南方進攻航空戦1941-1942
クリストファー・ジョアーズ他 伊沢保雄訳 大日本絵画
本書は「BLOODY SHAMBLES」の日本語版である。本書を購入したのは今から10年以上前だったと思うが、読まずに放置したままの状態が続いていた。今回一念発起して読み通してみたが、なかなか面白い。1941年12月から翌42年2月のシンガポール陥落までの南方方面における航空戦を連合軍側の視点から描いたものだが、日本軍側の記録も結構詳しい。日記風に淡々と筆致を進めていくスタイルだが、その中で我々が知らなかった事実が色々と見えてくるのが興味深い点である。本書の魅力は連合軍側、就中英軍や蘭軍の事情に詳しいこと。米軍関係の資料なら結構書籍が出回っていて比較的入手も容易だが、英軍や蘭軍の場合はそうはいかない。特にオランダ軍のバッファローやハドソンの活躍については日本側では殆ど知られていないというのが実情である。
本書を読んで違和感を覚える点は、終わり方が唐突過ぎること。シンガポール陥落の時点で終えているのだが、実際にはこの後も蘭印航空戦は続いており、バターン半島での米軍の抵抗も続いている。シンガポール陥落というタイミングは中途半端と言わざるを得ない。恐らく本書が扱っているのは「BLOODY SHAMBLES」の前半部分だけで、後半部分は諸般の事情により日本語化されなかったのだろう。英語版の「BLOODY SHAMBLES」について下名は未読だが、アマゾンの説明を読むとスマトラ防衛戦やセイロン空襲等も記載されているらしい。後半部分について日本語版の出版がほぼ絶望的な今日、続きを読みたければ英語版にトライするしかなさそうだ。
お奨め度★★★★