない
まとめです。

とまあこんな感じです。
補給戦という地味なテーマを扱った著作で、「血沸き肉踊る」類の戦史ではありません。しかし補給戦についてわかりやすく、しかも理詰めで解説している本書は一読の価値があると信じます。

お勧め度★★★★

余談その1

16~17世紀といえば、我が国ではまさに戦国時代から安土桃山にかけての時代になるわけですが、当時の我が国の補給戦の状況はどうだったのでしょうね。「群雄伝」シリーズ(ツクダ)にしても、「信長最大の危機」(GJ)にしても、軍隊は根拠地から切れ目のない補給線をつなぐことが義務付けられ、補給が切れると大なり小なりのペナルティが適用されるようになっています。しかし当時の軍隊が補給の大半を現地調達に依存していたとすれば、補給線の概念そのものがナンセンスという気もしてきます。

余談その2

上杉謙信が対北条戦で小田原城を包囲しながら退却せざるを得なかったことは、本書「16~17世紀の略奪戦争」を読めば納得できます。その一方で秀吉が三木城、鳥取城、小田原城を長期包囲戦の末に陥落させたことは、当時の補給状況から考えると画期的な出来事だったのかなあ・・・・、なんて思ってしまいました。

余談その3

西南戦争の折、薩摩軍は策源地たる鹿児島を政府軍によって制圧された後も、その策源地を転々と移動させつつ戦いを続けることができました。これは当時薩摩軍の場合、補給が未だに現地調達に依存していた事実を示しているのでしょう。それに対して火力中心で戦闘を行った政府軍の場合、補給のかなりの部分を策源地からの定期的な物資輸送に依存していたことが想像できます。もし西南戦争をゲーム化する場合、両者の補給ルールは異なるものにしたほうが良いかもしれません。

こんにちは。

PFB2005とPFB2006に誤記が見つかりました。内容は2005年の岡本真也投手(Dragons)と2006年のダーウィン投手(Tigers)です。正しいデータは以下の通りです。

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正式版は近日中に送付いたします。

他にも誤記等がありましたら、お知らせ下さい。

それでは今後ともPFBシリーズをよろしくお願いします。

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北海道でいくつか写真を撮ってきました。

どこかの渓谷

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十勝三叉から見る石狩の山々

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十勝三叉といえば、昔は林業の盛んな町で、国鉄士幌線も一時はこの十勝三叉まで来ていました。そのころには数百の人口を数えたこの町も、今では数えるほどの人しか住んでいません。この集落の一角にある「三叉山荘」は、旨いコーヒーとケーキを食べさせてくれる店で、旅行雑誌などにも時折紹介されています。


冬の糠平湖と東大雪の山々

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上の写真はニペソツ山、下の写真はウペペサンケ山です。糠平湖は糠平ダムによって作られた人造湖です。冬は湖面の大半が凍結し、ワカサギ釣りで賑わいます。が、今年は暖冬のせいか、まだ凍結が完全ではなく、ワカサギ釣りもまだ本格化していませんでした。

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(写真)T-54戦車。今回は防御に回ったアルバニア軍の主力として活躍し、その100mm主砲はユーゴ軍歩兵部隊に対して破壊的な威力を発揮した。

Battlefile Europe(GDW)

シナリオ2「The Poor Bloody Infantry

前回紹介したBattlefile Europe(GDW)のリプレイです。
最初は簡単そうなシナリオを、という訳で、表記のシナリオを選んでみました。

背景

何らかの理由でユーゴスラビアとアルバニアが激突するシナリオです。アルバニア軍第3旅団所属の歩兵中隊が守る町をユーゴスラビア軍第11歩兵旅団所属の部隊が攻めるシチューエーションになっています。両軍とも主力は歩兵部隊ですが、それを支援する兵力としてユーゴスラビア軍にはT-55戦車3両からなる戦車小隊と対戦車ミサイルを装備したBRDM装甲車3両からなる偵察小隊がいます。またアルバニア軍にもT-54戦車3両からなる戦車小隊がついています。T-54対T-55という奇妙な戦いが始まりました。

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勝利条件

"Vranje"村(下図の青色のヘクス)を1ヘクスでもアルバニア軍が保持していればアルバニア軍の勝利。それに対してユーゴ側は勝利条件ヘクス群を完全占拠する必要があります。

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ルール

選択ルール等は全部「ありあり」にしました。

セットアップ

攻める側のユーゴ軍が先に配置します。とはいってもあまり選択肢はなく、初期配置エリア内に適宜配置するだけです。
一方のアルバニア軍。初期配置についてはかなりの自由度があります。悩ましいのは前進配置にするか、それとも後退配置させるかです。色々考えても仕方がない(どーせソロプレイだし)ので、今回は前進防御を試してみることにしました。その方が展開が派手になりそうだから・・・・。

第1~2ターン

アルバニア軍(青)の配置を見たユーゴ軍(赤)プレイヤーは考えた。

「アルバニア軍の配置は明らかに左翼からの突破を警戒している。何故なら敵左翼には1級道路が走っていて、このルートを辿るのが勝利条件となる"Vranje"村まで最も短時間で到達できるからだ。アルバニア軍は山に挟まれた谷間の森に潜んでいるようだ。その兵力は不明だが、彼らの虎の子であるT-54戦車を2~3両含んだものだろう。この敵を各個撃破することができれば、勝利はぐっと近くなるが、逆に下手に手を出して大損害を被るのもマズイ。うーん、どうしようか・・・・」

熟考の挙句、ユーゴ軍は主力と思われる左翼の敵をまず殲滅することにした。攻撃の主力は歩兵部隊である。計8個分隊の歩兵がトラックから下車。森の中を歩き始めた。

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(写真)第2ターン終了時の状況。ユーゴ軍の歩兵部隊が森の中で進撃を開始した。

第3ターン


「敵接近。距離約200」

森の中に潜んでいたアルバニア軍のT-54戦車計3両は北から接近してくるユーゴ軍歩兵分隊の姿を捉えた。距離200。森の中を歩いてくる以上はお互い近づくまで敵の姿が見えない。

「各車、一斉射撃」

アルバニア軍戦車の主砲が火を噴いた。100mm砲弾が木々を切り裂く。次々と打ち倒されるユーゴ軍歩兵部隊。森の木々が若干の遮蔽効果を与えてくれる(注1)が、所詮は気休めに過ぎない。戦車の周りを固めていたアルバニア軍歩兵も射撃に加わった。それでも生き残ったユーゴ兵は、200mの近距離から次々と対戦車ロケット弾を放ってきた。数発のロケット弾が戦車の至近距離に着弾したが、実害はなかった。

(注1)森又は町ヘクスにいるユニットは防御力が+3されます。これは歩兵のように元々の防御力が小さいユニットには有難い話です。

第4ターン


「各車、射撃しつつ、600m後退」

アルバニア軍指揮官から命令が飛ぶ。3両のT-54戦車は、主砲や機銃を打ちながら後退を開始した。主砲弾や機銃掃射が再びユーゴ軍を切り裂く。破壊の限りを尽くつつ後退していく敵戦車に対し、ユーゴ軍は成す術もなかった。

この一連の戦闘で、ユーゴ軍は早くも歩兵4個分隊を失っていた。これはユーゴ軍歩兵部隊の約半数にも達する兵力である。

第5~9ターン

アルバニア軍戦車は後退して町に篭った。最前線の森の中では、なおもアルバニア軍歩兵2個分隊がユーゴの大軍相手に奮戦している。ユーゴ軍は歩兵を中心とした部隊でアルバニア歩兵を追い詰めるが、森の中での狭い視界での戦闘であり、なかなか相手を捕捉できない。ある時などは、稜線に隠れていたユーゴ軍BRDM装甲車が、アルバニア歩兵の突撃によりほうほうの体で逃げ出すという場面もあった。それでもユーゴ軍はようやくアルバニア歩兵の掃討に成功した。戦闘は新しい局面を迎える。


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(写真)第9ターン終了時。ようやく隘路を突破したユーゴ軍。

第10ターン

ユーゴ軍は町に篭るアルバニア軍に対して総攻撃を行った。迫撃砲弾がそこかしこで炸裂する。町を守るアルバニア軍歩兵分隊1個はユーゴ軍戦車の砲火によって撃破された。それでもアルバニア軍は接近するユーゴ軍に対して的確な反撃を実施し、かなり数を減らしたユーゴ軍歩兵をさらに1個葬り去った。

第11ターン

アルバニア軍はさらに後退した。国道沿いの盆地帯を南下し、最後の抵抗拠点"Vranje"村付近まで後退していった。


第12~14ターン

ユーゴ軍は森の中を伝って"Vranje"村に接近していった。

第15~20ターン


「突撃ぃ」

半数以下に減らされたユーゴ軍歩兵4個分隊が突撃を開始した。しかしあまりに兵力が少なすぎた。また支援火器も不足していた。砲兵部隊がわずかに迫撃砲2門では、効果的な支援など望むべくもなかった。生き残ったユーゴ軍歩兵は次々と砲火に倒れていった。最後になってユーゴ軍の戦車と対戦車ミサイルがアルバニア軍戦車2両に甚大な損害を与えることに成功したが、時既に遅し。壊滅状態に陥っていたユーゴ軍歩兵は、敵前400mにて力尽きた。

結果

アルバニア軍勝利。

感想

「撃った後走る(Hit&Run)」はOK、「走った後撃つ(Run&Hit)」はNGなので、守っている側が断然有利です。森の中に隠れて守っている敵諸兵科連合部隊を掃討するのは容易なことではありません。また戦車と歩兵を比べた場合、攻撃力-防御力-移動力は歩兵が全然弱いのですが、歩兵だけは「撃って走ってまた撃って(Hit&Run&Hit)」が認められているため、使い勝手は歩兵の方が良いです。攻撃時に歩兵の存在は必要不可欠だと思えてきました。まあ今回はお互いに旧式戦車で、スタビライザー付ではなかったためにそうなったのかもしれません。スタビライザー付戦車の場合、「走った後撃つ(Run&Hit)」が可能になってくるので、攻め方が少し変わって来るかも知れません。次はもう少し新しい戦車を登場させてみましょう。

あと「反応射撃」の使い方をもう少しマスターする必要があるようです。今まで「反応射撃」は移動した敵に対してのみ行えるものと思っていました。しかしルールを読み返してみると、「反応射撃」はどうやら相手の移動フェイズ中であれば、いつでもどこでも目標の状態を問わずに行えるようです。これを使うと攻撃側は少し趣の異なった作戦が試せそうです。例えば敵防御拠点を直射できる位置に友軍戦車や対戦車ミサイルを予め進出させておきます。次に何らかの方法で敵を「発見」することができれば、その敵が別の森ヘクスに入って再び隠匿状態になる前に「反応射撃」を1発お見舞いすることができます。これを上手く利用できえば、対戦車火力において優位に立つユーゴ軍があるいは優勢に立てるかもしれません。次回試してみましょう。

ゲーム全体について言えば、ルールは簡単です。ただ地図のデザインが少しわかりにくいです。ルール上では各ヘクスの地形は「最も地形効果の大きいものとみなす」と書かれていますが、そうするとホンの少しだけ木が生えているようなヘクスでも森扱いとなるのでしょうか?。ルールを素直に読めばその通りなのですが、そう見ても平地にしか見えない地形を見て、「これが森だ」と思うのはちょっと無理があります。もう少し判りやすいマップデザインにして欲しかったな、と思う今日この頃です。

「Uncommon Valor」に見る南太平洋航空決戦

Unccomon Valorは、米国"Matrixgames"が出版している電脳ゲームです。
テーマは南太平洋決戦で、1942年5月から1943年12月までを1ターン1~7日のスケールで描きます。


このゲームについては、つい先日入手したばかりで「チュートリアル」も着手していない状態なのですが、別の意味でちょっと興味が湧きました。というのも、このゲームは基地航空部隊が飛行中隊規模で登場するのですが、各中隊毎に装備機種、機数、技量、パイロット数等が事細かにレーティングされているのです。ということは、このゲームのシナリオを調べていけば、我々にとっては馴染みの薄い南太平洋方面における連合軍航空兵力の実態についても、ある程度伺い知ることができる訳です。

という訳で早速いくつかのシナリオについて調査してみました。

(注)以下の記述には"Uncommon Valor"におけるネタバレを含んでいます。

1942年5月

珊瑚海海戦の時期です。各基地毎の装備状況です。

連合軍

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基地機約250機、母艦機約140機といった所ですね。主力はP-39DやP-40E、爆撃機はB-26Bというのが目に付きます。量的には日本軍を上回っていますが、質的な面ではまだまだといった感がありますね。

日本軍

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基地機約120機、母艦機約130機、水上機約30機といった所です。基地機の数的な劣勢は顕著です。特に零戦隊が稼働機約30機の台南空のみというのはお寒い限り。既に前線が広がりすぎてしまった弊害が出ています。


1942年10月

南太平洋海戦の時期です。

連合軍

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基地機約900機、母艦機約160機といった所です。数量的にはかなり充実してきました。機材面ではまだまだ旧式機が目に付きますが、その中でB-17E、B-24Dといった四発爆撃機が徐々にその数を増しているのが伺えます。

日本軍

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基地機約350機、母艦機約230機、水上機約80機といった所です。母艦航空兵力では連合軍を上回っていますが、基地機の数では負けています。ただ連合軍機が広範囲に分散して局所集中できていないのに対し、日本軍は基地航空兵力の約70%を前線に近いラバウル、ニューギニア、ソロモン諸島に配置しています。


1943年6月

ガダルカナル戦が終わり、日本軍の「い号作戦」も実質的に失敗に終わった後、いよいよ中部ソロモンで連合軍の反攻開始、といった時期です。

連合軍

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基地機約1300機、母艦機約200機の航空兵力は、最早日本軍とは比較になりません。中でもガダルカナルを周辺とした地区には400機を越える基地機が集結し、東部ニューギニア方面に進出してきた200機以上と並んで一大航空要塞の様相を呈しています。
機材面も従来の旧式機に代わってより高性能のP-38GやF4U-1といった新型機がその数を増やしています。重爆撃機も16個中隊約170機を数えるに至りました。
母艦機では目立った動きはありませんが、この時期、早くもインデペンデンス級の軽空母が第一線に姿を見せているということは、新鮮な驚きでした。

日本軍

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基地機約350機、母艦機約30機。最早連合軍とは比較にもなりません。機材も相変わらずの零戦や一式陸攻であり、一部で月光やキ61といった新型機が姿を見せているものの、高性能化の著しい連合軍機に対する劣勢は最早否めません。
動ける母艦も「瑞鳳」のみ。「龍鳳」はどうしたのでしょうか?。

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