もりつちの徒然なるままに

ウォーゲームの話や旅の話、山登り、B級グルメなどの記事を書いていきます。 自作のウォーゲームも取り扱っています。

2016年09月

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海軍乙事件

吉村昭 文春文庫

歴史や戦史に関する小説を得意とする吉村昭氏が描いた歴史小説。歴史小説とはいってもその内容はほぼ史実に基づいた内容となっている。海軍乙事件とは、1944年3月31日に当時聯合艦隊司令長官であった古賀峯一大将と司令部要員が飛行艇で移動中に遭難。古賀長官他司令部要員多数が殉職し、参謀長福留中将他数名が生還するも途中米比軍ゲリラによって捕縛されたという事件である。本事件で問題となるのは、事件の際に当時海軍の最高機密文書が米軍に渡ったか否かについてだが、本書ではハッキリと文書は米軍に奪われたと明言している。そのことは本書が比較的早い段階に出版された著作(初版1976年)であることを考慮すると、画期的といえる。また本書では福留中将について批判も擁護もせず、ただ淡々と事実を書いている。
個人的には海軍乙事件は当時の日本海軍における欠陥を顕在化させた事件と思える。福留中将個人のとった行動云々(自決すべきだったとか、そうではなかったとか)ではなく、組織として腐敗した様が伺える。本事件で考慮にすべき最大の問題は機密文書の行方であり、それが米軍に渡った危険性が高かったことは当時の状況からも明確であった。にも関わらず海軍はそれに対して具体的な対策を行わず、福留中将の個人の処遇に腐心している。そこには組織としての合理性や組織としての正しい姿よりも、組織の体面を重んずる姿勢が濃厚に出ている。本件に限らず台湾沖航空戦等で見られるような「虚偽報告」とさえ言える過大な戦果報告や自軍の損害を矮小化して報告する体質とも相通ずるものがある。
本書は表題作以外に3編の短編小説が収められている。「海軍甲事件」「八人の戦犯」「シンデモラッパヲ」。表題作に比べるとインパクトと言う点でやや弱いが、「海軍甲事件」以外は戦史の隠れた部分を描いた佳作なので一読をお勧めしたい。(「海軍甲事件」も悪くはないが、山本長官機護衛戦闘機の話なので、今では結構知られている)。

お奨め度★★★★

空木岳(うつぎだけ)。標高2864m。中央アルプスの中では木曽駒ヶ岳に次いで標高の高い山で、日本百名山の1つです。8月のある日、私はこの山に挑戦しました。


空木岳登山第2日目。午前4時に起床しました。外に出ると丁度朝日が水平線から登ってくる時間。雲海の上は快晴だったので、綺麗なご来光を眺めることができました。

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食事を終えて山小屋を出たのが0540頃。昨晩の頭痛が嘘のように爽快な朝です。さあ、出発。今日は標高2864mの空木岳を制覇し、池山登山道経由で菅の台まで下山の予定です。出発してからいきなり急登。例によって体が暖まっていないので最初はキツイですが、高度には順応している上、今回は同じ小屋から出発した「仲間」達と一緒に登るのだから精神的にはかなり楽です。1時間ほどの登りで第1ピークと呼ばれるポイントに到着。ここからはすぐ近くにこれから向かう空木岳の山頂が見えている他、南の方角には200名山の一座である南駒ヶ岳が、北の方を見ると昨日歩いてきた稜線がすーっと見えています。あまりの景色にしばし言葉を忘れて立ち尽くす僕。

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第1ピークからは鎖場2つといくつかの岩登りを経て空木岳山頂へ。所要時間は30分弱ですが、すぐ目の前に山頂が見えているので気分的にはかなり楽。しかもアップダウンから言えば昨日の稜線の方が遥かにアップダウンがきつかった。だから第1ピークから空木岳山頂までは、左程苦しいと感じることなく到着しました。

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空木岳山頂でガスが上がってきて、周囲の視界が効かなくなってきました。天気予報によれば今日は午後から雨との事。ならば長居は無用とばかり、20分ほどの頂上滞在の後、下山を開始します。山頂から10分とかからない所に駒峰ヒュッテがあります。ここは食事提供なしの半避難小屋的な山小屋です。カップラーメン等は販売してもらえるそうですが、火を自分で持って上がる必要がありそう。場所的には素晴らしい場所だけにもう少しサポートがあれば・・・、と思うのですが・・・。

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駒峰ヒュッテから少し降りて行くと花崗岩の岩礁地帯に出ます。いくつかの巨岩を見た後、花崗岩地帯の一番低い場所にひときわ大きな直方体に近い巨岩が見えてきます。これが駒石。空木岳を代表する巨岩です。

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駒石を過ぎて暫く歩くと、登山道は樹林帯に入って行きます。樹林帯では数多くの高山植物が登山者を出迎えてくれました。そのいくつかを紹介します。

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暫く歩いていると雨がポツポツと降って来ました。最初は大したことがないだろうとレインウェアを着用せずにいたのですが、そのうちに雨が急に強くなって来、慌ててレインウェアを着用しました。大粒の雨が容赦なく体を叩くので、レインウェアに身を包んで歩くだけです。池山の手前約2kmで登山路が二手に分かれており、その2つが合流する地点が池山山荘。ここまでくれば、もうあと一息です。

結局池山の登山口に戻ってきたのは1200少し前でした。ここからはタクシーで菅の台まで。1台3000円の所、同行者が2人いたので、1人1000円でタクシー利用できたのはラッキーでした。

菅の台バスセンターに到着したのは1230頃。昨日の早朝にこのバスセンターからバスに乗って出発してから、約31時間が経過していました。山の中ではあれほど強く降っていた雨が、ここでは殆ど降っていなかったのも意外といえば意外でした。

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感想

今回、ロープウェー駅を出発点とし、空木岳を目指したのですが、実の所もう少し楽なコースかと思いました。何故なら出発点の標高が2600mを超えており、後は短いアップダウンの繰り返しなので、それほどキツクはないだろうと思っていました。私の持っている昭文社の山地図(2005年版)でもコースタイムが約6時間となっており、私の楽観論の根拠ともなっていました。

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しかし・・・、
その甘い予想は裏切られました。確かに短いアップダウンの繰り返しなのですが、そのアップダウンの斜度が半端ない。岩登りに近いような場所が何カ所もあり、いずれも慎重さを要求される場所でした。一般登山ルートなので特別な装備なしで通過できるのですが、それでも3点支持をしっかり行わないと危ないです。また大きな荷物もリスク要因となります。ピークの数も多く、恐らく10近くはあったので、累積標高差は1000m近くはあったかもしれません。さらに高標高に起因する酸素濃度の薄さも困難に拍車をかけます。単に空木岳の登頂のみを目指すのであれば、私が下山時に利用した池山登山道を往復した方が楽だと思います。

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ただ稜線からみた景観は素晴らしいの一言。これも天気頼みの所はあるのですが、今回のように天候に恵まれれば、アルペン風情あふれる素晴らしい景観を堪能できます。逆に天気が悪いと何も面白くない、ただ危ないだけのコースなので、悪天候時は避けた方が良いと思います。

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今回の空木岳は私にとって87番目に制覇した百名山となりました。またアルプスにおける百名山登頂は、この空木岳を以って完了しました。あと13座。残るは、トムラウシ、幌尻、飯豊、平治ヶ岳、高妻山、・・・、いずれ劣らぬ高難度の山だけが残ってしまいました。ここまで来たら百名山全山制覇したいのですが、はてさてあと何年かかることやら・・・・。

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「超」入門微分積分-学校では教えてくれない「考え方のコツ」

神永正博著 ブルーバックス

私は理系だが数学がキライである。高校時代は結構得意分野で得点源だったのだが、大学に入ってからキライになった。だから今でも数学は苦手である。「数式を見ると痒くなる」程ではないにしても、積分記号、行列式、自然対数記号などを見ると目を背けてしまう。
そんな私でも仕事の関係で数学と関わらない訳にはいかない訳で、それならば高校レベルの微分積分でも久しぶりに勉強してみようか、と思って購入したのが本書である。
本書は一言で言えば「面白い」。テーマがテーマだけに数式を避けて通り訳にはいかず、頻繁に数式が出てくるが、本書のテーマは数式ではない。積分とは何か、微分とは何か、についてその考え方を教えてくれる著作だ。読んでいくにつれて微分、積分の意味や公式の意味、さらには自然対数やネイピア数の考え方を理解することができるようになっている。
読むだけなら1時間ほどで読める著作であり、肩の凝らない内容なので、気が向いたら読んでみるのも一興だと思う。

お奨め度★★★

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イメージ 5「ドイツ装甲師団長2」(以下、本作)は、Game Journal誌43号の付録ゲームで、2012年に発表された。元々はアドテクノス社から発売されていた「ドイツ装甲師団長」(以下、前作)で、前作では戦闘比方式の戦闘解決システムを、本作では1ユニット対1ユニットの射撃解決方式に変更している。そのため比率方式に比べると兵器間の性能差が表現し易くなった。

スケールは1ヘクス=750~1500m、1Turn=1~3時間(夜間は6~12時間)、1ユニットは1個中隊を表す。タイトル通りプレイヤーが指揮する兵力は概ね師団~軍団(ソ連軍の場合)規模で、登場するユニット数はソ連軍の場合は平均70個前後、ドイツ軍は平均50~60個である。

システムは準備射撃、移動、機動射撃で1プレイヤーTurnになっており、それをソ連、ドイツの順番で繰り返す。1Turnの所要時間は30分弱。1シナリオは8~16Turn構成になっているので、シナリオの所要時間は3~6時間ぐらいである。

イメージ 6システム的に面白いのは、兵科による移動力消費の違いと射撃時期の違いである。まず移動力については、歩兵・砲兵系の移動力は2~3、戦車・自走砲系の移動力は4~6である。ただし道路移動率が前者は1/4、後者は1/2なので道路移動の場合は両者の違いはない。違うのは道路移動率を使うと敵ZOCに進入できないことと、ZOCの進入、離脱に2移動力がかかること。従って歩兵、砲兵系のユニットは敵ZOCに進入するのが困難だが、戦車・自走砲系は比較的容易に敵ZOCに進入できる。
射撃時期については、歩兵、砲兵は準備射撃と機動射撃の両方で射撃できる。また自走砲は準備射撃でしか撃てない。戦車は機動射撃でしか撃てない。従って先の移動特性と合わせて考えると、以下のようになる。

 戦車:移動によってZOCに進入でき、移動後射撃ができるので、攻撃時の主力となる。
 自走砲:移動によってZOCに進入できるが、移動後射撃ができないので、機動防御用となる。
 歩兵:移動によってZOCに進入するのが困難だが、敵が隣接していると1Turnに2回射撃できるので、拠点防御用となる。
 砲兵:移動によってZOCに進入できないが射程距離があり、またスタックを射撃した場合はスタックの全ユニットを攻撃できるので、いざという時の突破口形成用になる。

いずれにしても各兵科の特徴を巧みに再現し、かつ戦場全体の中で各兵科の活躍を再現できるという点で本作は他の作品にはない特徴があると言えよう。ルール自体もシンプルで、口頭説明でも十分にプレイできる。

とある対戦

イメージ 4という訳で8月半ばの暑い土曜日。早速本作をプレイしてみた。下名はソ連軍を担当する。本作では6つの任務チットからソ連、ドイツ両陣営が2つずつのチットを無作為に選択し、そのいずれか(あるいは両方)の達成に向けて部隊を展開することになる。またその一方で相手の任務を予測しつつ、それを妨害するようなプレイも求められる。
今回、ソ連軍が引いてきた任務は「威力偵察」と「阻止」であった。「阻止」とは相手の任務を阻止することで勝利得点を獲得するもので、こちらから積極的にVPを得るのが難しい。そこでこちらは威力偵察の達成を目指すこととし、その一方で相手の突破を阻むべく重要拠点を押さえることにした。

序盤は両軍とも盤端から進入し、主要な街路に布陣してその確保に努める。

イメージ 7両軍が接触したのは第3Turnであった。戦線中央付近で独ソ両軍の戦車同士が接触したのだ。性能に勝るドイツ戦車が序盤の戦車戦に勝利し、損害を被ったT-34中戦車の中隊が後退していく。その一方でソ連軍の有力な戦車大隊が戦線左翼に突出し、ドイツ軍の包囲を狙っている。

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ソ連軍左翼の戦車大隊が前方の小河川を渡河し、戦線後方を伺う。そして頃合い良しとみた戦車2個大隊が左翼を突進。後方の敵歩兵陣地を攻撃した。この陣地を落せば、「威力偵察」任務を完遂したことになるのだ。

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イメージ 8歩兵1個中隊でしかなかった防御陣地は戦車大隊の攻撃に抗するべくなく陥落。ドイツ軍は戦車部隊を派遣して救援に向かわせたが、ソ連側の遅退戦術によって目的を達せず。結局第8Turn終了時に勝利条件を見たしたソ連側の勝利に終わった。

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感想

イメージ 9プレイ時間は3~4時間ぐらいであった。一部ルール適用ミス(ZOCに進入する際の移動力消費を忘れる等)があったので、厳密には正しい展開ではない。感想としては、上に書いた通り各兵科の特徴が比較的良く表現されており、ルールもシンプルでわかりやすい、良いゲームだと思う。前作では兵器の性能差が今ひとつ表現されていなかったが、本作では兵器の性能差も(シンプルながらも)表現されるようになっている。いずれにしても中隊規模のゲームなので、個々の兵器の優劣よりも運用の優劣が重要なのは言うまでもない。

やや残念なのは、前作では独ソ両軍以外にフランス、イギリス、アメリカ等のユニットやシナリオが用意されていたのに、本作ではそれらが省略されていることである。コンポーネントやテストプレイの関係上仕方がないとは思うが、残念といえば残念である。是非続編を期待したい。

いずれにしても機会を見つけて再戦してみたい作品である。

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空木岳(うつぎだけ)。標高2864m。中央アルプスの中では木曽駒ヶ岳に次いで標高の高い山で、日本百名山の1つです。8月のある日、私はこの山に挑戦しました。


喘ぎながら漸く辿りついた檜尾岳。山頂から見る景観はまたしても絶景です。しかしここまでの登りは結構きつかった。この地点で今日の宿に予定している木曽殿山荘までの約半分です。ここで軽く昼食をとりました。

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檜尾岳から先も急下降、急登の繰り返しです。ストックを出したかと思えば、岩登りでストックをザックに仕舞いこむ。これの繰り返し。次のピークである熊沢岳(2778m)までもいくつもの小ピークを越えていかなければなりません。

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熊沢岳に着いたのは1300頃。歩き始めてから既に6時間が経過しています。私の持つ古い昭文社の山岳地図(2006年度版)によれば、千畳敷から熊沢岳までの標準コースタイムが4時間となっています。このままではコースタイムオーバー2時間となってしまいますが、焦っても仕方がない(注)。とにかく自分のペースで歩くのみです。ちなみに熊沢岳付近ではかなりガスがかかっていて、周囲の景観は見えなくなっていました。

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(注)昭文社の最新版の地図ではコースタイムが約5時間になっていました。


熊沢岳から次の東川岳(2671m)も急下降、急登の連続。それでも途中までは比較的平坦な道だったので、これは結構楽かも・・・、と思ったが、結局は裏切られました。東川岳山頂への到着は1440頃。木曽殿越えを挟んだ向こう側には空木岳の姿が見える筈ですが、残念ながらガスによって視界は遮られていました。

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東川岳からは木曽殿山荘に向けて最後の急下降。30分ほどかけてじっくり降りたところに今日の宿、木曽殿山荘があります。木曽殿山荘に着いたのは1520頃でした。

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小屋についてしばらくは軽い頭痛がありました。ロープウェーでいきなり2600mまで上がった所にかなりキツイ登山だったので、呼吸が浅くなり軽い高山病になったようです。風邪薬を飲んで頭痛を和らげたかったのですが、檜尾岳で昼食をとってから既に5時間近く経過しているので、胃の中はほぼ空っぽ。夕食まで我慢する他ありませんでした。夕食は1650から。高山病になりかけていたので食欲はなかったのですが、無理やり食べて、風邪薬を服用しました。風邪薬の効果てきめんで、頭痛は一気にけし飛びました。お陰でその夜はゆっくりと休養できました。

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