日本軽巡戦史 木俣滋郎 図書出版社
木俣滋郎氏は「日本空母戦史」「日本戦艦戦史」といった日本海軍モノを初め、「極北の海戦」「欧州海戦記」といったヨーロッパ海戦モノ、「日本戦車戦史」「ジェット空中戦」といった戦車戦や空中戦モノといった幅広い戦史を手がけている戦史研究者です。その木俣氏を代表する作品が、「日本空母戦史」に始まる「日本戦艦戦史」「日本水雷戦史」「日本軽巡戦史」という日本艦艇戦史4部作です。今回紹介する「日本軽巡戦史」は、氏の日本艦艇戦史の最後に位置する作品です。日本の軽巡といえば、太平洋戦争当時は旧式艦が多く、同じ水上戦闘艦でも世界有数の実力を誇った重巡部隊や新鋭艦揃いの駆逐艦戦隊に比べるとどうしても地味なのは否めません。水雷戦隊を率いた一部の軽巡はそれなりに活躍を見せていますが、本書では水雷戦隊旗艦については一切取り扱わない原則になっています(何故なら前作「日本水雷戦隊」で既に書いたから)。従って本書で登場する軽巡たちは、船団護衛や通商破壊戦といった地味な戦いに終始し、相手も連合軍の潜水艦や飛行機ばかりという状態です。本書ではそんな軽巡たちの「孤独な戦い」を延々500ページにも渡って記載しています。今日はどこどこへ陸兵輸送、明日はどこどこからの船団を護衛する。そんな記述が延々と続くわけです。決して読んでいて面白い本ではありません。
ただ今まで我々が余り目にしなかった戦史に触れることができる、という点では一読の価値があるかも知れません。例えば戦争初期に「球磨」がフィリピン近海で米魚雷艇隊と交戦した話や、「天龍」「龍田」によるミルン湾上陸作戦、オーストラリア北西方面での軽巡戦隊の戦い等、珍しい話の宝庫です。そういった意味から見れば読んでみて損はないかも知れません。
なお本書では正式な軽巡以外に、商船を改造した特設巡洋艦や、中国海軍の軽巡を捕獲した軽巡なども紹介されています。特設巡洋艦についての記述は、今まであまり知られていなかったものなので、興味深く読むことができました。
日本海軍の戦史について興味のある方であれば、一読する価値があるかもしれません。ただし・・・・、完全に読破するにはかなり根気が必要です(私は3ヶ月ほどかかりました)。

本文の一部。平坦な図版と文字文字文字の本文。まるで戦史叢書
お奨め度★★★