もりつちの徒然なるままに

ウォーゲームの話や旅の話、山登り、B級グルメなどの記事を書いていきます。 自作のウォーゲームも取り扱っています。

2007年09月

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Combat Commander(GMT)をプレイしました

表題のゲームをプレイしました。
このゲームは、WW2期における分隊レベルでの歩兵戦闘をテーマとしたSLGです。歩兵戦闘がテーマなので車両は一切登場しません。しかし、機関銃や迫撃砲、火炎放射器や爆薬といった歩兵戦闘レベルの支援火器や盤外からの砲撃支援も扱っています。ゲームのスケールは、1ヘクス=30メートル、1ユニット=1分隊、1班、1指揮官、1火器です。ちょうど「ASL」と同じぐらいです。

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本ゲームのユニット。下の数値は左から「火力」「射程」「移動力」で、右肩の数値が「士気値」、六角形に囲まれた数値が「指揮修正」です。

ゲームの中心となるのはカードプレイです。カードには「移動」(Move)、「射撃」(Fire)、「回復」(Recover)、「遁走」(Route)等の「命令」(Order)が記載されています。プレイヤーは手持ちのカードに記載された命令を実行することによってゲームを進めていきます。
カードは国籍別に分けられています。国籍毎の違いもさりげなくカードに組み込まれていて、例えば米軍は他国に比べると煙幕や砲撃支援の面で有利になっています。

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本ゲームのカード。本ゲームの基幹となるものです。

テーマ的には「スコードリーダー」等と似たゲームなのですが、雰囲気は随分違います。
ルールはかなり簡単です。例えば射撃ルール。火力にダイス目を加えて攻撃値を算出し、防御側の士気値+ダイス目と比較して結果を出す、といった方式に統一されています。射撃結果も「効果なし」「混乱」「士気阻喪」の3段階しかありません。それでもカードとの組み合わせで「突撃射撃」「擲弾筒射撃」「掃射」「機関砲の連続射撃」等も実施可能です。このあたり、ルールを複雑化しないで様々な状況を盛り込めるという「カードドリブン」方式の強みと言えましょう。
移動ルールも同じく「移動カード」を使い、ヘクス毎に移動力を消費していくという一般的なルールです。防御射撃は相手の移動中に「射撃」カードを使うことによって解決されます。この時「十字砲火」カードを組み合わせると火力が飛躍的に向上する場合があるので、安易に移動すると痛い目を見ます。(とは言っても、一撃で歩兵が死ぬことはないので、案外気楽に移動できますけど・・・)

その他、「地雷原」「鉄条網」「弾痕」「トーチカ」等の防御施設もルール化されています。「地雷原」や「鉄条網」はカードで解決されるので、「空から地雷が降ってくる」とか、「黒魔法で鉄条網を発生させる」といった場合もあります。

とあるリプレイ

早速ソロプレイしてみました。シナリオ2「Hedgerows & Hand Grenades」(生垣と手榴弾)。ノルマンディ地方のボカージュ地帯での米軍と独軍の歩兵部隊同士の激突を扱います。米軍は一線級の現役兵部隊ですが、独軍は国民擲弾兵や徴集兵主体の二線級部隊です。

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両軍の戦闘序列

セットアップ

米軍は兵力を横並びに配置。火力の優越を生かして独軍の殲滅を図ります。
対する独軍。まともに撃ち合ったら勝ち目はないので、兵力を縦深に配置し時間稼ぎを図ります。

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セットアップ時の状況。米軍が左側から右へ向けて進撃します。

米軍突貫!!

初戦は中央部の建物群を巡る攻防となる。木造建造物に立て篭もる独軍歩兵分隊に対し、米軍は機関銃と迫撃砲による激しい砲撃を浴びせかけた(「連続射撃」カードを使用)。独軍が怯んだ隙に一気に距離を詰めた米軍歩兵小隊は至近距離からサブマシンガンと手榴弾による攻撃を敢行(「突撃射撃」カード、「ハンドグレネード」カードを使用)。たまらず独歩兵分隊は壊滅。米軍が建物に取り付いた。

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中央の建造物群に米軍が取り付いたところ

砲兵支援

中央部の建物に取り付いた米軍は、続いてその向こうに見える森の中に陣取った独軍機関銃部隊に対して105mm砲の砲撃を行った。空中炸裂弾が木々を吹き飛ばし、破片が鋭い凶器となってドイツ軍兵士達を襲う。数斉射を浴びた独軍機関銃陣地は壊滅した。

地雷原突破

右翼を突破してきた米軍歩兵部隊の前面に地雷原が立ちふさがった(「地雷原」カードを使用)。立ちすくむ米兵達。そこに独軍機銃陣地から銃火が飛ぶ。混乱する米兵。しかし混乱した後の米兵は強い。簡単に混乱するが、なかなか敗走しない。それが米軍の特徴だ。
やがて立ち直った米兵は反撃を開始した。自動小銃を標準装備する米軍の火力は強大だ。次々と倒れていくドイツ兵。徴集兵(Conscript)を主力とする独軍に米軍のような粘りはない。次々と打ち倒されていく彼らは数分後に壊滅してしまった。

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地雷原に捕まった米軍部隊

総仕上げ

戦線右翼から米軍が大きく突出していった。独軍は最後の防衛線で抵抗を試みる。しかし米軍の強大な火力はそれを粉砕した。後方の砲兵陣地から105mm砲弾が雨霰と降り注ぐ。さらに自動小銃の射撃もそれに加わる。独軍の抵抗は10分と持たなかった。国民擲弾兵の分隊は壊滅した。

戦闘終了

この時点で独軍の失われた分隊数と指揮官の合計が9ユニットに達し、米軍のサドンデス勝利が決定した。

感想

まずこのシナリオについて。
米軍が強いです。火力が独軍よりも1つ大きい「6」火力。しかも射程距離が長いので、独軍をアウトレンジできる場合もあります。米軍の場合、一般的に士気値が低い(同クラスの部隊同士で独軍に比べると-1)のが欠点ですが、士気阻喪した後の士気値が高いのでなかなか壊滅しません。その上米軍には砲兵支援もあり、しかも攻撃側なのでカードの持ち数が多いというのも強みです。
対する独軍は主力が士気値「6」の徴集兵です。強力な米軍部隊とまともに撃ち合っても勝ち目はありません。独軍としては麾下の兵力を分散させて時間稼ぎをするしか手がないようにも思えます。

ゲームそのものについて言えば、一見コンポーネントが巨大で、ルールの量も多めに見えますが、実質的には大したことはありません。ルールブックに全てのイベントやアクションを説明しているからルールの量が多くなっているのあって、全てを読まなくてもプレイできます。
ルールシステム自体もシンプルです。移動、射撃といった基本システムは至ってシンプル。地雷や砲兵といった特殊ルールもカードを使用することによってシンプルに処理しています。他の戦術級ゲームに比べると拍子抜けするほどアッサリしています。

カードドリブンが本作の特徴ですが、それについては賛否両論があるかもしれません。一般的な戦術級ゲームの場合、移動や射撃はプレイヤーが自由に実施できるのが普通です。しかし本作の場合、移動や射撃はそれぞれ専用のカードが手元にないと実施できないのです。このことはつまり「敵が目の前を走っているのに射撃カードがないから射撃できない」とか「敵が混乱しているのに移動カードがないから突撃できない」とかいった事態が起きます。
本作のように「プレイヤーがやりたいと思うこともカードがないと実行できない」というのが実際の戦場の姿に近いものなのか?。あるいは他の一般的な戦術級ゲームのような姿が実際の戦場に近いのか?。これはカードドリブン方式の是非をも含めて興味深い問題です。

本作に対する個人的な評価は、

単品としてみた場合は完成度の高いゲーム。ただし戦術級陸戦ゲームの決定版と言うにはやや押しが弱い

といった所です。

おまけ

カードドリブンゲームの場合、ソロでやっても「驚き」がないので今ひとつですね。どなたか対人戦でお相手願えませんか?。

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南アルプス登山記(第2回)

一昨年の夏に南アルプス北部、昨年の夏には南アルプス南部を踏破してきました。そのことはかつてこのブログでも紹介させて頂いた通りです。


これまでの登山で南アルプスの3000m級峰はその大半を制することができました。残る3000m峰は塩見岳、聖岳の2つだけです。そこでこの夏、残った2つのうちの1つ、聖岳へ登頂することにしました。

聖岳から上河内岳へ

起床0400。外はまだ暗い。0430から朝食。トイレを済ませて出発は0530。まずは目の前に見える標高3013mの聖岳を目指す。
途中の分岐で重い荷物を置いていき、身軽になって聖岳を目指す。
しばらくは林の中の急坂を登っていき、少し上り返しがあった後、植生限界を超えて斜面を歩く。少し歩くとそこが小聖岳(2662m)の頂上だ。目の前には本州最南端の3000m級山岳である聖岳の雄大な姿が見える。

小聖岳より先はやせた尾根を歩く。足を滑らせたら一巻の終わりなので、慎重に慎重に歩く。30分ほどでやせ尾根を過ぎ、そこから前聖岳へ最後の登り斜面が続く。
喘ぎ喘ぎしながら斜面を登り、ようやく聖岳の頂上に着いたのは0730頃だった。聖平からの所要時間は約2時間。標準コースタイムの約半分という好成績である。目の前には昨年歩いた赤石岳、さらに富士山の姿も見える。

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聖岳山頂から見た富士山。この日は天候が素晴しかったです。

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聖岳山頂にて

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小聖岳から聖岳を見る。

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聖岳に向かう途中に見える花畑。綺麗な花畑ですが、これでも聖岳の生態系はこの数十年で大きく破壊されたそうです。

聖平に降りてきたのは0950頃。さらにカロリーメイトで昼食をする。トイレを済ませたり、少しノンビリしたりする。
聖平を出発したのは1020。ここから次は上河内岳(2803m)を目指す。標高差は600m。大したことはない、はずだった。
最初は樹林帯を登っていく。半分ほど上った所で植生限界を超える。前方に山の頂上らしきものが見える、が、これは上河内岳ではない。標高約2700mの南岳だ。南岳に着いたのは1130。既に聖平から1時間以上が経過していた。振り返って聖岳方面を見ると、頂上部がガスに覆われている。早朝は晴天だったのに、山の天気はホントあてにならない。
南岳から上河内岳までは少し登り返しがある。ここまで来るとさすがに疲れてきた。フラフラになりながらも上河内岳を目指す。上河内岳へ向かう分岐に辿り着いたのは1210。やっとこさ、という感じである。天気は晴れから曇りに変わっていた。

荷物を置いて上河内岳の頂上を目指す。往復20分ほどで上河内岳山頂制覇完了。カロリーメイトでエネルギー補給。そして山を降りていく。目指すは茶臼小屋。今夜は茶臼小屋に泊まることにしよう。
山を降りていく途中で何人かの登山家とすれ違う。これから上河内岳を越えて聖平小屋まで行くのだろう。ご苦労なことである。
標高が下がってきて樹林帯になる。若干のアップダウンがあり、茶臼小屋への分岐に辿り着いたのが1350である。ここから茶臼小屋まで降りていく。かなりの急斜面。疲れた足にこれはキツイ。

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茶臼小屋へ向かう山道。空は完全に白い雲に覆われてきました。

茶臼小屋に着いたのが1410。受付を済ませてビールを飲む。
夕食は1700から。なんと刺身が出た。山小屋の食事としてはかなり贅沢な部類に入る。その他のメニューも概ね美味しい。1800頃寝る。それなりに混んでいたが、目茶苦茶な混み方ではないのが嬉しい。

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茶臼小屋の外観。小さい山小屋でしたが、居心地の良い小屋でした。

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南アルプス南部の景観です。
聖岳に向かう途中に見える花畑です。
この聖岳、かつてはニッコウキスゲが咲き乱れる花の楽園だったそうですが、近年の環境破壊によって花畑は大きく破壊されてしまいました。

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(写真はクリックすると大きくなります)

南アルプス南部の風景。
小聖岳から見た聖岳(3013m)の景観です。
ここから聖岳山頂までは約1時間の行程です。

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大本営参謀の情報戦記-情報なき国家の悲劇

堀栄三 文春文庫

Game Journal#24で紹介されていた堀栄三なる人物に興味を持ったので、早速アマゾンに注文して読んでみました。

この堀栄三なる人物。私を含めてあまり世間には知られていないと思うのですが、戦時中「マッカーサー参謀」と呼ばれ、情報の分析に基づいて米軍の動きを見破った情報参謀です。本書では彼自身の手によって彼自身の活躍が描かれています。彼の活躍をいくつか紹介すると、

 1.戦争末期における島嶼戦での米軍苦戦は、堀氏が中心になって編纂した「敵軍戦法早わかり」の影響が大であったこと。
 2.台湾沖航空戦の際、海軍航空部隊の過大な戦果報告をいち早く見抜き、大本営に対して警告を発したこと。
 3.米軍のルソン進攻の際、上陸地点や日時、兵力を正確に予測したこと。
 4.日本本土攻撃を行うB-29部隊の部隊名と兵力量をコールサインの傍受を元に正確に割り出したこと。
 5.広島、長崎への原爆攻撃を半ば以上予期していたこと。
 6.米軍による日本本土上陸作戦の上陸地点、時期、兵力をほぼ正確に読みきったこと。

とまあ、並べてみるだけでも驚くべきことばかりです。「情報戦で負けた」と言われている旧日本軍ですが、堀氏のような優秀な情報参謀がいたことは、覚えておいても良いように思いました。

面白かったのは台湾沖航空戦に関する件です。同航空戦で「大戦果」を報じた海軍に対し、堀氏は独自の調査で戦果報告を分析し、その結果「台湾沖航空戦における戦果報告は大半が幻の戦果である」と結論づけます。このことは史実を知る我々にとっては常識です。しかし当時このようなことを公言することは色々と難しいことだったようです。堀氏自身も大本営宛に

「この成果はあてにできない。いかに多くても2,3隻。それも航空母艦かどうか疑わしい」

という電報を発しますが、その電報は大本営の作戦指導に生かされることなく、日本軍は無謀な「レイテ決戦」に傾注していくことになります。堀氏自身も内外から批判を浴びることになります。

現在の視点から「日本軍は愚かだ」「堀氏は偉い」とステレオタイプな評価を下すことは簡単です。しかし組織が一度大きな流れに乗って動き出した時、それを止めることが如何に困難なことなのかと考えれば、もう少し変わった見方ができるかと思います。なぜ日本軍は後世から見て「愚かな」戦争指導を続けることになったのか。その根本的な原因は何なのか。本書はそういった面からも示唆を与えてくれる著作だと思います。

お奨め度★★★★

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