もりつちの徒然なるままに

ウォーゲームの話や旅の話、山登り、B級グルメなどの記事を書いていきます。 自作のウォーゲームも取り扱っています。

2012年07月

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軍閥興亡史

伊藤正徳 光人社NF文庫

日本の軍閥といってもやや漠然としているが、本書は明治維新から始まり、太平洋戦争開戦に至るまでの日本陸海軍、中でも日本陸軍の動きを追ったノンフィクションである。従来の戦史とは異なり、本書は戦場での動きを追うのではなく、軍と政治、外交との関係を追っているのが特徴である。原作が昭和30年代前半と古いので、現在の視点から見れば正確性に欠ける面があるかもしれない。しかし日本軍という組織が日本の政治、外交に与えた功罪を包括的に捉えた点で本書は未だに貴重な著作といえる。
本書を読んで一番印象の残ったのは、1930年代における満州事変、日支事変を引き起こした軍部の暴走についてである。自らの主義、主張を通すために暴力的手段によって政治に介入した日本陸軍。その行動自体許せない思いが禁じえない。しかし真に重要な点は、これらの行動が若手将校の所謂「正義感」から引き起こされたという事実だろう。なぜこのようなことが起こってしまったのか?。未成熟な民主主義、教育の問題、熱しやすく冷めやすい国民性、外国の侵略を受けたことがないという純粋性等等。近年での我が国における政治の動きを見るにつけ、潜在的な危険性は未だ残っていると言わざるを得ない。
「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」
本書を読んでそのように感じた。

お奨め度★★★★

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前回のソロプレイに引き続き、GMT社のDown Townを試してみた。
今回は対人戦。選んだシナリオはD7"Thick as a Brick"。1967年8月における北爆を扱ったシナリオで、SAM、対空火器、そしてミグ戦闘機に守られた北ベトナム奥地の目標に向かう米空海軍の攻撃隊と、それを阻止せんとする北ベトナム(以下、DRV)の戦いを描く。
下名はDRVを担当し、23基のSAM大隊とDummyレーダー1基、さらに6機のミグ戦闘機(4xMiG-17F,2xMiG-21PF)を配置して米編隊を待ち構えた。


1~2Turn

トンキン湾北部、通称「ヤンキーステーション」の空母群から発進したと思われる米海軍攻撃隊が、北ベトナム海岸に近付いてきた。諜報によれば、米編隊は超大型攻撃空母「コンステレーション」((USS Constellation, CVA-64)を発進した戦爆連合36機。その内訳はF-4Bファント12機、A-4C/Eスカイホーク又はA-6Aイントルーダー計20機、RA-5Cヴィジランティ2機、電子戦機2機である。
対空射撃を避けるため中高度を約450ktで飛行中の大編隊は、早くも北ベトナム軍早期警戒網の捕捉する所となていた。上空警戒中のミグ戦闘機4機は直ちに目標へ向かい、ハノイ近郊のGia Lam飛行場からは追加のMiG-17F 2機が緊急発進して行った。

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3Turn

密集隊形のまま接近してくる米編隊。ハイフォンから約20海里の距離に近づいた時、ハイフォンに配備されていた2個大隊のSAM(S-75ドヴィナ、NATO名"SA-2ガイドライン";)が活動を開始した。

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4~5Turn

活動を開始したSAMを制圧すべく米編隊から2個編隊計4機のA-4Cスカイホークが分離してきた。接近するスカイホークを迎え撃つべくハイフォン市街地に配置されていた対空火器とFire Can(対空火器を誘導するレーダーシステム)が活動を開始した。スカイホークの編隊は、対空火器を物ともせずに接近。次々とシュライクARMを発射した。シュライクの攻撃に恐れをなしたSAM大隊は次々とレーダーをシャットオフした。シュライクの攻撃はDRV SAM大隊に対して物理的な損害を与えることはできなかったものの、その活動を一時的に封殺することには成功した。しかしその代償としてスカイホークが対空射撃を浴びて被弾。中破した。

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6Turn

ハイフォン西地区、Uong Bi(1909)付近に配置されていた3個のSAM大隊も活動を開始した。その活動を封止すべく武装護衛にあたっていたF-4Bファントム2個編隊4機が急降下爆撃を敢行。SAM大隊1個を沈黙させることに成功した。

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7~8Turn

山間部を利用し、米早期警戒網を逃れてきたMiG-17 2機が、突如米攻撃隊の本隊に襲いかかった。狼狽する米編隊を尻目に奇襲を成功させたMiG-17は、A-6Aイントルーダー4機編隊を攻撃した。機関砲の射撃により2機のA-6Aを撃墜。ほぼ全弾撃ち尽くした所で戦場離脱を図った。低空へ逃れるMiG-17に対し、周囲を警戒していたF-4Bファントムの編隊が怒りにまかせて反撃の刃を向ける。しかし天候を巧みに使用したDRVミグ編隊は、巧くファントムの追撃を巻く事に成功した。。

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9~11Turn

米攻撃隊は2機損失という大被害にも関わらず、なおも進撃を続ける。ハイフォン北部の山間部より北ベトナム領内に進攻した米編隊は、さらに中越国境に向けて進撃を続ける。攻撃本隊の周辺ではF-4ファントムの編隊が目を光らせ、ダミーを含めて怪しい敵影に対してはファントムを近づいてその姿を捉えようとする。これまでは超低空飛行が功を奏して米戦闘機の目を眩ませ続けたが、いつまでもその手が通用するほど敵も甘くはない。いつかはファントムに捕まるだろう。その前に反撃に出て活路を見出すか、あるいはあくまでも超低空飛行を続けて米艦隊全体の目くらましを続けるべきなのか。

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12Turn

先手を取ってミグが反撃に転じた。低空のミグを追いまわすファントムを逆に低空のドグファイトに誘い込み、一転速度を利用してファントムの背後を取ったMiG-21。アトールミサイルが発射され、1機のファントムが炎に包まれて落ちて行った。今日、3機目の戦果である。
と、ここまでは良かった。しかしその後が大変だった。2個編隊4機のファントムがMiG-21に対して猛烈な報復戦闘を仕掛けてきたのである。先の交戦でアトールを使い果たしていたMiG-21に反撃の手段はない(今回登場したMiG-21PF型は機関砲を積んでいない)。数次に渡る攻撃でMiG-21は2機とも撃墜されてしまった。


13Turn

ハイフォン方面に目を向けてみると、先にA-6 2機を撃墜したという殊勲のMiG-17編隊を殲滅せんと、ファントム3個編隊計6機がこれを追う。しかし1個のファントム隊は低空に舞い降りた途端に地上から猛烈な対空射撃を浴びることとなってしまう。

「そんなの聞いてねえよ」

とファントムクルーが叫んだかどうか・・・。結局対空射撃を浴びたF-4Bの1機が撃墜された。

さらに別の場所で別のファントム隊がこちらは今まで姿を隠していたMiG-17Fの編隊に捕捉された。ファントム1機が撃墜され、残りは遁走。こちらはDRV側の大勝利に終わった。

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14~16Turn

米爆撃編隊が攻撃目標であるLang Dang(0615)の鉄道操車場上空に近付いてきた。付近に隠匿配置されていた3個SAM大隊と2基のFire Can、さらには増強された対空砲火が米編隊を迎え撃つ。米軍は激しい対空射撃を物ともせずに突入し、A-4E 2機が大中破の損害を被ったが、被撃墜機はなかった。A-6Aイントルーダー4機とA-4Eスカイホーク4機が投じた爆弾は鉄道操車場に吸い込まれ、目標を完全に破壊した。

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その後

その後の展開については軽く触れておきたい。米攻撃隊は攻撃終了後そのまま離脱。約5分後に戦場に現れたRA-5Cヴィジランティ偵察機2機が目標上空に進入。対空砲火を浴びながらも無事写真撮影に成功。目標が完全に破壊されたことを知った。

この攻撃で米軍は計5機を失った。その内訳はA-6Aイントルーダーが2機とF-4Bファントムが3機。F-4Bファントム1機が対空砲火に喰われたことを除けば、残りは全て空中戦による損失であった。5機のクルー10名の運命は、8名が脱出に失敗して戦死。残る2名は機外脱出こそ成功したものの、その後の救難に失敗し、2名ともDRVの捕虜としてこの戦争を終えることになる。他に4機(A-4C/Eが3機、A-6Aが1機)の要修理機を出した。

DRVは2機のMiG-21を失い、1機のMiG-17が要修理。Lang Dangの操車場は完全に破壊された。それでも米軍機5機撃墜の戦果と搭乗員10名全滅の戦果が認められ、結果的にこのシナリオはDRV側の決定的勝利となった。


感想

これまで何度かDown Townをプレイしてみたが、やはり米軍側が難しいように思う。損害に対するペナルティが大きいからだ。特に鈍足の爆装機をミグ、SAM、対空火器の猛攻から守り切るのは容易ではない。米軍側が難しいが、遣り甲斐のある立場であることもまた事実。

プレイ時間はセットアップを除けば5時間前後。さらに準備に2時間ほど必要なので、実質的なプレイ時間は7時間ぐらいになるだろう。今回に関していえば、本隊の爆撃が終わった時点で勝敗の趨勢が見えていたため、あとは「手抜き」プレイで済ませた。16Turn以降の感想文が簡単にまとめあるのは、そのためである。もし「手抜き」をせずに真面目にプレイすると、プレイ時間が1時間ほど長くなる可能性があった。いずれにしても簡単にプレイできるゲームではなく、ルール量の多さと相まって、それなりに覚悟を決めて挑まなければならない作品と言えるだろう。

次回は少し趣向を変えて、同じGMT社のElusive Victoryで中東の空にも挑戦してみたい。

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South Pacific Destroyer

Russell Sydnor Creshaw Naval Institute Press

本書は米駆逐艦「マーレー」(USS Maury DD-401)を中心に描いた海戦期である。駆逐艦「マーレー」は基準排水量1500トンの駆逐艦で、バーグレイ級に属している。このクラスは雷装を重視したことで知られており、両舷に合わせて16門もの魚雷発射管を備えている。日本海軍で最も雷装の強力な駆逐艦は「島風」だが、それでも魚雷発射管が15門だったので、バークレイはそれを上回っている(もっとも魚雷そのものの大きさや威力は比較にならないが・・・)。
本書は1942年11月30日のタサファロング海戦(日本名ルンガ沖夜戦)に始まり、1943年7月のクラ湾夜戦やコロンバンガラ沖夜戦、そして同年8月のヴェラ湾海戦までを描いている。日本でもあまり描かれることの少ない期間だが、それを米駆逐艦の視点から描いているという点も珍しい。
本書は駆逐艦から見た夜戦の姿や航空機に対する戦いを生々しく描いている。また単なる戦闘場面だけではなく、後方基地での休養や他の艦との共同行動、救助作戦といった戦争の様々な側面を描いている。米側から見たソロモン海戦という姿勢が一貫して貫かれているため、当時の日本側の事情、例えばガダルカナルからの撤退戦やい号作戦、あるいは山本長官の戦死などは断片的に触れられている程度である。そういった意味で戦争を立体的に見るという意味ではやや物足りないが、元より本書の目的外のことであろう。
米駆逐艦から見た太平洋戦争の姿を知るには格好の著作といえる。

お奨め度★★★★

傲慢かもしれないが、最近「組織が動く」ということを少し実感している。

私の仕事はS/Wの品質保証だが、今まで何を言っても言うことを聞いてくれなかった開発部隊が、最近は面白いように(別に面白がっている訳ではない、念のため)動いてくれる。こちらの言うことに耳を傾けてくれるのだ。
否、開発部隊だけではない。営業、業務、工程、制作、品管等の組織もこちらの言うことに耳を傾けてくれるようになった。社外クレームについてもしかり。謝るべきポイントというものがわかるようになってきた。

何が変わった訳でも身を粉にして働いている訳でもないが、一体何なんだろ、これは?。
強いて挙げれば、春先から社外活動に積極的に参加するようになったことか(シュミゲではない)。他社のエンジニア(年齢、経歴、性別は様々)と様々な課題に取り組むことで、自ずから視野が広がったのかもしれない。

とはいえ・・・・、相変わらず部下は思った通りに動いてくれないが・・・。

まあ一時的なものではないことを祈ろう。

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ソフトウェア職人気質

ピート・マクブリーン著 村上雅章著 ピアソン・エデュケーション

本書は野心的な著作である。従来のいわゆる「ソフトウェア工学」を真っ向から否定し、ソフトウェアとは職人的気質に基づいて作られなければならない、と説く。考え方から言えばエクストリーム・プログラミングに代表されるアジャイル開発に近いが、アジャイルよりもより人間的側面を重視した内容になっている。
本書ではいわゆるソフトウェアを「管理する」という考え方は否定される。それに代わるものとして職人気質を掲げ、それを実践するための手段として少人数グループ、徒弟制度、継続的学習といった方法を取り入れている。
本書の示すプラクティスには興味深い点も多いが、全面的に首肯することはできない。例えば本書では「親の敵」のように扱われている「ソフトウェア工学」についていえば、混乱の極みにある我が国のソフトウェア開発現場においてソフトウェア工学がその改善に一定以上の役割を果たしていることは明らかである。また本書が理想とする「スーパースターのようなソフトウェアエンジニア」は確かに存在するかもしれないが、一般企業がそのようなスーパースターを多数保有しているとは考えにくい。本書が提示する「職人」のレベルは、一般企業が普通に保有しているソフトウェアエンジニアの技術レベルを遙かに超えているように思える。
「将来このような開発スタイルが定着すれば良いな」という話なら理解できるが、現時点で職人気質的開発手法は、現実的ではないと思えた。

お奨め度★★★★

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