もりつちの徒然なるままに

ウォーゲームの話や旅の話、山登り、B級グルメなどの記事を書いていきます。 自作のウォーゲームも取り扱っています。

2019年10月

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「ソロモン夜襲戦」は、私が自作した水上戦闘ゲームです。テーマは太平洋戦争における水上戦闘で、1ユニット=1艦、1Turn=5分、1Hex=1500mになります。

「ソロモン夜襲戦」の入手方法は、こちらをご参照下さい。

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移動ルール

Phase_A移動ルールは、紙による速度決定と交互移動という比較的オーソドックスなルールを採用しています。毎ターンの速度決定が面倒と思われるかもしれませんが、本ゲームの場合、指揮ポイントの関係上頻繁な速度変更ができない仕組みになっているので、ルールから想像されるほど面倒ではありません。
また、艦船の加速や減速範囲について無制限というのも本ゲームの特徴です。このルールは物理的にはやや違和感がありますが、実際のプレイでは違和感を感じることは少ないと思います。なぜなら指揮ポイントの制約により頻繁な加減速は自ずと制限されているからです。細かな加減速制限ルールはたしかに「より正確なシミュレーション」のためには有効かもしれません。しかし、艦隊規模の戦闘を再現する本ゲームでは、極端なリアリティの追求は不要だと考えます。ルール量増大というデメリットとリアリティの追求。この2つを秤にかけて、ここでは簡単なルールを優先しました。
移動を複数のインパルスに分けたのは、同時移動性を高めるためです。一部の水上戦ゲームが採用している隠密プロット方式よりもプレイアビリティが高く、また同時移動性の再現にも優れていると判断しました。 艦船の速度は最大でも6までとしています。速度6は実際の約30ノットに相当します。実艦のカタログスペックを見ると、最大速度が30ノットを越える艦船も数多く存在し、中には35ノットや40ノットといった高速を発揮する艦船もあります。しかし、実際の艦隊運動では、30ノットを越える速度を発揮する機会はあまり多くはありません。なぜなら極端な高速航行は自艦による射撃や雷撃の正確性を極端に損なうことになり、実際のところあまり実用的ではないのです。また、艦隊運動の見地からも極端な高速発揮は整然とした艦隊運動を著しく困難にします。さらに所謂「高速艦」の多くが巡洋艦以下の中小型艦であり、これらの艦船は風浪の影響により最大速力の発揮を容易に妨げられてしまうことにも留意する必要があります。これらの要因を考慮した上で、本ゲームでの最大速度は6以下にしたのです。
では35ノット、40ノットといった高速力が無意味なのか、というと、必ずしもそうではありません。損傷時の艦船の移動力を見て下さい。最大速度が同じ6の艦船であっても、小破時の速力を比較すれば、違いが見えてきます。例えば日本の「最上」型重巡は小破時の速度が6のままであり、一方、米英の巡洋艦の多くが小破時の最大速度が5以下になっています。つまりカタログ上での最大速度が大きい艦船は、損傷時においても最大速度の低下する割合が比較的小さいようになっているのです。

射撃戦ルール

JP_BB12a従来の水上戦ゲームでは、射程距離や視界以外の要因によって射撃が制約を受けることは少なく、その結果「毎ターン全艦射撃」ということが当たり前のように行われていました。戦艦から駆逐艦まですべての全艦船が毎ターン毎ターン射撃解決のダイスを振る。そのことは、特に登場艦船数の多いシナリオでは、プレイアビリティを阻害する要因にもなっていました。
ところで、実際の射撃戦、特にソロモン海における夜間戦闘について調べてみると、各艦の射撃時間が著しく短いことに気づきます。短い場合で数分、長くても十数分で射撃を終えているのです。本ゲームのスケールで言えば1~3ターン程度の連続射撃しか行っていないことになります。混乱を生じやすい夜間戦闘の場合、彼我の状況が不明のまま長時間の射撃を行うことは味方撃ちの危険があるなど得策ではありません。短時間の猛烈な射撃で敵に打撃を与え、いったん射撃を中止して状況を整理した上で事後の戦術を決定する。これがソロモン海における一般的な射撃戦の姿だったのです。
従来の水上戦ゲームでは、残念ながら上記のような射撃戦の実情についてほとんど考慮されていませんでした。ですから、如何に精緻な射撃戦ルールを持ったゲームでも、ゲームが再現する世界は実世界とはかけ離れたものになっていたのです。
本ゲームでは、指揮ポイントによって射撃回数を制限することにしました。両軍に与えられている指揮ポイントの量は決して十分ではなく、全艦が毎ターン全力射撃を行うことは不可能です。プレイヤーは十分とは言えない指揮ポイントの配分に留意しつつ、毎ターン最適な状況で射撃を行うように苦慮することになります。効果の乏しい射撃を行うことは指揮ポイントの無駄遣いでしかなく、結果的に無意味な射撃は抑制されます。それはシミュレーション性の向上とともに、プレイアビリティの向上にも寄与し、テンポの良いゲーム展開が期待できます。
US_CA38a次に、実際の射撃解決システムについてです。従来の水上戦ゲームの射撃解決システムは大きく分けて「比率方式」と「単発判定方式」に分類されます。前者は射撃艦船の射撃力と目標艦船の防御力を何らかの方法で比率化し、それに基づいて目標艦船への損害量を決定するというものです。サンセットゲームズの『聯合艦隊』、(株)国際通信社の『戦艦の戦い』等がこれに相当します。ゲームジャーナルの『幻のレイテ湾海戦』もやや趣向が異なりますが、類似の方式と言えるでしょう。後者は、実際に目標艦船に命中した砲弾の数を1発単位で判定し、それぞれ砲弾が与えた具体的な被害量を個別に判定するというものです。(株)国際通信社の『ロイヤルネービー』や『デストロイヤーキャプテン』、少し古いゲームですがツクダホビーの「グラフ・シュペー」等がこれに相当します。前者は比較的大きいスケールのゲーム、後者は精密なゲームが採用しているシステムと言えるでしょう。
本ゲームの場合は、「単発判定方式」に近い射撃解決手順を採用しています。比較的スケールの大きな本ゲームがなぜ「比率方式」ではなく「単発判定方式」を採用したのか。それは射撃戦の雰囲気を重視したからです。考えてみて下さい。射撃戦は本ゲームの山場です。それが1回のダイス判定だけで終わってしまうのはなんとも味気ないとは思いませんか?。
「夾叉したあー」
「何発当たったのか?」
「やった、3発命中!!」
「特殊損傷発生、げっ、機関室被弾、航行不能?」
という具合に、実際に何発の砲弾が命中したのか、1発1発の砲弾が具体的にどのような被害を目標艦船に与えたのか。このような再現はゲームの主題とするテーマから逸脱するものかもしれません。しかし、それでも私は1発単位に拘りたいと思っています。なぜな、それは「雰囲気を盛り上げる」という意味で重要であると考えるからです。そして、水上戦ゲームの魅力の1つである「個々の艦船のキャラクター性の再現」にも有益であると考えます。
CW_BB14a実際にプレイしてみると、本ゲームの射撃解決システムは見た目の印象よりもプレイしやすいことに気づくと思います。よほどの近接戦闘ならともかく、中距離程度の射撃戦であれば、夾又判定で失敗するケースが多く、この場合ダイスひと振りで判定は終了します。また、夾又判定そのものは射撃艦船の火力を考慮する必要がなく、距離によって一意的に決まる成功値によって判定するだけなので、プレイアビリティは高いです。
無論、夾又に成功した場合は、それから後は数回のダイスチェックが待っています。しかし命中判定、損害判定共それぞれ1枚の表にまとめられ、必要以上に多種の図表を引っ張り回す必要はないし、また修正値等も最小限に留まっていて、必要以上にダイス目を足し算引き算する必要もありません。複数の命中弾が発生した場合でも、命中した個数分のダイス(D10)を振れば、結果が参照できるようになっています。2D10やD100ではないので同時に解決するのは容易です。損害の内容も一部の特殊損傷を除けばすべて「損害ポイント」に収斂されているので、損害適用時に悩むこともありません。
ところで1発単位ということについて一言。本ゲームの場合、1発命中が必ずしも実際の砲弾1発を意味するわけではないことに注意して下さい。特に6インチ以下の小口径砲弾の場合、ゲームにおける「命中1発」が実際の複数の命中弾を表している場合があります。
火砲についてもう一点付け加えると、ゲーム上の砲口径は必ずしも実際の砲の口径とは一致しません。例えば、戦艦「長門」の主砲について、本ゲームでは「40cm」砲としていますが、実際には41cm砲です。同じく日本駆逐艦の主砲は本ゲームではすべて「12cm砲」となっていますが、実際の口径は127mm。120mm、100mmと様々です。その点ご注意下さい。

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雷撃戦ルール

Torp93Ba魚雷は、艦砲と並んで水上戦闘における主要な打撃兵器です。特に夜間の戦闘では、接近戦が多くなることもあり、魚雷はしばしば艦砲以上の威力を示しました。
従来のゲームを見てみると、魚雷に関するルールは、実際に「発射と同時に命中判定を行う方式」と「魚雷が航走して命中判定を行う方式」の2種類がありました。前者は(株)国際通信社の『戦艦の戦い』、後者は同じく(株)国際通信社の『デストロイヤーキャプテン』がこれに相当します。サンセットゲームズの『聯合艦隊』では、両方の方式の魚雷ルールが提案されていました。
まず「実際に魚雷が航走する方式」について考えてみましょう。この方式は、魚雷射点占位運動や魚雷回避運動を実際に盤上で再現できるというのが大きな利点です。そのためか、この方式を支持する人は今も少なくありません。しかし、この方式にはいくつかの欠点があります。1つはプレイアビリティを大きく阻害することです。両軍合わせて20隻前後の艦船が走り回る戦場において、各艦の発射した魚雷の位置管理を行うのは容易なことではありません。魚雷マーカーを使えば管理は比較的容易になりますが、今度は魚雷位置を隠匿できなくなり、相手側の魚雷回避を極めて容易にしてしまいます。
もう1つの欠点は魚雷の動きがヘクスの並びによって制限されることです。現実の世界で魚雷を発射する際には、目標艦船を包み込むような扇形に魚雷を発射するのが普通です。しかし、ヘクスを使ったボードゲームでそのような雷撃戦術を再現するのは困難で、そのためにゲーム上のプレイヤーは目標艦船の未来位置を読みきった上での魚雷発射が要求されますが、そのような能力は現実の世界で魚雷を発射する際に必要とされる技能ではありません。水上戦ゲームでプレイヤーが演じるのは艦隊指揮官です。艦隊指揮官に要求される能力は、指揮下艦船を魚雷発射位置に占位させること、あるいは敵が行うであろう魚雷発射運動を妨害することです。決して「相手の動きを読みきって魚雷を発射すること」ではないはずです。
それではもう一方の方式、すなわち「魚雷発射後即座に命中判定を行う方式」が優れているのか、といえば、こちらにもまた欠点があります。一番の欠点は「射点占位運動」が正しく再現できないことです。現実の世界では、魚雷発射を行う場合、敵艦の斜め前方から発射するのが最良とされています。斜め後方からの発射の場合、魚雷が目標艦船に追いつくまでに時間がかかってしまい、その分照準が不正確になり相手に回避の余裕を与えてしまいます。真正面からの発射では目標の被弾面積が小さくなります。後方からの発射が不利なことは説明するまでもないでしょう。しかし「発射即判定」方式のゲームでは、多くの場合、この非常に重要なテーマである魚雷射点占位の問題がほとんど考慮されていないのです。その他にも、魚雷回避運動が再現されないこと、遠距離発射した魚雷が即座に目標に到達してしまう不自然さなど、「発射即命中」方式にもいくつかの欠点が存在します。
US_DD1a本ゲームの場合では、魚雷マーカーを使用した「実際に魚雷が航行していく」方式を採用しました。しかし、従来のシステムとは異なるいくつかの特徴を備えています。その1つは「魚雷があたかも誘導魚雷のように目標を追尾していく」ということです。言うまでもないことですが、これは別に誘導魚雷を再現するためのルールではありません(ソロモン海の夜戦で誘導魚雷が使用された事実は、現在のところ確認されていません)。これは魚雷の命中可能範囲を抽象的に表現するためのルールなのです。このルールのおかげで、魚雷を発射するプレイヤーは、「相手艦の動きを読みきって発射する」という意味のない頭脳労働から解放されました。そして、艦隊指揮官を演じるプレイヤーが本来頭を使うべき問題、すなわち魚雷発射位置への占位やその妨害に思考を集中できるようになったのです。さらに本ルールは、魚雷の隠密発射ルールを不要なものとし、それは結果的にプレイアビリティの向上に大きく貢献することになりました。その一方で「発射即命中判定」方式が持ついくつかの欠点、特に射点占位運動が無意味になるという欠点は、本ゲームにはありません。
本ゲームの雷撃戦ルールでは、いわゆる「フェイント発射」を比較的簡単なルールで表現できました。実際、英独海軍が戦ったバレンツ海海戦では、英駆逐艦の発射偽装運動が独艦隊を大いに悩ませました。また太平洋戦域でも、例えばサマール島沖海戦で米駆逐艦の行う発射偽装行動が日本艦隊を大いに悩ませたことが知られています。これを「発射即命中判定」方式で再現することはかなり困難を伴います。実際に魚雷が航走していく方式では偽装発射を再現することは可能ですが、そのためにはプレイアビリティを大きく犠牲にしなくてはなりません。
魚雷が味方艦の存在するヘクスへ優先的に進入しなければならないルールについて一言。これは魚雷戦にありがちな味方打ちを再現するためのルールです。実際の魚雷戦で味方打ちの事例はそれほど多く報告されてはいませんが(むしろ射撃戦における味方打ちの方が事例は遥かに多い)、乱戦では味方打ちを避ける意味で雷撃を控える傾向にあったのは事実です。本ルールは、乱戦時における魚雷の使いにくさを簡単なルールで再現しているのです。

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最後に

この『ソロモン夜襲戦』は今までにはない水上戦ゲームです。特に指揮ポイントのルールは、従来ほとんど省みられなかった夜間水上戦闘における指揮統制問題について、初めて光を当てたルールです。しかも、プレイアビリティを大きく損なうことなしにです。
新しい考え方に基づいてデザインされた本ゲーム。是非に一度プレイして頂きたく思います。

「ソロモン夜襲戦」は、私が自作した水上戦闘ゲームです。テーマは太平洋戦争における水上戦闘で、1ユニット=1艦、1Turn=5分、1Hex=1500mになります。
「ソロモン夜襲戦」の入手方法は、こちらをご参照下さい。

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原案と再デザイン

US_CL55aこの水上戦ゲームは、私が今から15年以上前(注:このノートを始めて書いたのは2006年だから、その15年前なので1990年またはそれ以前)にデザインしたゲームが基になっています。そのゲームは、もともと空母戦を扱うゲームでの水上戦ルールが基になっていました。空母戦ゲームの中での水上戦闘システムですからシンプルなものを想像するかも知れません。そして私もシンプルなものを目指しました。しかし、今の視点から見るとそのゲームは決してシンプルではありませんでした。1発単位の命中判定は当然として、命中弾が砲塔に命中したかそれとも船体に命中したかの判定、上部から命中したのかそれとも側面から命中したかの判定等もルール化されていました。
そのようなシステムでマリアナ沖あるいはレイテ沖海戦に匹敵する大規模戦闘を戦おうというのですから正気の沙汰ではありません。実際、本ゲームは空母中心の戦いだったので水上戦の機会はあまりありませんでした。それでも何度か水上戦闘を戦ったことはあり、実際に駒を並べて砲戦を交えたのですから、当時の我々が如何に元気であったかわかろうというものです。
勿論、今回水上戦ゲームをリメイクするに当たって、15年前のシステムをそのまま流用していません。15年間でウォーゲームのデザイン手法は長足の進歩を遂げていますし、プレイアビリティに対する要求も15年前よりは遥かに高くなっています。ゲーマーの大半が社会人となり、プレイに割ける時間が昔よりも遥かに少なくなったことも注意しなければならないでしょう。
今回、最も重視したのはプレイアビリティです。素人が仲間内で遊ぶゲームなら「ノリ」で楽しむこともできるし、当時は時間が有り余っていたので多少時間のかかる方式を採用しても問題はありませんでした。しかし。今では事情が違います。時間のかかりすぎるゲームを世間は敬遠するだろうし、第一私自身時間のかかりすぎるゲームをプレイするほど時間が余っているわけではありません。また複雑過ぎるルールは、ルールを理解する上でプレイヤーに余分な負担を強いることになります。さらに「覚えておかなければならない」ルールはプレイアビリティを著しく悪化させます。
今回、一番手を加えたのは射撃システムです。何枚もの表を見たり、覚えなければならないルールを極力廃し、基本的には1枚の表ですべて判定できるようにしました。損害箇所に関するルールもなくし、損害ポイントと特殊損傷だけの簡単な損害ルールとしました。 しかし基本的な部分は昔と変わっていません。指揮ポイントを中核に据えた指揮統制システムは15年前のアイデアそのままだし、魚雷マーカーを使った雷撃システムも昔のままです。これらのルールは当時としては画期的なルールであると思っていましたが、現時点でもその意味は決して色褪せていないと密かに自負しています。

スケールの話

JP_CA08aスケール決定に際しては、「ソロモン海で実際に戦われた海戦を容易に再現できること」をデザインの基本方針としました。このことを考慮した上で以下の文章をお読みいただけたら、と思います。
水上戦ゲームの魅力の1つとして「個々の艦船のキャラクター性」というものがあります。戦艦「大和」、重巡洋艦「利根」、駆逐艦「雪風」等、軍艦を愛する人々にとって第2次大戦で活躍した艦船は永遠のヒーローであり、その活躍を自分の手の中で再現したいと思うのは当然でしょう。そして水上戦ゲームは、そういった我々の夢を実現してくれるためのツールでもあるのです。
本ゲームでは1ユニットが1隻の艦船を示します。これは先に述べた艦船のキャラクター性を再現するために必要と考えた選択です。ゲームの中には巡洋艦や駆逐艦を数隻で1ユニットとしているものもあります。このようなデザイン思想を否定するつもりはありませんが、本ゲームでそのような手法を採用することはできませんでした。なぜならソロモンの海で最も活躍した艦船は巡洋艦、駆逐艦といった中小の艦船であり、彼らの活躍を再現するためには1隻単位で扱う必要があると考えたからです。
また、ユニットスケールは、プレイアビリティからみても十分妥当であるという判断があります。ソロモン海で戦われた最大規模の水上夜戦は、第3次ソロモン海戦第1次夜戦で、その時両軍合わせて27隻の艦船が海戦に参加しました。また1プレイヤーが担当する艦船数は、第3次ソロモン海戦第1次、第2次夜戦における日本軍の14隻というのが最大で(仮想シナリオ除く)、その他の海戦でも概ね1プレイヤー当たり10隻前後です。この規模であれば、1隻1ユニットでもそれほどプレイアビリティを損ねることなく再現可能でしょう。
1ヘクスは1500mです。これは海戦ゲームとしてはやや大きめのスケールです。ヘクススケール決定に際しては、艦砲の性能差を表現できる規模と考えていました。あとは艦隊陣形を再現できるスケールです。プレイアビリティを考えればスケールが大きい方が良いのですが、あまりに大きすぎるとゲームが再現したいディテールが表現できなくなることにもなります。本ゲームでは上記2要素を再現でき、かつプレイアビリティを損なわないスケールとして1500mという値を選びました。
1ターンは実際の5分間に相当します。ソロモン海の海戦では、個々のアクション(射撃開始、変針、射撃終了等)を行う時間間隔が概ね5~15分程度です。1ターン5分というスケールは、実際の艦船隊指揮官が海戦を戦う中で個々の決断を下す際の思考周期と概ね一致するのではないかと考えています。もちろん個人差や状況による差異はあるでしょうが、例えば1分単位では「そんなに早く決断できる艦隊指揮官はいない」し、20分だったら「そんなにノロマなら艦隊指揮なんてできないよ」ということになると思います。あとは、ヘクススケールとの兼ね合いも考慮しました。今のスケールだと1移動力が実際の約5ktに相当します。これは、高速艦、中速艦、低速艦の違いを表現する上で好都合なスケールです。

指揮統制ルール

US_BB57a水上戦ファンの私としては悲しいことなのですが、「水上戦ゲームはつまらない」という意見を良く聞きます。たしかに水上戦は陸戦に比べると兵科の差異や地形の影響が乏しく、そのため戦術のバリエーションが少なくなります。その結果、水上戦ゲームはダイス目勝負となりがちです。しかし、兵科や地形の影響だけが水上戦をつまらなくしているのでしょうか?
本ゲームが再現対象としているのは主に夜間の水上戦闘です。夜戦の場合、敵の状況はおろか、味方の状況も不明というのが普通です。さらに指揮系統の混乱によって指揮下の艦船への命令伝達が上手くいかなかったり、さらには友軍への誤射というのも決して珍しいことではありません。軍事用語で言うところのC3I(指揮・統制・通信・情報)が上手くいかないことが多いのです。
従来の水上戦ゲームでは、このようなC3Iの問題を正面から取り扱うことはあまりありませんでした。サンセットゲームズの『聯合艦隊』、ゲームジャーナルの『幻のレイテ湾海戦』には簡単な艦隊運動ルールがありますが、いずれも艦隊運動に対する制約に特化したルールであり、射撃や雷撃は相変わらず「やりたい放題」でした。
本ゲームでは、移動、射撃、雷撃といった主要な戦闘行為に対して、一定量の指揮ポイントの消費を要求するものになっています。指揮ポイントは、毎ターン、一定割合で補充され、ある程度までは蓄積することも可能ですが、その絶対量は常に不足気味であり、指揮下の艦船を「手足の如く」行動させることは数量的に不可能です。プレイヤーは少ない指揮ポイントを有効活用するために必然的に艦隊を単縦陣で運用することになります。魚雷の回避運動なんて行った時には、艦隊を元の陣形に復旧するために大量の指揮ポイントを必要とするでしょう。
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JP_CL8a指揮ポイントは、艦隊運動だけではなく、射撃や雷撃の際にも必要になってきます。艦隊運動で大量の指揮ポイントを消費してしまうと、射撃や雷撃に支障を来たすことは必定です。有効な砲雷撃を行いたければ、必然的に艦隊運動をシンプルにする必要があります。これは現実の姿と同じです。
射撃に指揮ポイントを必要とするルールは、ゲームの中で行われる射撃頻度が必然的に現実の値に近づくことになります。このことは、射撃戦のところで詳しく書きます。
雷撃も同じです。魚雷の最適射点を得られたとしても、指揮ポイントがなければ魚雷を発射できません。現実にも最適射点を得ながら魚雷を発射できなかった事例はいくつも存在します。逆に魚雷発射に必要な指揮ポイントを捻出するために、あえて射撃を行わないという選択もあるでしょう。実戦でも魚雷を撃つために射撃を行わないという選択はしばしば行われています。
毎ターン得られる指揮ポイントは、指揮値という形で表現され、指揮値の大小がそれぞれの艦船隊の指揮能力を示しています。指揮値は、艦隊の規模と艦隊練度によって決められています。艦隊練度とは聞き慣れない言葉ですが、要は戦闘単位としての実力を効率的に発揮するため能力と考えて下さい。艦隊練度の設定根拠は、ルールブックの中にも少し記載しましたので、そちらもご覧下さい。
艦隊の規模が大きければ、それだけ必要とする指揮ポイントも多くなってくるので、艦隊規模と指揮値に相関関係が成立する必要性はご理解頂けると思います。しかし、指揮値と艦隊規模は比例関係ではありません。例えば、艦隊規模が2倍になっても、指揮値の増分は2倍にはなりません。これは、艦隊規模が大きくなればなるほど指揮が困難になる、という事象を再現しています。戦史を見ても、大規模な艦隊が指揮系統の混乱から持てる実力を十分発揮できずに敗退した事例は数多く残っています。サマール島沖海戦での日本艦隊などはその典型的な例と言えるでしょう。
CP_J指揮値は、味方の損害によって減少します。これは味方の損害によって指揮系統に混乱を起こしている状況を再現したものです。このルールは本来の目的以外に思わぬ効果をもたらしました。それは両軍に生じた損害によって戦闘が自然と終息してくるということです。
従来のゲームでは、味方に被害が出ても残存艦船の戦闘力に影響を与えることはなかったため、「全滅するまで戦う」ということが往々にして起こっていました。サンセットゲームズの『聯合艦隊』のように、そのような事態を避けるために「保護水準値」といったルールを設けている例もあります。
本ゲームでは「保護水準値」に相当するルールはありません。その代わり指揮ポイントのルールが「保護水準値」の肩代わりをしています。損害によって指揮値が減少し、その結果、攻撃行動に回せる指揮ポイントが少なくなります。攻撃行動は莫大な指揮ポイントを必要とするため指揮値の減少した艦隊は有効な攻撃手段を失います。その結果、大きな被害を被った艦隊はこれ以上の損害を避けるために避退運動に移ることになるでしょう。

(つづく)

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前回は--> こちら

福井市街から車で約1時間。山に囲まれた盆地にたどり着く。東側には日本100名山の一座である荒島岳が聳え、さらに能郷白山、経ヶ岳などの名峰が近くに控えている。盆地の中には黄色く実った稲穂が美しい景観を作っている。
福井県大野市。人口約3万人の地方都市である。
その大野市の市街地に「天空の城」と呼ばれる越前大野城がある。@前回は2016年10月@にこの越前大野城に訪れた。今回、3年ぶりに訪ねてみた。

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駐車場からいきなり階段があり、約400段の階段を上り切って、天守閣の下にたどり着く。天守閣自体は残念ながら復元天守なので、内部は今風。しかし天守閣の最上階からは越前大野の街並みと黄色く実った田畑の風景が見えてくる。美しい景観である。
因みに越前大野城を築いたのは金森長近だと言われている。戦国時代のゲームでは時々出てくる武将である。
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お奨め度★★★★

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歴史群像2019年10月号

学研

特集は「アメリカ海兵隊戦車隊」。太平洋を巡る島嶼戦で無敵の印象を持つ米戦車隊であったが、実際には日本側の対戦車戦術の前に苦戦の連続であった。本特集記事は、アメリカ海兵隊と銘打ってはいるものの、島嶼戦を巡る日本側の対戦車戦術とそれに対抗するアメリカ海兵隊の戦術という視点で描かれている。そういった意味で太平洋における島嶼戦に新たな視座を提供してくれる内容であった。
特集記事以外では、WW1におけるドイツ東洋艦隊の記事と、ランチェスターに代表される戦闘モデルに関する記事が面白かった。

お奨め度★★★


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一乗谷。言うまでもなく戦国時代に北陸地方に覇を唱えた朝倉氏の本拠地である。日本百名城と1つとされているが、「城」という感じはあまりしない。それよりは中世期の街並みそのもので、軍事的な色彩は弱い。
前回は2016年10月に一度訪れたが、その時は秋真っ盛りであった。今回は9月なので季節的には夏に近い初秋。1ヶ月違うだけでこうも雰囲気が違うのかと驚く。晴天ということもあり、一乗谷の美しさが感動的だった。

お奨め度★★★★

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