GMT社のEmpire of the Sun(以下、EoS)は間違いなく傑作ゲームである。テーマは太平洋戦争。戦艦「大和」がどうの、零戦がどうのと兵器に対する興味が先行している感の太平洋戦争であるが、Empire of the Sunは兵器の性能を比べ合うゲームではない。戦略を争うゲームである。勝ち目がない戦争と言われる太平洋戦争だが、日本軍にはどのような可能性があったのか。あるいは連合軍はどのような点で苦しんでいたのか。こういった疑問に対してある程度答えてくれる作品ではないかと思っている。
今回、EoSをVASSALを使ったメール対戦する機会を得た。シナリオは1942年キャンペーン。個人的には一番バランス的に良いシナリオだと思っている。1941年キャンペーンの方が色々な可能性を試せるのは確かだが、それだけに振れ幅が大きくなり、ゲームが崩壊する可能性も大きくなる。その点1942年キャンペーンは日本軍が突飛な作戦が試す余地が少ないので比較的安定した展開になりやすい。かといって「なるようにしかならない」訳ではなく、日本軍も十分に楽しめる内容になっている点が良い。
今回、下名は日本軍を担当した。
2Turn(1942年前半)





日本国民は、あまりにも不幸な出来事に涙するとともに、この戦争の前途に不安を残す結果となった。




ここに至って日本軍は戦略の方針転換を迫られた。当初の計画では、EoSの定石ともいうべきビルマ経由のインド侵攻を考えていた。しかし現在の状況を加味するとビルマ侵攻戦での勝算は必ずしも高くはない。それならばビルマを囮にしてソロモン、ニューギニア方面を制圧する方が得策ではないかと考えた。そして狙いはオーストラリアだ。オーストラリア作戦の最大の障害は米本土からの増援部隊だが、それはソロモン諸島とニューギニア全域を制圧することによってシャットアウトできるはず。オーストラリア大陸西部に対しては聯合艦隊HQをホロ島(Jolo 2715)あたりに前進させれば良い。さて吉と出るか、凶と出るか・・・。


一方連合軍はソロモン、ニューギニア方面には目もくれず、ビルマ方面の防備を固めていく。

3Turn(1942年中盤)



フィリピン方面では第14軍(18-12)が第2海軍特別陸戦隊(2SN 4-6)と共同でマニラ(Manila/Corregidor 2813)を攻撃した。同地を守るフィリピン軍(5-10)を撃破し、フィリピン全土を制圧した。


ガダルカナル海戦と呼ばれる日米戦争最初の大規模海空戦闘では、日本軍は腕の冴えを見せて米軍部隊を痛打した。戦艦「ミシシッピ」、重巡「ノーザンプトン」(9-8)が沈没する等大損害を被った米軍は、ガダルカナル近海から撤退するしかなかった。

4Turn(1942年後半)





陸海軍間の関係か悪化しつつある米軍は、混乱を避けるため陸海軍それぞれが個別に作戦を行った。空母機動部隊はガダルカナル方面に対して艦載機による攻撃と艦砲射撃を試みるが、日本軍の諜報機関も米軍による奇襲を許さず。空母や基地航空部隊を駆りだして来襲する米軍を迎え撃った。米空母「ワスプ」が中破。日本側は基地航空兵力の一部を失う。日本軍にとっては厄介な航空消耗戦だ。
同じく米軍は陸軍航空部隊でマーシャル諸島に対して反復攻撃を実施し、在地の航空兵力に損害を与えていた。

1942年総括

米軍の対応は全般に巧みだ。切るべきは切り、抑えるべきは抑える。前回パスグロをプレイした時も感じたが、戦略の立て方が上手い。一本筋が通っているので、なかなかこちらの誘いに乗らない。これが不慣れなプレイヤーだとPoWのプレッシャーに負けて中途半端な兵力で反攻をかけて来たりする。それに対して日本軍が満を持して迎え撃てば、米艦隊に大損害を与えることも不可能ではない。しかしそのような誘いに乗ってこないので、さてどうしたものか。このままPoWを阻止し続けてVPを稼ぎ、東條政権崩壊まで粘れば勝機が見えてくるのだが・・・。